それぞれの歩く道1
「大変だよ!あの子が……リアラがいなくなっちまった!!」

レイス達が必死になってカイルを起こそうとしていると、慌てた様子でナナリーが駆け込んでくる。
驚く事に、そのリアラの名前を聞いたカイルはパチッと目を開いた。

「……リアラが、いない?」
「おおっ、カイルが起きた」
「今はそれどころじゃねぇだろ!」

呑気なレイスに、ロニはつい声を荒立ててしまう。

「アタシが起きた時にはもういなくて……ずっと探してたんだけど……」
「先にウッドロウに会いに行っているかもしれない。僕たちも行くぞ」
「そうだといいんだけど……」

ナナリーが何を慌てているのか分かっていないカイルとロニはポカンとしている。とりあえずと謁見の間へ足を運んでみたが、そこにもリアラの姿はなかった。

「すまないな、わざわざ来てもらって。例のレンズの件だが……」
「あの、その前に……リアラをを見掛けませんでしたか?」
「いや、私は見掛けていないが……」

その言葉に、不安の色が濃くなってゆく。

「じゃあ、一体あの子はどこに……」
「昨日の夜中、空間が歪む気配がした」

突然話し出したレイスに、一斉に視線が集まる。

「あ、ちなみに、空間が歪むってのは俺の感覚から言ってるだけで、実際は時空間転移をする力のことな?」
「じゃあ、リアラは……」
「おそらく、アイグレッテだろう。エルレインを止めるために単身乗り込んだんだ」

そのあまりの無謀な行為に、驚きの色が隠せない。追いかけようと意気込む中、カイルだけが、静かに足下を見て立ちすくんでいた。

「……怖いのだろう?」
「えっ……?」
「また拒絶され、傷付くのが怖いのだろう?」

ジューダスの指摘が、カイルの今の心情を的確に指していたので、いたたまれなくなったカイルは目をそらした。

「僕も同じだった。傷付くのを、失うのを恐れて、立ち止まってしまった。そして、仲間も、愛する人も……親友も失った。僕は最後まで信じきれなかったんだ。アイツの強さを……」

それが自分を指しているのだと分かるレイスは、みんなからは見えないところで手を握り締めた。
自分が死んだのはリオンのせいではなかった。シェイド自身が望んだ事だったのだから、気に病んでほしくはなかったのに。

「お前がどんな道を選ぼうと、どうこう言える義理はない。だが、忠告ならできる」
「そうそう、言ってみりゃ俺とジューダスって、人生失敗組だからな」
「レイス、話の腰を折ってどうすんのさ……」
「しかも今のは軽く言っていい所なのか……?」

思わず脱力するロニとナナリー。だが、それに構う事なくレイスは話を続けた。

「逃げるな、恐れるな、相手の心を疑うな、だろ?」
「ああ、そうだ。その先にこそ、カイル、お前の求めるものがある」

しばらく俯いたまま無言だったカイルは、意を決したようにぽつりと話し出した。

「オレはもう、必要とされてないかもしれない。英雄じゃないオレは、リアラにとってどうでもいい存在かもしれない……でも、それでもオレは……リアラを助けたいんだ!!だから、皆……!」

そんなカイルの頭を、いつかされたように、ぽんぽんと叩く手があった。

「レイス……」
「ない頭でいくら悩んでもムダだって。お前みたいな奴は思ったように動けばいいんだ。突っ走った後のフォローをするために、俺らがいるんだからさ」
「う……悪かったな!」

二人のやり取りに、仲間達にも笑いが零れる。

「行こうぜ、カイル!こうなりゃ、とことん付き合ってやるよ!」
「アタシも!ここまで来て仲間外れはゴメンだよ!」
「僕の方に断る理由はない。後はお前次第だ……カイル」

皆の言葉に、ようやく顔を上げるカイル。その瞳には、いつも通りの、いつも以上の光が宿っていた。

「よし、行こう皆!アイグレッテへ!行って、リアラを助ける!そして……エルレインからレンズを取り戻す!!」



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あきゅろす。
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