リーネを南下し、これから山道に入るという所で、だんだんと視界が白く覆われていくのに気付いた。
その状況に最初に声を上げたのはカイル。

「うわあっ!何だこれ!」

だが、見えていないレイスは首を傾げる。

「どうかしたのか?」
「辺りが真っ白なの。これは……霧?」
「どうやら白雲の尾根に入ったようだな」

ジューダスのセリフに納得とばかりに頷いたのはロニだった。

「はくうんの……おね?」
「この辺りはな、十八年前の災厄の時にベルクラントの砲撃を受けて、地形がガラッと変わっちまったんだ。地形が変われば気候も変わる。その結果がこの、年中出てる深い霧なんだよ。白雲の尾根なんて名前がついたのも、その霧のせいさ」

ロニの要所をまとめた簡潔な説明に、思わず感心してしまうカイルとリアラ。ジューダスも少しは見直しているようだ。

「へぇ〜!」
「すごい、ロニ!物知りなのね」
「どーせ神団の資料室に美人な司書がいて、お近付きになろうと必死こいて叩き込んだろ?インテリぶろうと思って」
「な、レイス、どうしてそれを……!!」
「「………」」
「……カイル、ノイシュタットは南東の方角だ」
「分かった。じゃあ行こうか、皆。レイスは俺の手に掴まって。危ないからさ」

カイルはそう言ってレイスに手を差し出した。

「どっちかっつーとお前の方が危ないんじゃないのか?元々俺の視界は真っ白……もとい真っ暗だし。だからこういう時こそ男の俺より、リアラに手を貸してやらなきゃ」
「あ、そっか!」
「紳士たるもの、レディに対する心配りは常に忘れず、スマートにエスコートするんだぞ?」
「うん、わかったっ。リアラー!手繋いで行こう!」
「えっ!?カ、カイル?」

顔を真っ赤にさせたリアラの手を握って、カイルは楽しげに歩き出した。

「アイツ天然タラシじゃね?将来が楽しみだ……では俺も見習って……ジューダスー!手繋いで、」
「貴様は今すぐ剣の錆にされたいのか?」
「ごめんなさい」

ふざけ合いながら、レイスとジューダスも歩いて行く。その場に残されたのは。

「俺は無視かぁーーーっ!!」

ロニの雄叫びが再び響き渡った。



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