心の奥底1
「ナナリー、カルビオラまではどうやって行くの?」

ホープタウンを出て、辺り一面に広がる砂漠を見ながら、カイルはナナリーに尋ねた。

「あっちに山が見えるだろう?あの麓に、大昔のごみ捨て場があってさ、そこを通るんだよ」
「うげ。気が進まねぇなぁ……」
「しかも何と、ちょっと前にあった小規模な地震のせいで、有害ガスが大噴出中」

この事は、ナナリーも知らなかったのか、彼女も驚いた顔をしている。

「本当かい、レイス!?」
「ああ。十日くらい前、村に行商人が来ただろ。あの人もトラッシュマウンテンからカルビオラに抜けようとしたらしいんだが、かなりヤバかったらしいぜ。パナシーアボトルじゃ効かないからって、俺に解毒剤まで頼んできたし」

どんな体の異常でも治すパナシーアボトルが効かないとなると、それは相当な物だ。

「参ったね……そんな危険な中を通るのは無理だよ……」
「ええっ!でもオレ達、元の時代に帰らなくちゃならないのに!」

皆が頭を悩ませている間、レイスは自分の荷物をガサガサとあさり、いくつかの小瓶を取り出した。

「という訳で……てれれれってれ〜、ちゅーわざい〜!」
「あるなら先に言え」

すかさずジューダスからのツッコミが入った。

「でもま、レイスの薬があるなら大丈夫だろうな。腕は確かだったし」

レイスが中和剤を手渡せば、ロニが心底ほっとしたように呟く。そして、渡された薬を、何のためらいもなく一気に飲み干した。
他の三人も同じように口にするが、ジューダスだけは瓶を手に持ったままなかなか飲もうとしない。

「ジューダス、飲まないの?甘くておいしいよ」
「いや待てカイル。一応褒め言葉と受け取っておきたい所だけど、味で褒められても薬の評価にならん」

良薬口に苦しという諺を覆したと思っていいのだろうか。

「それよりジューダス、絶対飲めよ。効き目はあるんだから」
「……わかった」

レイスが薬を飲んだのを見て、渋々ながらもようやく瓶を口につける。

「たぶん、三十分後……トラッシュマウンテンに着いたくらいに効き始めると思うから。じゃ、行くか」



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