玉座の間へと駆け込むが、そこには誰の姿もなかった。

「レンズだ!」

レイスがそう言って、大量のレンズを保管していた部屋へと入る。だが、そこには。

「ウッドロウさ……!」

一人呆然と立ち尽くすウッドロウ。
そして、空っぽの室内。

「そんな、レンズが……」

カイル達が見たという大量のレンズは、一つ残らず消え去っていた。

「エルレイン、だな」
「ええ。物質転送くらい、あの人の力なら簡単だもの……」
「何てザマだ……!!侵入を許し、多くの兵を傷付け、その上……レンズまで……」

悲痛な声でウッドロウが呟く。そして、行き場のない怒りをぶつけるように、思い切り壁を殴り付けた。

「……私だけが、傷一つなくおめおめと生き残るなど……!!」

再び自らの拳を痛め付けようとしたウッドロウの手を止め、レイスは思い切りその頬を張った。
乾いた音が、玉座に響き渡る。

「俺が何のためにあんたを守ったと思ってるんだ。懺悔させるため?自分を傷付けさせるため?……冗談じゃない」

唖然とするウッドロウに、淡々と言葉を続ける。

「後悔してる暇があるなら、その出来のいい頭使ってこれからどうするかを考えろ。あんた自分を誰だと思ってる……国と民を守る王だろうが!!」

レイスの声が、かつてセインガルド王に対面した時のシェイドの声と重なった気がした。

「対処法を模索すべき、か……」

ウッドロウは、微かに苦笑を浮かべ、ようやくしっかりと、自分の足で立つ。

「どうやら私は、王としてすべき事を失念していたようだ……すまない。見苦しい所を見せたね」
「ウッドロウさん!俺達が何とか……!!」

だが、カイルの申し出に、ウッドロウは首を横に振った。

「君の申し出は分かっているが、少し……時間をくれないか。昔、君と同じように何かを守りたくて必死になって追いかけて……大切な仲間を二人も失ったことがある。二度とあのような事を繰り返さないためにも、何が最善かを見極めておきたいんだ」

ウッドロウの目に、力強い光が戻っているのを見て、カイルは了承の意を示す。
後からやってきた兵士に、今日は城で休んでゆけと言われ、案内されるままついて行った。

「レイス君」

不意に、ウッドロウに呼び止められた。

「ありがとう」
「どういたしまして」



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あきゅろす。
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