3 声を掛けた相手は、体を横向けて丸まっているが、微かに肩を震わせていた。どうやら声を殺して笑っているようだ。 「くくっ……お疲れさん。それにしてもカイル、最高だな」 そう言ってごろんと仰向く。 「ずっと一緒、か……」 大切な人々と、大好きな人とずっと一緒に。それはきっとこれ以上ない幸せなのだろう。 レイスは、それを無邪気に、無条件に信じていられるカイルが羨ましかった。 「誰もが別れを迎える。それが、遅かれ早かれ、いつか必ず」 「当たり前だ。僕達は不老不死ではないのだからいつかは……死を迎える。それがどんな形にせよ」 「そう。でも、死ぬことをあっさり受け入れる必要ねーんだなって、最近気付いた。やりたい事、やり残した事、後悔なんかが山積みで死にたくないってんなら、限界まで目一杯足掻けばいいんだ。未来を変える事が不可能だなんて思わなきゃ……」 そう言って、レイスは腕を真っ直ぐ上に伸ばした。まるで、その先にある何かを掴むように。 (俺は、最初で最後に伸ばされたアイツの腕を掴んだのに……) 「何もできなかった」 「………」 力なく腕を下ろし、それきりレイスは声を発することなく、夜は更けていった。 「仮眠とって疲れも取れたし、一気にノイシュタットまで行こう!!」 そして翌朝。元気よく声を上げたのはカイル。 「「「………」」」 だけだった。 「あ、あれ?皆、どうしたの?」 「……いや、お前は気楽でいいなあと思ってよ」 「ふふっ!でも、それがカイルのいい所、でしょ?」 「まぁ……な」 「バカはほっといて出発するぞ。ノイシュタットまでまだ結構あるからな」 「な、何なんだよ〜っ!!」 レイスは苦笑しながら、わけがわからずむくれるカイルの頭をぽんぽんと叩いた。 「ない頭使って考えたって何も分かんねぇって」 「レイスまで!ヒドいよ……」 「ほら、とっととノイシュタット行くんだろ?皆で、一緒に」 「……!うん!!」 カイルは、満面の笑みを浮かべながら、仲間達を追って山小屋を出た。 [back][next] [戻る] |