スノーフリアに着いて、それまでカイル達がどこを探しても見つからなかったレイスは、下船時に何事もなかったかのように船を降りて来た。

「レイス、どこにいたの!?探したんだよ!」
「いやー……何となく自己嫌悪に陥って逃げ回ってた。悪かったな、ロニ。結構本気で殴ったけど、大丈夫だったか?」
「謝るのは俺の方だ!ついカッとなってあんな事言っちまって……」

レイスは未だ落ち込んでいるらしいロニににっこりとほほ笑みかけ、その腕をガシッと掴んだ。

「な、何だ……?」

殴られたこともあってか、少し逃げ腰になる。

「お前らクレスタから来たんだろ?なら、結構薄着だと思ってさ。風邪でもひかれちゃ面倒だから、予防策に防寒具か何か買ってくるわ……というわけだから付き合え。実年齢最年長」
「何だよその実年齢、ってのは……」
「精神的にはともかく、って意味だ。おら、ぐだぐだ言ってないで行くぞ。俺じゃ店がどこにあるか分かんないんだから」
「中身がガキで悪かったなちくしょぉぉおおっ!!」
「あ、確かこの街、寄り合い所あったと思うから、そこで集合な」

絶叫するロニをずるずると引き摺りながら、レイスは爽やかな笑みで歩いて行った。
そしてその場に残された三人は。

「「「………」」」

成す術もなく見送るしかできなかった。

「……僕は子供のお守りではないんだが」
『坊ちゃん、ファイトですよ』







「う〜っ!さみぃ〜〜っ」
「当たり前だ、お前もカイルも腹出しなんだから。ジューダスに聞いたぞ?」

ロニとレイスは雑貨屋を探しながら雪道を歩いていた。とは言っても、実際探しているのはロニで、レイスは呑気に手を引かれていふだけなのだが。

「なあ、こんなことなら皆で探しに来た方がよかったんじゃないか?」
「何言ってんだよ。同じく腹出してるっていうカイルや、女の子のリアラをこのクソ寒い中連れ回すってのか?男の風上にも置けない奴だな」
「じ、じゃあジューダスはどうなんだよ」
「残した二人の見張り兼お守り。おそらく本人も、俺がロニを引っ張って行った時点で気付いたと思うけど」
「だぁっ!分かったよ!さっさと探せばいいんだろ?!」

ずんずん歩き出すロニの後ろで、楽しそうにレイスが笑い声を上げる。
その様子は、目を覆う包帯さえなければ、その辺にいる若者と変わらなくて。
だから、聞いてしまった。

「なあ、その……レイスは、誰か大事な人を死なせちまったことがあるのか?」
「……どうしたんだよ、急に」
「いいから答えてくれ」

いつになく真剣なその剣幕に、レイスは少し考え込むと、一つ大きく溜め息をついた。

「ジューダスか。まさかアイツが喋っちまうとは。ま、口止めしてなかったけど……」

その肯定ともとれる態度に、ロニの中ではどんどん疑問が膨らんでいく。

「どうしたら、そんな風に平気でいられるんだ。笑っていられるんだ?強くいられるんだ?俺がお前くらいの年の時には、他人に気をかける余裕なんかなかった。ただ、やらなきゃならないって義務だけで……今だって……!!」

タガが外れてしまったかのように、次々と言葉が溢れ出す。
レイスは思い切って、今一番聞きたくないであろう言葉を口にした。

「スタン、か?」
「………!!」
「あーあ、やっぱ死んじまってるのか……」

少しだけ、ほんの少しだけ期待はしていた。
かつて運命が変わって、ある少年に親友と呼ばれた時のように、もしかしたら、と思っていた。だが、

(俺が寝てる間に、運命の軸は綺麗に元通りになったってことか……)

「何で、知ってんだ」
「なーんとなく、かな。お前、わりとあちこちでボロ出してたし」
「マジかぁ……結構頑張ってたんだけど、なぁ……」
「大丈夫。カイルとリアラは気付いてないはずだから……カイル、知らないよな?」
「……伝えるわけないだろ。アイツは誰よりもスタンさんが好きで、尊敬してて」
「だからって、ずっと隠し通せると思ってるのか?」

強い口調で、ロニの言葉を遮った。

「カイルは強い。父親の死だって、ちゃんと話せば受け止める強さを持ってる。だから……」
「違うんだ!!」

次に話を遮ったのはロニの方だった。


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