2 リーネを南下し、これから山道に入るという所で、だんだんと視界が白く覆われていくのに気付いた。 その状況に最初に声を上げたのはカイル。 「うわあっ!何だこれ!」 だが、見えていないレイスは首を傾げる。 「どうかしたのか?」 「辺りが真っ白なの。これは……霧?」 「どうやら白雲の尾根に入ったようだな」 ジューダスのセリフに納得とばかりに頷いたのはロニだった。 「はくうんの……おね?」 「この辺りはな、十八年前の災厄の時にベルクラントの砲撃を受けて、地形がガラッと変わっちまったんだ。地形が変われば気候も変わる。その結果がこの、年中出てる深い霧なんだよ。白雲の尾根なんて名前がついたのも、その霧のせいさ」 ロニの要所をまとめた簡潔な説明に、思わず感心してしまうカイルとリアラ。ジューダスも少しは見直しているようだ。 「へぇ〜!」 「すごい、ロニ!物知りなのね」 「どーせ神団の資料室に美人な司書がいて、お近付きになろうと必死こいて叩き込んだろ?インテリぶろうと思って」 「な、レイス、どうしてそれを……!!」 「「………」」 「……カイル、ノイシュタットは南東の方角だ」 「分かった。じゃあ行こうか、皆。レイスは俺の手に掴まって。危ないからさ」 カイルはそう言ってレイスに手を差し出した。 「どっちかっつーとお前の方が危ないんじゃないのか?元々俺の視界は真っ白……もとい真っ暗だし。だからこういう時こそ男の俺より、リアラに手を貸してやらなきゃ」 「あ、そっか!」 「紳士たるもの、レディに対する心配りは常に忘れず、スマートにエスコートするんだぞ?」 「うん、わかったっ。リアラー!手繋いで行こう!」 「えっ!?カ、カイル?」 顔を真っ赤にさせたリアラの手を握って、カイルは楽しげに歩き出した。 「アイツ天然タラシじゃね?将来が楽しみだ……では俺も見習って……ジューダスー!手繋いで、」 「貴様は今すぐ剣の錆にされたいのか?」 「ごめんなさい」 ふざけ合いながら、レイスとジューダスも歩いて行く。その場に残されたのは。 「俺は無視かぁーーーっ!!」 ロニの雄叫びが再び響き渡った。 [back][next] [戻る] |