過ぎ去りし日の約束1
ジューダスの案内でやってきた地上軍拠点跡地。
入り口を警備している兵士に一度は止められるものの、ウッドロウからの勅命状を見せると、すんなり通してくれた。

「ふぁ〜あ……それにしても、朝早くからずっと歩き続けだと、さすがに疲れるなぁ……」

ロニの呟きはもっともである。
朝一でリアラがいない事に気付き、ウッドロウから勅命状を貰って、準備もできていた事もあって、その足でハイデルベルグを出発したのだ。

「でしたら、我々の休憩所でお休みになってはいかがですか?」

先程カイル達を止どめていた兵士が、恐る恐る提案した。

「でも、休んでる間にもリアラが……!」
「だからって疲れた身体で敵の本拠地に乗り込むのか?んなのゴメンだぞ」
「……わかった」

渋々ながら了承したカイルを連れて、件の休憩所へと足を運ぶ事に。
建物の名かへ入ると、身体中を包み込む暖かな空気が出迎えてくれた。

「はぁ……アタシは寒いのには慣れてないからねぇ。生き返るよ……」

ナナリーは暖炉の前に座り込んで、冷えきってしまった手を暖める。

「それにしても……ファンダリア軍が必死こいて隠してた飛行艇の名前までしってるとはなぁ……ジューダスに知らない物はない、ってか?」

ロニは、ここに来た時の事を思い出しながら、苦笑混じりに呟いた。
勅命状を兵士に見せ、何でもない事のように「イクシフォスラーはどこにある」と聞いたのだ。これには、知らなかったカイル達だけでなく、兵士の方も相当驚いていた。

「何とでも言え。それより、封印とやらを解かない事には、乗るどころか見る事もできないようだな……」

そんな話を聞いていると、レイスはふと、不思議な気配を感じた。

(何だ、この部屋の中か?)

よく分からないまま、少しずつその気配に近付いて行く。
そして、伸ばした手が触れた物は、

「植、物……?」
「……どうしたんだ?レイス、かなり怪しいぞ?」
「るせーっての。ふられマンにだけは言われたくねぇ」
「その苗木がどうかしたのか」

言い返そうとするロニを遮って、ジューダスがレイスの側に寄って来た。

「そういえばその苗木、私達がここで働き始めた時にはもうありましたね……」
「そういや、そうだな……」

室内にいた兵士が、口々にそんな事を漏らす。

(ああ、これが封印の)

「この苗木、貰ってもいいか?」
「ええ、構いませんよ?」

レイスは苗木をそっと抱え上げ、踵を返して外へ出て行く。
訳が分からず呆然とその姿を見送ってしまった一同の中で、最も早く気を取り直したのは、やはりというか、ジューダスだった。

「お前達は休んでいろ。ついて来られても足手まといだ」
「え……おい、ジューダス!」

結構早くに後を追って飛び出したつもりだったのだが、辺りにはレイスの姿は見当たらない。ただ、彼のものだろう足跡だけが、拠点の奥へと続いていた。

『あ、割れましたね』

突然喋り出したシャルティエに、ジューダスは怪訝な表情をする。

「割れた?」
『イクシフォスラーを守ってる封印の一つが解けたみたいなんです。あの苗木って、封印の鍵の一つだったんですよ』

それを聞いて、急いでレイスの後を追って走り出すジューダス。

「……そういう事はもっと早く言え!!」
『だ、だって坊ちゃん、カイル達がいる前では話すなって言うから……』

そんな事を話していると、拠点の一画で立ち止まっているいる後ろ姿が見えた。



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