ふられマンの災難1
朝食を食べ終え、レイスもリアラももう出発できるとのことだったので、あまり船を待たせるわけにはいかないからとリリスの家を早々に発つ事となった。

「リリスおばさん、色々ありがとう。ご飯おいしかったよ!」
「もう行っちゃうの?」
「またいつか必ず来るよ。父さんと母さんを連れて」

カイルの言葉に一瞬動揺を表したロニだったが、幸いにしてそれに気付いた者はいなかった。

「そうね、その日を楽しみにしているわ。あっ、そうだ。出発の前に……はい、これを持って行って」

そう言って手渡されたのは、袋一杯に詰め込まれた野菜。

「リーネでとれた新鮮な野菜よ。ノイシュタットまでは結構あるけど、ちゃんとご飯は食べないとダメだからね」
「うわあ……ありがとう!」

こうしてリリスに見送られながら、カイル達はリーネの村を出発した。

「こんなに野菜貰っちゃったけど、誰が料理しようか?」

カイルが袋の中を覗き込みながら呟いた。

「レイス、はできないわよね」
「レシピを空で言うくらいならできるけど、調理は難しいな。分量も火加減も見ずにってのは、さすがに無謀すぎる」
「オレはあんまり料理とか得意じゃないんだよね」
「ロニとか料理上手そうじゃん。独り身なら自炊しないとやってけないだろ」

レイスが話をふると、いたって真面目にロニが返事をした。

「そうなんだよ。料理のできるオトコって所をアピールしようと思ったんだが、なかなかそうもいかなくてな……結局自分のために作り続けてる間に腕ばっかり上がってさぁ……………って何言わせるんだよ!!」
「ロニ……」
「やめろ!憐れむような瞳で俺を見るんじゃねぇ!」
「なんか可哀相になってきた……報われない努力があまりに健気で切なすぎて」
「恋愛方面以外においては全く無駄にはならなかったのだから、結果としてはよかったじゃないか」

小声で話すレイスとジューダスだが、それはロニの耳に入っていたようで。

「うるせーーーッ!!」

絶叫が、辺りの山々にこだました。



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あきゅろす。
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