一行は再び霧の中を進み、ノイシュタットからそれほど離れていない場所に、件の廃坑を見つけた。

「いかにも何か出そうなカンジだね……」

人気のない坑道内に、カイルの声が響き渡る。
辛うじて明かりが残ってはいるものの、少し奥を覗けばそこは薄暗い空間。

「で、出るって何がだよ……」
「そんなのもちろんオバ……」
「わーーっ!!言うんじゃねぇ!その“オ”から始まる単語を言うなーーっ!!」

言葉を発しようとした口はロニによって塞がれる。
レイスはそんな二人を見て肩を竦めた。

「自分から聞いておきながら……なぁ、ジューダス?」

話をふるものの、いつものような相槌が返ってこない。不審に思ってもう一度彼の名を呼んだ。

「な、何だ……」
「何だじゃねぇよ。どうかしたのか?」
「………」

だが、ジューダスはそれには何も言う事なく、坑道の奥へと行ってしまった。

「ったく。仕方ねぇな……おい、カイル。遊んでないでとっとと行くぞ」
「あ、うん!分かった」

一人先に行ったジューダスを追って行くと、その漆黒の姿が大きな機械の前で立ち止まっているのが見えた。

「これ、何?」
「……レンズ起動型エンジン」
「??」

カイルはわけの分からない単語の羅列にぽかんとするが、ジューダスはそれに構わず淡々と話し続ける。

「レンズからエネルギーを引き出して動力に変える機械だ。これを起動させれば、坑道内の設備を再び動かす事ができる」
「作動させるにはどうすればいいの?」

リアラの問いに、目の前の機械を調べ出す。そして出た答えは、

「……このタンクにレンズを入れればいいようだ。ざっと……二百というところか」
「二百!?そんなにいるのかよ!」
「……ここはオベロン社の廃坑だ。探せばレンズくらい出てくるだろう」

その言葉に、皆散り散りになってレンズを探し始めた。

(廃坑に入ってからなんか様子がおかしい。オベロン社の事か、イレーヌの事か、もしくは……)

レイスはそんな事を考えながら、何とはなしにその機械に触れてみた。

「!?な……」

すると突然、今まで休止していたはずの機械の画面が輝き、動き出した。
大きな稼働音に仲間達も集まってくる。

「どうしたの!?」
「いや、何かいきなり動き出したみたいで……」

その言葉に、ジューダスが画面を覗き込み、言葉を失った。

“レンズエンジン、エネルギー充填率120%、起動確認”

「バカな!まだレンズは……」
「タンクの底に残ってたんじゃないか?で、レイスが触った拍子に……」
「そんなはずは……いや、いい。先を急ごう」

どこか腑に落ちない顔をしながらも、ジューダスは言葉を飲み込んだ。

「でも、さっき私たち坑道の奥に行ってみたけど、行き止まりだったわ」
「それなら入口まで戻ってみないか?何か上の方から機械音がするんだよ」

レイスの言葉に耳をすませてみるカイルとリアラ。

「……何も聞こえないよ?」
「人間、五感のどれかを失うと、他の感覚が鋭くなるっていうからなぁ。レイスの場合、目が見えなくなった分、音とか気配とかに敏感なんだろ」
「なるほど」

入口の方まで戻り、来た時には気付かなかった階段を見つけて上がってみると、そこにはまた大きな機械が。

「今度はなんだ?」
「発破用の爆弾の製造装置だ」
「ば、爆弾!?」

少しばかりたじろいているロニを尻目に、ジューダスは装置を作動させる。しばらくするとベルトコンベアに乗って爆弾が現れた。

「うーん、でもこれ、どうしよう……」
「ねえ、カイル。あの壁、壊せないかしら?向こうに何かあるみたいなんだけど」

そう言ってリアラが指差した方を見ると、確かに亀裂の入った壁の向こう側から僅かに光が漏れていた。

「物は試しだ。やってみるか」

爆弾を壁に近付け、ソーサラーリングで火を付ける。途端に小規模の爆発が起こり、砂埃が晴れた先にあったのは。

「ビンゴ」

奥へと続く通路だった。



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あきゅろす。
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