声を掛けた相手は、体を横向けて丸まっているが、微かに肩を震わせていた。どうやら声を殺して笑っているようだ。

「くくっ……お疲れさん。それにしてもカイル、最高だな」

そう言ってごろんと仰向く。

「ずっと一緒、か……」

大切な人々と、大好きな人とずっと一緒に。それはきっとこれ以上ない幸せなのだろう。
レイスは、それを無邪気に、無条件に信じていられるカイルが羨ましかった。

「誰もが別れを迎える。それが、遅かれ早かれ、いつか必ず」
「当たり前だ。僕達は不老不死ではないのだからいつかは……死を迎える。それがどんな形にせよ」
「そう。でも、死ぬことをあっさり受け入れる必要ねーんだなって、最近気付いた。やりたい事、やり残した事、後悔なんかが山積みで死にたくないってんなら、限界まで目一杯足掻けばいいんだ。未来を変える事が不可能だなんて思わなきゃ……」

そう言って、レイスは腕を真っ直ぐ上に伸ばした。まるで、その先にある何かを掴むように。

(俺は、最初で最後に伸ばされたアイツの腕を掴んだのに……)

「何もできなかった」
「………」

力なく腕を下ろし、それきりレイスは声を発することなく、夜は更けていった。






「仮眠とって疲れも取れたし、一気にノイシュタットまで行こう!!」

そして翌朝。元気よく声を上げたのはカイル。

「「「………」」」

だけだった。

「あ、あれ?皆、どうしたの?」
「……いや、お前は気楽でいいなあと思ってよ」
「ふふっ!でも、それがカイルのいい所、でしょ?」
「まぁ……な」
「バカはほっといて出発するぞ。ノイシュタットまでまだ結構あるからな」
「な、何なんだよ〜っ!!」

レイスは苦笑しながら、わけがわからずむくれるカイルの頭をぽんぽんと叩いた。

「ない頭使って考えたって何も分かんねぇって」
「レイスまで!ヒドいよ……」
「ほら、とっととノイシュタット行くんだろ?皆で、一緒に」
「……!うん!!」

カイルは、満面の笑みを浮かべながら、仲間達を追って山小屋を出た。



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