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レイスが城に駆け込むのと同時に、大きな地響きがした。そのおかげで兵士はパニックに陥り、誰にも止められる事なく、一気に玉座まで走っていった。
(これは、あの時の!)
空間が歪む気配。
さらにスピードを上げて奥へと進む。そして聞こえてきた二人の男の声。
「何者だ。この襲撃はお前のせいか!」
「フッ……貴様ごときに名乗る名はないわ!」
そう言ってウッドロウに巨大な斧が振り下ろされる瞬間、
「やめろッ!この青色筋肉ワカメが!!」
目にも止まらぬ速さで二人の間に入ったレイスが、剣でそれを受け止めた。
「貴様……また邪魔立てするというのかっ!!」
「筋肉ワカメにツッコミはなしかっ!俺が寂しいだろっ」
そう言いながら受け止めていた武器を、渾身の力で弾き飛ばす。
「何してんだ、武器を取れウッドロウ!!」
いきなりの(しかも訳の分からない)光景に唖然としていたウッドロウは、レイスの声にハッと気を取り直し、側にあった剣を手に取る。
「……貴様もあの女に生き返らされたのか?」
「冗談じゃねぇ。誰があんな宗教オタクに」
「ならばなぜここに……ああ、そうだったな。貴様は所詮……」
「ウッドロウさん!!」
複数の足音が聞こえて、カイルの声が響き渡った。そして、バルバトスと戦っている人間の姿を見て、驚きに目を丸くする。
「バルバトス!……に、レイス!?どうしてここに」
「ほう……また会ったな、小僧!カイルといったか?貴様とは妙な縁があるらしい」
カイルに気をとられたスキに、レイスは攻撃をしかける。だが、それはあっさりかわされてしまった。
「フン……目の見えない貴様など相手にもならん。といいたい所だが、この状況では俺といえども面倒だからな……時間は稼いだ。あとはあの女がすること」
そう言った途端、再び空間の歪みが生まれ、レイスがバルバトスに剣を振りかざすが、もうそこに姿はなかった。
「クソッ……!!」
「ウッドロウさん、大丈夫ですか!?」
カイル達が慌てて玉座に駆け寄る。
「ああ。かすり傷程度だ。そこにいる……彼が助けてくれたからね」
そう言って、ウッドロウは静かにレイスに歩み寄った。
「助かったよ。感謝する」
「あ……」
(守れた。今度こそ、運命を変えられた……?)
「お、おい、レイス!?」
気が抜けたのか、がくりとその場に膝をついてしまう。近くにいたウッドロウは、慌ててその肩を支えた。
「どうかしたのかい!?どこか、怪我でも……」
「あの男は失敗したのか」
ここにいない人物の声が聞こえたと同時に、辺りが眩いばかりの光に包まれた。
そして、その先にいたのは。
「エル、レイン……」
白い装束を纏った神秘的な雰囲気を持つ女性。
リアラは、突然現れたその人物に非難のまなざしを向ける。
「エルレイン、あなたは間違っているわ!こんなやり方で人々を救えはしない!!」
「……では、お前はどうするの?今だに何も見出だせないお前に、救いが語れるとでも言うのか?」
少しも怯む事なく、それどころか微笑みまで浮かべて、エルレインはそう問うた。
「そ、それは……」
「ど、どうなってんだ?何でエルレインがここに!?それにリアラ、どうして君はエルレインのことを……」
リアラは何も答えない。唇を噛み締め、じっと自分の足下を見つめたままだった。
「わかんねぇ事だらけだが、一つだけハッキリしてる事があるぜ。……それは、あの女が黒幕だって事だ!いくぞッ!覚悟しろ、エルレイン!!」
「バカ、よせッ!!」
レイスの制止もむなしく、武器を取ったロニとジューダスがエルレインに向かって行く。
だが、もう少しで攻撃が届くという所で、凄まじい衝撃波が二人を襲い、壁へと叩き付けた。
「ぐっ……ッ!!」
「うわぁッ!!」
「ジューダス!ロニ!!」
「人々の救いは神の願い。それを邪魔する者は誰であれ……容赦はしない」
そう言って再び力をため始めたエルレインに、レイスが斬りかかった。
「やめろ!!仲間を傷つけるなら、俺だって容赦しない……!」
「……なぜ、あなたはそちらにいるのですか?」
攻撃の意志はないのか、エルレインは、心底分からないという顔で尋ねた。
「こちらにくれば、あなたの目を癒すのも簡単な事。運命を知る者よ……私たちと限り無く似て否なる、時の異端者よ」
「わけわかんねーことをゴチャゴチャと……俺はなぁ、もう何にも囚われたりしないって決めたんだよ!」
頭に血の上ったレイスの攻撃を軽くかわし、エルレインはリアラに向き直った。
「ならば、私も私の信じる道を行くまで。誰にも止めさせはしない」
そう言った途端、リアラの体が光に包まれた。
「いやッ、やめて!私には、まだここで果たすべき使命が……!!」
「今だに何も見出だせぬ者に、ここにいる意味はない。帰るがよい、弱き者よ……」
光はどんどん大きくなっていき、とうとうリアラの姿を飲み込んだ。
「いやぁぁぁーーッ!!」
「リアラーーッ!!」
それを追って、カイルも光に飛び込む。
ようやく体を起こせるまでに回復したロニは、その光景に目を丸くした。
「カイル!リアラ!!」
「……っ、追うぞ!!」
ジューダスも同じように痛む体を引き摺って、光の方へと向かう。レイスはその体を支え、ロニの腕をとって光に飛び込んだ。
姿が消える寸前、エルレインにむかって不敵に笑い、こう呟いて。
「俺も、誰かの幸せのためにここに来たんだ……見てやがれ、絶対に幸せとやらを掴み取ってやる」
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