「レイス!」

大声で名を呼ぶと、振り返って首を傾げるレイス。
その足下には、全く雪を被っていない四つの苗木が植えられていた。

「何をしたんだ?」
「苗木を置いてみただけ」

そう言って足下を指差す。

「……封印が一つ解けた。お前はこのことを知っていたのか?」
「あ、やっぱり?何かこの苗木、妙な気配がしたからさ、同じ違和感のある所に置いてみたんだよ。封印の一つだったのか」
『じゃあ、レイスの気になる所に行けば、封印が全部解けるかもしれませんね』

急に話し出したシャルティエに、ジューダスが眉間に皺を寄せる。

『大丈夫ですよ。レイスは僕の声、聞こえてないみたいですから』

そう言われ、レイスの方を見てみると、確かに表情に変化はない。

「何だ?」
「いや……それより、お前がその気配を追って行けば、封印とやらが解けるかもしれない」
「オッケー。んじゃ、次行きますか」

そうして次にレイスが足を向けたのは、建物の中へと続く階段。
ジューダスが先行して降りて行く。千年も経つというのにそんなに荒れた形跡もなく、当時の物であろう資材などが、未だに置かれていた。

「これ……何だ?」

そう言ってレイスが触れていたのは、古びた暖炉だった。

『たしかこれには、炭が必要だったはずですよ』
「暖炉だ。何かくべる物が必要になるだろうから、これは後回しにした方がいいだろう」

シャルティエの言葉に頭の中で同意しつつ、奥へと促す。そしてさらに奥に進んだ所にあったのは。

「氷、の柱……?」
「氷っていったら解かすのがセオリーだよな」

レイスがそう言った瞬間、本能が危機を察知して、咄嗟にその場からバックステップ。直後、ジューダスは自分の判断が正しかった事を知る。

「『バーンストライク』!!」

声と共に、無数の火炎弾が辺り一面降り注いだ。ジューダスもあのまま突っ立っていたら、確実に当たっていただろう。

『うっわ……危なかったですね……』
「〜っ!お前は僕を殺す気か!!下級晶術で十分だろう!」
「だってこっちの方が手っ取り早いじゃん。フレイムドライブだとアタリ悪いし。今の俺、無機物に対しては特にノーコン」
『た、確かに。二つ目も割れたみたいですね……』
「……もういい、行くぞ」

その先はちょうど行き止まりになっていたので、来た道を引き返す二人。すると、前方から誰かがやってきた。

「ジューダスー!レイスー!!」
「カイル?どうしたんだよ」

暗い地下通路の先から姿を現したのはカイル達三人だった。


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