2 「諦めちゃダメだ、リアラ!」 船を包んでいた光が徐々に薄れていき、誰もがもう駄目だと思ってしまったその時、リアラに駆け寄ったカイルは何にも屈しない真っ直ぐな目を向け、言い切った。 「リアラならできる!……きっと、できるよ!!」 「……カイル!」 同時に、誰かの悲痛な叫びのようなものが聞こえてきた。 もう誰も死なせたくないんだ……!! 輝きを増すペンダント。でもそれは、どう考えても自分一人の力ではないように感じる。 「……レイス?」 「………!」 船は再び光に包まれ、ゆっくりと浮き上がり、滑るように海上を移動していった。 「すげえ……マジで助かっちまった……ハ、ハ……ハハハッ……」 「す、すごいよっ、リアラ!!」 しばらく進み、浅いところまでくると、船はゆっくりと下ろされ、包んでいた光も消えた。 「やった、の?私……」 立ち上がった拍子に目眩がしたのか、傾いだ体をカイルが支える。 「リアラ?大丈夫!?」 「え、ええ。少し、疲れただけだから……」 ジューダスはそれを見届けると踵を返し、この場からいつの間にかいなくなっていたレイスの姿を探した。 「……何をしていた」 「祈ってた。神頼みってやつ。皆助かりますようにって、さ」 「ただ祈るだけで、お前はそんなにも体力を消耗するのか?随分と特異な体質だな」 そこには、壁を背に座り込んだレイスの姿があった。明らかに顔色が悪く、座り込んでいるのも、ただ単に立てないからのように見える。 「ヌシと戦った時の疲れが今頃になって襲ってきたんだよ。しばらく休んでりゃ治る」 そう言ってシッシッと手を振った。 だが、一向にそこからジューダスが立ち去る気配がしない。 「……んだよ。まだ俺に何か用か?」 「用はないが、どこにいようと僕の勝手だろう。文句があるのか」 「別に。それはそうとさ、俺の実力わかってくれた?」 少しずつ回復してきているのを感じ取り、レイスは壁を支えにゆっくりと立ち上がりながら話をふった。 「とりあえずは認めてやろう。まあ、ここでへばっているので帳消しだがな」 未だ怠さは残っているものの、さっきまでのように動けないほどではなかったので、レイスは部屋に戻る事にした。 「それよりお前、戦いでは後衛が主なのか?」 「いや、どっちかっつーと俺は前衛で真っ先に斬り込んでくタイプだったけど……何で?」 「妙に慣れている気がしたからな。詠唱も速いし、タイミングも良い」 褒められているのかどうかよく分からないセリフを聞きながらも、レイスは懐かしげな、それでいてどこか悲しげな声で答えを返す。 「昔、よく一緒に組んでた奴がいたんだよ。だから誰かと息を合わせて戦うのは慣れてる」 「そいつは今どうしているんだ。まさか、目の不自由な相方を置いていく薄情な奴だったとでも」 「殺した」 後ろで、息をのむ気配が伝わってきた。 「俺が殺した」 [back][next] [戻る] |