3 「お前ら、少しは休めたのか?」 「ああ、もう大丈夫だ。悪かったな、時間取らせちまって」 「ジューダス、どうかしたのかい?」 「僕の方が疲れた……」 『(坊ちゃん……ファイトです……!!)』 ちなみにこれまであっさり辿り着いていたように思えるが、妙な気配を感じる方へと直進しようとするので、よく壁に阻まれたり、地面の下を指差されたりとなかなか迷走した二人だった。 ジューダスはそのたびに近くの道を探し回り、目を離したすきにふらりと歩き出すレイスを追いかけたりと、なかなか苦労していたりする。 レイスはふとカイルの方を向いて、首を傾げる。 「カイル、何持ってる?」 「え?レイス達を探してる時に、まだ使えそうな炭があったから、休憩所まで持って帰ろうかなぁって思ってたんだけど……」 納得とばかりに小さく頷いたレイスは、カイルの手を引いて暖炉のある部屋まで戻って行った。 一度歩いた道なら、多少足場が悪くても迷いなく進める。 「そこに暖炉があるんだろ?カイル、その炭くべてみ」 「わ、わかった」 炭が暖炉の中に収まると同時に、レイスが詠唱を始める。 「古より伝わりし浄化のほの……フガッ」 「……お前、当たりが悪いどうこうの問題じゃなく、ただ面白がってるだけだろう」 レイスの口をとっさに塞いだジューダスが、低い声で呟く。 「ふぁっへふぉうふゅほぉあへーひほうひぃっふぁふぉーふぁ……(だってこういうのは景気よくいった方が……)」 「だからってこんな逃げ場のない室内で大技を出すなっ!」 「つーかジューダス、何でレイスが何言ってんのか分かるんだよっ!!」 レイスとジューダスの会話にロニがツッコミを入れている間に、ナナリーに言われたカイルが、ソーサラーリングで暖炉に火をつけた。 『……!(坊ちゃん、三つ目も割れましたよ)』 「……次はどこだ、レイス」 「んー……上だな。外か?」 そう言って歩き出すレイスの後を追って、一旦地上に出る。 「なぁ、一体何やってんだ?」 「イクシフォスラーの封印を解いているんだ。レイスには分かるらしい」 「うわぁ……レイス凄いんだね!」 「そりゃどうも」 そして再び別の建物に入ると、兵士達から話を聞いた石碑が目の前にあった。 ナナリーが、どれどれ、と覗き込む。 「なるほどね……緑の封印、水の封印、火の封印はこれで解けたってワケかい。後は、翼の封印と……約束の封印?」 「約束の封印?」 レイスが、今までに聞いた事のないような驚いた声を上げた。 「レイス?」 「いや……とにかく、翼の封印ってのを解いちまおう」 「ま、これは考えるまでもねぇよな」 そう言ってロニが、近くにあった女神の像を、壁に描かれた翼の方へと動かす。 その音に紛れるように、ジューダスは小声で話し掛けた。 「……シャル、約束の封印というのは?」 『……わかりません。僕が知ってる封印は、全部で四つでしたから』 女神像が壁に運ばれた時、淡い光が辺りを包み込んだ。そして、それが消えたと同時に、素頓狂な声を出すロニ。 「なんだ、こりゃ?」 彼の目の前にあったのは、半透明のパネル。どうやらこれが最後の封印のようだ。 「……お手上げだな。最後の最後が合言葉じゃ、僕達にはどうにもならない」 「合言葉って、ノーヒント?」 「それらしきものはどこにもない。入力画面のみだ」 「でも、何とかしなきゃリアラが……!!」 徒歩では勿論だが、スノーフリアから船に乗ったとしても、確実に数日はかかる。 ここまできて、と落胆の色が見え始めた時、 「ただいま……」 レイスの呟きに、全員の視線が集まる。 「ロニ、ただいま、って入力してみてくれないか?」 「あ、ああ……」 首をかしげながらも、言われた通りの言葉を打ち込む。 すると、大きな機械の作動音がして、レイス達の立っていた床に、ぽっかりと地下へと続く階段が現れた。 「凄い、レイス!封印が解けたよ!」 「何で分かったんだい?」 「勘、みたいなもんかな……俺ならこういう合言葉にするだろうなって」 その時、突然画面が青く発光しだし、何か文字が表示された。 「何だ?……おかえりなさい、待ってたわ。何年経っても、何百年、経っても……きっと……、だめだ。この先は読めねぇ」 続く文章は、データが破損していたため、読む事は叶わなかった。だが、レイスには分かる。彼女がその続きに何を書いていたのかが。 だってこれは、 「さって、とっととリアラ助けに行きますかぁ!」 遥か昔に交わされた約束だから。 [back][next] [戻る] |