「諦めちゃダメだ、リアラ!」

船を包んでいた光が徐々に薄れていき、誰もがもう駄目だと思ってしまったその時、リアラに駆け寄ったカイルは何にも屈しない真っ直ぐな目を向け、言い切った。

「リアラならできる!……きっと、できるよ!!」
「……カイル!」

同時に、誰かの悲痛な叫びのようなものが聞こえてきた。

もう誰も死なせたくないんだ……!!

輝きを増すペンダント。でもそれは、どう考えても自分一人の力ではないように感じる。

「……レイス?」
「………!」

船は再び光に包まれ、ゆっくりと浮き上がり、滑るように海上を移動していった。

「すげえ……マジで助かっちまった……ハ、ハ……ハハハッ……」
「す、すごいよっ、リアラ!!」

しばらく進み、浅いところまでくると、船はゆっくりと下ろされ、包んでいた光も消えた。

「やった、の?私……」

立ち上がった拍子に目眩がしたのか、傾いだ体をカイルが支える。

「リアラ?大丈夫!?」
「え、ええ。少し、疲れただけだから……」

ジューダスはそれを見届けると踵を返し、この場からいつの間にかいなくなっていたレイスの姿を探した。

「……何をしていた」
「祈ってた。神頼みってやつ。皆助かりますようにって、さ」
「ただ祈るだけで、お前はそんなにも体力を消耗するのか?随分と特異な体質だな」

そこには、壁を背に座り込んだレイスの姿があった。明らかに顔色が悪く、座り込んでいるのも、ただ単に立てないからのように見える。

「ヌシと戦った時の疲れが今頃になって襲ってきたんだよ。しばらく休んでりゃ治る」

そう言ってシッシッと手を振った。
だが、一向にそこからジューダスが立ち去る気配がしない。

「……んだよ。まだ俺に何か用か?」
「用はないが、どこにいようと僕の勝手だろう。文句があるのか」
「別に。それはそうとさ、俺の実力わかってくれた?」

少しずつ回復してきているのを感じ取り、レイスは壁を支えにゆっくりと立ち上がりながら話をふった。

「とりあえずは認めてやろう。まあ、ここでへばっているので帳消しだがな」

未だ怠さは残っているものの、さっきまでのように動けないほどではなかったので、レイスは部屋に戻る事にした。

「それよりお前、戦いでは後衛が主なのか?」
「いや、どっちかっつーと俺は前衛で真っ先に斬り込んでくタイプだったけど……何で?」
「妙に慣れている気がしたからな。詠唱も速いし、タイミングも良い」

褒められているのかどうかよく分からないセリフを聞きながらも、レイスは懐かしげな、それでいてどこか悲しげな声で答えを返す。

「昔、よく一緒に組んでた奴がいたんだよ。だから誰かと息を合わせて戦うのは慣れてる」
「そいつは今どうしているんだ。まさか、目の不自由な相方を置いていく薄情な奴だったとでも」

「殺した」

後ろで、息をのむ気配が伝わってきた。

「俺が殺した」



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