「うわあっ!ホントにゴミの山だ!」

見渡す限り何の用途に作られたのか分らないような物が、もはや堆積していると言ってよい状態にあった。

「天地戦争時代に、天上軍がここを廃棄物の投棄場所にしていたんだゆ。ま、カルビオラへ抜ける道はここしかないからね。我慢しとくれ」

そして、そのゴミ山の至る所から、何とも言えない色をした煙のような物が吹き出している。

「……なぁ、もしかしなくても、あの紫っぽい緑っぽい煙は毒ガスか?」
「愚問だな。あれが人体に無害な物に見えるのか」
「大丈夫だって。そろそろ中和剤も効いてくるだろうし」

レイスはそう言ってうなだれるロニの背中をバシバシ叩いた。
と、その時。

「レイスーっ!!」
「!?」

いきなり何かが飛び掛かってきて、レイスは思わずというか条件反射でその何かを力の限りはたき落とした。

「なに?今のなに?!何が飛びついてきた?!」
「らしくなく戸惑っている姿はだいぶ希少で面白いんだが、落ち着け」

だが、よくよく考えてみると、今の声は、

「ただのカイルだ。様子はおかしいが」
「カイル!アンタ、何やってんだい!?」

地面に叩き落とされたカイルにナナリーが寄って行く。すると、がばっと起上がり、今度はナナリーに抱き付いた。

「ナーナリー!」
「ちょ、カイ……、」
「カイルひどい!私の前で他の人に抱き付くなんてっ!!」

次に聞こえてきたのは、リアラの切羽詰まったような叫び声。
ナナリーが驚いてそちらを向くと、目に涙を一杯にためて、カイルを睨んでいる姿があった。

「やっぱりカイルは……私の事なんかキライなんだわ!だから、神も……いらない、って……」

そのまましゃがみ込んで号泣し始める。
幸い、そのセリフを耳にしていたのは、リアラが神の化身であると知っていた三人だけだったので、疑問の声を上げる者はいなかったが。

「……お前、アイツらに何を飲ませたんだ」
「何って、中和剤」
「………」
「ただ、副作用にアルコールを摂取した時と同じような症状が出るってだけで……」
「これから戦いに出るというのに酔わせてどうするんだ!!」

大声で怒鳴るジューダスに、だってー、と反論しようとした時、

「そこのお嬢さん、この僕、ロニ=デュナミスと一緒に、海に沈む夕陽でも見に行きませ……」
「一人で見やがれこの万年独身男がぁぁああッ!!」

レイスの肩をギュッと抱いたロニのみぞおちに、華麗なる回し蹴りがクリーンヒット。そのまま5mほど吹っ飛ばされた。
そしてジューダスの方を向いて一言。

「……俺が悪かったよ。反省してる」
「分かればいい」

さすがに多少なりとも自分に害があると思った時点でようやく反省する気になったらしい。

「それより、いつになったら酔いが覚めるんだ?」
「ここを一時間くらいで抜けると踏んでたから、たぶんそれくらい。でも、ジューダスもナナリーも副作用出なかったんだな。酒に強いのか?」
「かもね。こういうトコロで暮らしてたら、自然と体も丈夫になるし」
「………」

ジューダスは思わず、一時間……と頭を抱えた。
抱き付き魔で笑い上戸なカイルに、打って変わって卑屈で泣き上戸なリアラ。誰かれ構わず口説きまくるロニ。
幸いにも、自分もレイスもナナリーも酔っていないが、この三人を連れてモンスターの溢れかえる場所を突破しなければならないのかと思うと、頭痛を通り越して吐き気がしてくる。

(何だか、目の前が揺れているような……)

そう思った途端、視界がぐにゃりと曲がって見えて、

「ジューダス!?」



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