永久に、ともに…1
深い霧の中、フィッツガルド大陸を南東へ進んでいく。

「ねぇレイス、今日は俺が見張りするから、少し寝た方がいいよ」

リーネを出て三日、野営ではいつもレイスが一晩中火の番をしていた。

「お前に見張り任せるくらいなら、俺が一週間不寝番してた方が安心だと思うんだが」
「うっ、それはそうだけどさ……」

過去にもこれと似たようなやり取りがあった。レイスとしてはついこの間のように感じるが、この世界にとってはもう十八年も前の事である。

「目が見えなくて迷惑かけてる分、こういう所で挽回させろよ」
「そんなことない、レイスは全然迷惑なんかじゃないわ!」
「そうだぜ?むしろ強い分、俺達が助けられてるくらいだ。それに、お前が教えてくれる料理のレシピ。あれもなかなかいいしな」

料理担当は(やはり)ロニになったが、その献立を考えるのは、レイスと二人だ。
レイスの指示で作る料理は、どれもその日の気候や皆の気分に合っていて、ロニとしても難しい技巧を必要としない作りやすいものばかりだった。

「私も、もっとお料理が上手かったらよかったのに」

リアラがそう呟いた時、カイルが霧の向こうに何かを見つけたのか、指差しながら声を上げた。

「ねえ、あそこに山小屋があるよ!」
「ちょうどいい。今日はあそこで休むとするか」

走り出したカイルを先頭に、橋を越えた所に立てられた山小屋に入る。

「オレ、山小屋って入るの初めてだよ!へぇ〜、こうなってるんだ……」
「元気だねぇお前は……って、レイス!?」
「へ?」
「うわぁっ!!」

室内に入ろうとしたレイスがふとした拍子にバランスを崩した。運悪くそこにいたカイルを巻き込んで、二人とも倒れてしまう。

「イテテ……」
「悪い、カイル!頭大丈夫か!?」

すぐさまレイスは起き上がって、下敷きにしてしまったカイルに声をかける。

「レイス、それは激しく誤解を生む発言なんだが……?」
「まあ、色んな意味を含めて。って……うわっ」

その時、ひょいと腕をかかえられ、上に引っ張り上げられるようにして立ち上がらせた。

「お前は少し寝ろ。連日の不寝番で疲れがたまっているんだろう」

(えー……まさか今俺を引っ張り上げたのってジューダス?俺ってそんな軽い?色々とショックなんだが)

「……何をうちひしがれているんだ」
「べ、別に……じゃ、お言葉に甘えて休ませてもらいますかね。カイル、ホントごめんな?」
「オレは平気だよ。レイスこそ、ゆっくり休んでね」

レイスはさっさと寝る体勢に入ってしまった。

「やっぱり疲れてたのね」
「しかもこの霧の中を三日も歩きっ放しだったんだ。ふぁ〜あ。レイスじゃなくたって疲れちまうよ」

久々に屋根のある所に来て、気が緩んだのか思わず大きく欠伸するロニ。

「眠いのなら仮眠をとれ。見張りは僕がやる」
「いいの?ジューダスだって疲れているんじゃ……」
「……代わって欲しくなったら起こす。それまで体を休めておけ」



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