2 一行は再び霧の中を進み、ノイシュタットからそれほど離れていない場所に、件の廃坑を見つけた。 「いかにも何か出そうなカンジだね……」 人気のない坑道内に、カイルの声が響き渡る。 辛うじて明かりが残ってはいるものの、少し奥を覗けばそこは薄暗い空間。 「で、出るって何がだよ……」 「そんなのもちろんオバ……」 「わーーっ!!言うんじゃねぇ!その“オ”から始まる単語を言うなーーっ!!」 言葉を発しようとした口はロニによって塞がれる。 レイスはそんな二人を見て肩を竦めた。 「自分から聞いておきながら……なぁ、ジューダス?」 話をふるものの、いつものような相槌が返ってこない。不審に思ってもう一度彼の名を呼んだ。 「な、何だ……」 「何だじゃねぇよ。どうかしたのか?」 「………」 だが、ジューダスはそれには何も言う事なく、坑道の奥へと行ってしまった。 「ったく。仕方ねぇな……おい、カイル。遊んでないでとっとと行くぞ」 「あ、うん!分かった」 一人先に行ったジューダスを追って行くと、その漆黒の姿が大きな機械の前で立ち止まっているのが見えた。 「これ、何?」 「……レンズ起動型エンジン」 「??」 カイルはわけの分からない単語の羅列にぽかんとするが、ジューダスはそれに構わず淡々と話し続ける。 「レンズからエネルギーを引き出して動力に変える機械だ。これを起動させれば、坑道内の設備を再び動かす事ができる」 「作動させるにはどうすればいいの?」 リアラの問いに、目の前の機械を調べ出す。そして出た答えは、 「……このタンクにレンズを入れればいいようだ。ざっと……二百というところか」 「二百!?そんなにいるのかよ!」 「……ここはオベロン社の廃坑だ。探せばレンズくらい出てくるだろう」 その言葉に、皆散り散りになってレンズを探し始めた。 (廃坑に入ってからなんか様子がおかしい。オベロン社の事か、イレーヌの事か、もしくは……) レイスはそんな事を考えながら、何とはなしにその機械に触れてみた。 「!?な……」 すると突然、今まで休止していたはずの機械の画面が輝き、動き出した。 大きな稼働音に仲間達も集まってくる。 「どうしたの!?」 「いや、何かいきなり動き出したみたいで……」 その言葉に、ジューダスが画面を覗き込み、言葉を失った。 “レンズエンジン、エネルギー充填率120%、起動確認” 「バカな!まだレンズは……」 「タンクの底に残ってたんじゃないか?で、レイスが触った拍子に……」 「そんなはずは……いや、いい。先を急ごう」 どこか腑に落ちない顔をしながらも、ジューダスは言葉を飲み込んだ。 「でも、さっき私たち坑道の奥に行ってみたけど、行き止まりだったわ」 「それなら入口まで戻ってみないか?何か上の方から機械音がするんだよ」 レイスの言葉に耳をすませてみるカイルとリアラ。 「……何も聞こえないよ?」 「人間、五感のどれかを失うと、他の感覚が鋭くなるっていうからなぁ。レイスの場合、目が見えなくなった分、音とか気配とかに敏感なんだろ」 「なるほど」 入口の方まで戻り、来た時には気付かなかった階段を見つけて上がってみると、そこにはまた大きな機械が。 「今度はなんだ?」 「発破用の爆弾の製造装置だ」 「ば、爆弾!?」 少しばかりたじろいているロニを尻目に、ジューダスは装置を作動させる。しばらくするとベルトコンベアに乗って爆弾が現れた。 「うーん、でもこれ、どうしよう……」 「ねえ、カイル。あの壁、壊せないかしら?向こうに何かあるみたいなんだけど」 そう言ってリアラが指差した方を見ると、確かに亀裂の入った壁の向こう側から僅かに光が漏れていた。 「物は試しだ。やってみるか」 爆弾を壁に近付け、ソーサラーリングで火を付ける。途端に小規模の爆発が起こり、砂埃が晴れた先にあったのは。 「ビンゴ」 奥へと続く通路だった。 [back][next] [戻る] |