小さな安らぎ1
アイグレッテの宿で部屋を予約しようとしたのだが、宿屋の主人は申し訳なさそうな口調で「すまないね、一人部屋が一つしか空いてないんだよ」と言った。

「うーん……俺達五人だから、二人部屋がもう一つあったらなぁ」

カイルたちがとっている部屋は、ツインが一部屋。レイスはこの三日間使っている部屋があり、人数的には増えた二人分をなんとかできるのがベストだろう。
女の子であるリアラには、よほど切羽詰まった状況でもない限り男性陣とは別の部屋を使わせてやりたい。ときちんと気配りできるあたり、クレスタ出身の二人の教育は女性の扱いがしっかりと行き届いている。おそらくはルーティの教育の賜物か。
どうしようかと悩むカイルに、レイスは大丈夫だ、と笑いかける。

「なぁ、俺の借りてる部屋ってツインだったよな」
「ああ、そうだったね!運がいいよ、あんた達」
「ホントだね!レイスが仲間でさっそく得しちゃったよ」

素直に喜ぶカイルに苦笑しつつ、レイスは宿の手続きをし直した。

「……で、問題は部屋割りだな」
「ロニとカイルを一緒にすればいいんじゃね?」
「いいのか?」

何を問われているのか今一つわかっていないレイスは、きょとんとしている。

「だってお前、初対面の奴といきなり同室って……」
「ああ、それか。別に俺は気にしないけど……ジューダスは?」
「どうせ一晩寝るだけだろう。誰が一緒でも同じことだ」
「というわけで、問題なし」

レイスは小さく肩を竦めると、そのまま部屋へと向かった。
リアラが目が見えないのを心配してその後を追うが、大丈夫だ、と軽く笑って一人で行ってしまう。

「レイスって優しいね」
「うーん、俺としては不思議ってイメージの方が強いんだがな」

レイスを追いかけたリアラが戻って来て、ぽつりと呟いた。

「……ねえ、レイスの目、フォルトゥナ神団にレンズを寄付して治してもらえないかしら?」
「そういえば、さっきエルレインに目を治してもらったおじいさんがいたよ!」
「そうだな。明日出発の前に、神団のやつらに聞いて」
「やめておけ」

ロニの提案を遮ったのはジューダスだった。

「何でだよ?」
「おそらくアイツはそんなことを望んでいない。三日もアイグレッテに、しかも大神殿に行っていたんだ。治す気があれば、とうにやっている」

それだけ言うと、ジューダスも部屋へと行ってしまった。
残された三人は、心のどこかでレイスの行動とジューダスの言い分に納得している自分を、不思議に思っていた。


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あきゅろす。
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