限りなく似て異なるもの1
中和剤の効果もきれ、ようやく酔いの覚めた三人は(酔っていた間の事を全く覚えていなかったので首を傾げながらも)無事に砂漠をこえ、聖地カルビオラに着いた。

「何か、涼しいね?」

砂地から神殿の敷地内に一歩入った瞬間、まるで別世界のように感じていた暑さがなくなった。

「これも神の力ってヤツじゃねぇの?」
「……誰か来るぞ」

ジューダスの言葉に、レイスはカイルとリアラを引っ掴んで階段の影に身を隠した。他の三人もその後に続く。
直後、中から大勢の神官と思われる人間達が出て来て、それが通り過ぎるのを息をひそめて待った。

「ふぅ〜、ビックリした……」
「レイスったら、いきなり引っ張るんだもの……」
「いや、こっちにくる人の気配が多すぎて、俺もビックリしちゃってさ」
「そんな事より、今は中に入る方が先だ。礼拝が終わった所なら手薄だろう」

そのセリフに思わず苦笑をもらすレイス。

「ジューダス、それじゃ思いっきり俺ら悪役みたいだぞ」
「実際そのようなものだろう。無駄口を叩いている暇はないぞ」
「了解……と、言いたいとこなんだけど、初めて来るとこはさすがの俺でもちょっと歩くの不安なんで……」
「アタシが手を引いていくよ。身長とか歩幅的にも合わせやすいだろうし」
「サンキュー、助かる」

だが、コッソリと入ったはずなのに神官達に見つかってしまい。

「どーすんだよぉ!!」
「うるせぇ、独り身!とにかく駆け降りろ!」
「独り身は関係ねぇだろぉぉッ!!」

ロニの叫びを聞きながら、ひたすら下へと降りて行く。

「あっ!あったよ、レンズ!」

カイルが指差した向こうの部屋には、確かに噂通りの巨大なレンズが台座に納められていた。
全員部屋に駆け込んだのを確認して、レイスは高速で晶術を発動させる。

「『ストーンウォール』!!」

入ってきた入口は巨大な岩に塞がれ、追ってきた神官達の足を止めさせた。

「おいおい、神殿の施設ぶっ壊すか?罰当たりもいいとこだぞ」
「知るか。俺の時代じゃねー」
「アタシの時代なんだけどね……」

どこまで続くのか視覚的に確認できない階段を、他のメンバーの足音だけを頼りに全速力で駆け下りる緊張感は半端なく。
レイスは思わずその場にしゃがみ込んだ。

「大丈夫かい?」
「何とか……転ばなかったのがわりと奇跡」
「アハハッ、いつも目のことなんて気にしてなさそうなアンタでも、ちゃんと不安だったりするんだね」
「当然だろ。迷惑かけないようにしたいけど、どうしたってどこかで誰かの助けが必要になるんだ。途中で手を離されたらどうしようかと」
「おいおい、そんなことするヤツが、俺たちの中にいると思うのか?」
「……聞くだけ野暮だよなぁ」

レイス達がそんな事を話している間に、リアラはゆっくりとレンズに近付き、口を開いた。

「……いるのでしょう?応えて、フォルトゥナ」

そう呼びかけた時、レンズからやわらかな光が発し、それが人型をとったと思うと、カイル達の目の前には、優しげな面持ちの美しい女性が立っていた。

「何だ、コイツ……?」
「リアラ、フォルトゥナって言ったよね……?」
「それじゃ、コレが……」

驚愕するカイル達に、ジューダスが答えを告げる。

「フォルトゥナだ……現存する、神……」

それまで静かに微笑んでいたフォルトゥナが、ようやく口を開いた。


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