「お前ら、少しは休めたのか?」
「ああ、もう大丈夫だ。悪かったな、時間取らせちまって」
「ジューダス、どうかしたのかい?」
「僕の方が疲れた……」
『(坊ちゃん……ファイトです……!!)』

ちなみにこれまであっさり辿り着いていたように思えるが、妙な気配を感じる方へと直進しようとするので、よく壁に阻まれたり、地面の下を指差されたりとなかなか迷走した二人だった。
ジューダスはそのたびに近くの道を探し回り、目を離したすきにふらりと歩き出すレイスを追いかけたりと、なかなか苦労していたりする。
レイスはふとカイルの方を向いて、首を傾げる。

「カイル、何持ってる?」
「え?レイス達を探してる時に、まだ使えそうな炭があったから、休憩所まで持って帰ろうかなぁって思ってたんだけど……」

納得とばかりに小さく頷いたレイスは、カイルの手を引いて暖炉のある部屋まで戻って行った。
一度歩いた道なら、多少足場が悪くても迷いなく進める。

「そこに暖炉があるんだろ?カイル、その炭くべてみ」
「わ、わかった」

炭が暖炉の中に収まると同時に、レイスが詠唱を始める。

「古より伝わりし浄化のほの……フガッ」
「……お前、当たりが悪いどうこうの問題じゃなく、ただ面白がってるだけだろう」

レイスの口をとっさに塞いだジューダスが、低い声で呟く。

「ふぁっへふぉうふゅほぉあへーひほうひぃっふぁふぉーふぁ……(だってこういうのは景気よくいった方が……)」
「だからってこんな逃げ場のない室内で大技を出すなっ!」
「つーかジューダス、何でレイスが何言ってんのか分かるんだよっ!!」

レイスとジューダスの会話にロニがツッコミを入れている間に、ナナリーに言われたカイルが、ソーサラーリングで暖炉に火をつけた。

『……!(坊ちゃん、三つ目も割れましたよ)』
「……次はどこだ、レイス」
「んー……上だな。外か?」

そう言って歩き出すレイスの後を追って、一旦地上に出る。

「なぁ、一体何やってんだ?」
「イクシフォスラーの封印を解いているんだ。レイスには分かるらしい」
「うわぁ……レイス凄いんだね!」
「そりゃどうも」

そして再び別の建物に入ると、兵士達から話を聞いた石碑が目の前にあった。
ナナリーが、どれどれ、と覗き込む。

「なるほどね……緑の封印、水の封印、火の封印はこれで解けたってワケかい。後は、翼の封印と……約束の封印?」
「約束の封印?」

レイスが、今までに聞いた事のないような驚いた声を上げた。

「レイス?」
「いや……とにかく、翼の封印ってのを解いちまおう」
「ま、これは考えるまでもねぇよな」

そう言ってロニが、近くにあった女神の像を、壁に描かれた翼の方へと動かす。
その音に紛れるように、ジューダスは小声で話し掛けた。

「……シャル、約束の封印というのは?」
『……わかりません。僕が知ってる封印は、全部で四つでしたから』

女神像が壁に運ばれた時、淡い光が辺りを包み込んだ。そして、それが消えたと同時に、素頓狂な声を出すロニ。

「なんだ、こりゃ?」

彼の目の前にあったのは、半透明のパネル。どうやらこれが最後の封印のようだ。

「……お手上げだな。最後の最後が合言葉じゃ、僕達にはどうにもならない」
「合言葉って、ノーヒント?」
「それらしきものはどこにもない。入力画面のみだ」
「でも、何とかしなきゃリアラが……!!」

徒歩では勿論だが、スノーフリアから船に乗ったとしても、確実に数日はかかる。
ここまできて、と落胆の色が見え始めた時、

「ただいま……」

レイスの呟きに、全員の視線が集まる。

「ロニ、ただいま、って入力してみてくれないか?」
「あ、ああ……」

首をかしげながらも、言われた通りの言葉を打ち込む。
すると、大きな機械の作動音がして、レイス達の立っていた床に、ぽっかりと地下へと続く階段が現れた。

「凄い、レイス!封印が解けたよ!」
「何で分かったんだい?」
「勘、みたいなもんかな……俺ならこういう合言葉にするだろうなって」

その時、突然画面が青く発光しだし、何か文字が表示された。

「何だ?……おかえりなさい、待ってたわ。何年経っても、何百年、経っても……きっと……、だめだ。この先は読めねぇ」

続く文章は、データが破損していたため、読む事は叶わなかった。だが、レイスには分かる。彼女がその続きに何を書いていたのかが。
だってこれは、

「さって、とっととリアラ助けに行きますかぁ!」

遥か昔に交わされた約束だから。


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あきゅろす。
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