だが、そのまま踵を返して出て行こうとするカイルを止める声があった。

「待ちたまえ、カイル君。これはハイデルベルグとアタモニ神団間に起きた、政治的な問題だ。武力をもって事に当たれば衝突は避けられない。場合によっては……戦争も起こる」
「………」
「カイル君、君はスタンのような英雄になりたいと言ったね?英雄とは、多くの人々を救うものだ。君のとろうとしている行動は、それとは正反対だとは思わないかね?」

何の表情の変化もなく、淡々と事実を述べるウッドロウに、思わず怯むロニとナナリー。
だが、カイルは目を逸らす事なく、きっぱりと言い放った。

「ウッドロウさん、それ、違うと思います。人一人……自分の大事な人も守れない奴が、大勢の人を救うなんてできっこありません。だから、オレは行きます。行って、リアラを助けます!」
「どうしても行くと言うのかね?」
「確かにカイルは英雄に……スタン=エルロンに憬れている。でもさ、スタンと同じように行動する必要はないはずだ。カイルにはカイルのやり方がある。それを分かってて言うアンタも大概だけどな」

レイスのセリフに、口許を緩ませるウッドロウ。

「……すまないね。試すような事を言ってしまって。これを持って行きたまえ」

突然優しい雰囲気になったウッドロウに驚きながらも、差し出された物を受け取る。そして、レイスにも分かるようにその内容を口に出してくれた。

「君達には、ファンダリア国王である私からの命令を受けて、レンズ奪還の任にあたってもらう。その際発生する全ての制約は、私の名の元に排除する事としよう」
「……勅命状か」
「チョクメイジョウ?」
「つまり……この書状があれば、何をしてもいいって事。食い逃げだろうがひったくりだろうが、スリだろうが、万引きだろうが、全てがファンダリア国王ウッドロウ・ケルヴィンの名の元に許されると……」
「待て待て、レイス!ウッドロウさんが青ざめてるッ!!」
「どうしてそう犯罪ばかりを羅列するんだ、お前は……」
「と、とにかく……よろしく頼むよ。(私の判断は間違っていない……はずだ……)」
「はいっ!!」

そして、今度こそカイル達は、謁見の間を後にした。



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あきゅろす。
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