それからは(主にレイスにとってのみ)平和な日々が続いた。
そしてナナリーが出発して二日後の夕方。

「あっ、ナナリー姉ちゃん!おかえり〜!!」
「ただいま!皆、いい子にしてたかい?」
「もちろんだよ!レイス兄ちゃんのお手伝いもしたしさっ!」
「それより、おみやげは?おみやげ!」

その様子にナナリーは苦笑しながらも、ストップをかける。

「ちゃんとあるよ。でもその前に、ロニとジューダス……レイスは忙しいかな。二人はどこにいるんだい?待ちわびてたお客さんを連れて来たんだよ」

そう言った途端、子供達の視線が一気に後ろの二人に向く。そして。

「カイルだー!!」
「リアラって人が来たよー!!」

村の奥に走って行ってしまった。
そしてそれを追って行くと。

「「レイス!!」」
「よお、二人とも久し振り……ってほどでもないのかな、そっちは」

駆け出して行った子供達に纏わりつかれているレイスの姿があった。

「ナナリー、回収ご苦労」
「まさかホントに会えるとは思ってなかったけどね。で、二人は?」

ナナリーに尋ねられてレイスが指差した方を見ると、

「………」

地面にのびているロニと、呆れ顔でそれを見ているジューダス。そして取り巻く子供達。

「全く、鍛えて欲しいと言うから戦闘の実演も兼ねて相手をしたというのに……これじゃあ肩慣らしにもならないな」

そんなジューダスに向かってレイスは走り出し、

キィンッ!!

思い切り剣を振り下ろした。

「っ、……何のマネだ」
「いや、人間いついかなる時でも油断してはいけないんだぞという見本を」
「明らかに今、本気だっただろう」
「俺って常に全力投球ですから」
「………」
「それより、ほらほら。ナナリーがでかいお土産持って来てくれたぜ」
「ロニ!ジューダス!!」

レイスの後ろから手を振りながらカイル達が走って来た。その声に真っ先に反応したのは、屍になりかけていたはずのロニである。

「カイル!!」

がばっと起き上がり、駆け寄って来た二人を力の限り抱き締めた。

「無事だったかぁ!二人とも心配させやがって!!」
「きゃ……ロニ!!」
「それはこっちの……セリ、フ……、ぅ」
「おいコラ、ロニ!カイルを締め上げてどうすんだよ。それとリアラにはセクハラ。このクソ暑い気候でますます暑くなるような事すんじゃねえ」

そう言ってべりっと引き離す。

「アハハッ!じゃあ、積もる話もあるだろうしさ、ここらで時間つぶしててよ。……アタシはちょっと寄るところがあるからさ」

ナナリーはそう言って墓地の方へと歩いて行った。それを知らないカイルとリアラは、彼女がどこへ行ったのか分からず、きょとんとしている。

「アイツもマメだよな……」
「本人は吹っ切ったと思い込んでるだけだからな……さーて、ジューダス。続きだ続き」

レイスは剣を構えた。回りの子供達が、目を輝かせてそれを見つめる。

「レイス兄ちゃんも戦えるの!?」
「確実にそこの変態エロニよりは強い自信がある」
「ほっとけ!!」
「ねぇねぇ、じゃあ、ジューダスとどっちが強いの?」

子供達の一人からのそんな質問に、真剣に悩み出したのはカイル達の方だった。

「そういえば……どっちだろ?」
「同じくらい、かしら?」
「うーん、俺は目がこれだからな。互角ってとこじゃないか?見えてりゃ絶対勝つけど……、ッ!!」

レイスがそう言った途端、ジューダスの剣が首の横スレスレを突いた。

「ほう……僕はハンデありのお前と互角だと」
「もちろん。ってかお前、コレ不意打ちだろ」
「いついかなる時でも油断してはならないんだろう?」

どうもジューダスも本気になったようで、レイスはカイル達に、ナナリーを迎えに行けと言ってヒラヒラと手を振った。

「ええーっ!俺達も見たいのに!!」
「お前らは人の剣舞見るより、基本を大事に実戦こなしていくのが先。いいから行った行った」

渋々ながらも墓地へと向かう三人。
その気配が遠ざかったのを感じ取り、レイスは再び剣を抜いた。

「お前だって背中のソレ使ってないんだから、ハンデ背負ってるのはお互い様。ま、それでも勝つのは俺だけど」
「言ってろ。その代わり、後悔しても知らんからな」

そうこうしている内にギャラリーは子供達だけでなく、ほとんど村中の人間が集まり、ジューダスVSレイスの戦いのゴングが鳴り響いた。



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