「んじゃ、話がひとまず纏まったところで、これ以上怪しまれないように立ち去りますか」
「よーし!まずは港に行って、そこからスノーフリアを目指そう!」
「盛り上がってる所悪いんだけどさ、もうちょっとしたら日も暮れるだろうし、出発は明日の朝にしないか?」
「そうね。今からだと港に着いた頃には夜になってしまうわ」

それを聞いて、あっ、と声を上げるカイル。

「俺達も宿とったままじゃん!」
「そうだった。じゃあ、今日はもう休むとするか」

行き先は港から急遽宿屋に変更。
先程の門番に挨拶しながら通り過ぎ歩いている途中で、ふとレイスは前を歩くカイルに声を掛けた。

「よかったらさ、お前らのこと教えてくれない?」
「自己紹介はしただろ?教えるってもどう言えばいいんだよ、性格とか好みとかか?」

ロニの疑問に、レイスは首を横に振る。

「背格好の事だよ。何かあった時、知ってないと困る」

カイルとロニがなるほどと納得している間に、リアラがレイスに小声で呟く。

「でも、自分の姿を自分で説明するって、何だか難しいわ」
「じゃあ、皆で他の人の説明すればいいんだよ!」

カイルがさも名案とばかりに声を上げる。そして、リアラの説明を始めた。

「うーんとね、リアラは……可愛い女の子だよ!」
「カ、カイル……っ」
「アホか、それじゃあ分かんねーだろ……えっとだな、ピンクのフワフワしたワンピースを着た、茶髪ショートボブの女の子だ。目が大きくて小顔で……」
「わかったわかった。簡単にでいいから」

放っておくといつまでも説明され続けそうだったので、レイスは適当なところでストップをかける。

「さっすがロニ!女の子の説明は上手だよね」
「ふうん……じゃあカイル、そのロニのこと説明してくれよ」
「うんっ!ロニはね、女好きでいっつもナンパしてばっかりなんだけど、一度も成功した事がなくって……」
「待てぃ、カイル!それは外見に全く関係ないだろう!!」
「オッケー把握した。女好きでふられマンね。バッチリ」
「俺の認識それで終了かよ!?」

レイスとカイルは「冗談ジョーダン♪」と言いながらロニを宥める。

「えーっとね、ロニは、背が高くって、レイスよりも少しだけ色の濃い銀髪だよ」
「ふぅん……なぁ、俺の髪ってそんなに白いのか?」

レイスは気になっていたことを尋ねてみた。

「レイスの髪は、まるで透けるような銀ね、とっても綺麗。あの、一度も見た事はないの?」
「まあ、ね……よし、じゃ次リアラがカイルの説明してくれ」

あまりその話題に触れたくなくて、レイスは努めて明るい声を出した。

「え?わ、わかったわ……カイルは、背はレイスより低くて、金髪で、青い瞳をしているの。えっと、それから……」
「り、リアラ……ち、近いってば!」
「……ご、ごめんなさいっ!」

レイスは見えてないので知る由もなかったが、リアラはカイルをじーっと見ながら説明していて、かなり側まで近付いてきていたのだ。それに気付いて、慌てて飛び退く。

「?……んー、ま、大体分かった。で、最後は……」

レイスはそう言ってジューダスの方を向く。彼がどんな姿をしているか分かっていても、どう説明されるか楽しみなのだ。

「ジューダスはな……」

カイルとロニは声を揃えた。

「「骨仮面」」
「ぶっ!!」
「………」

レイスは思わず吹き出し、ジューダスは眉間に皺を寄せる。
リアラは慌てて補足した。

「あのね、黒い髪に黒い服で、黒いマントをしているの。瞳の色は……」

そう言って無意識に瞳を覗き込もうとしたリアラから、ジューダスはバッと顔を背ける。
少しばかり困った雰囲気になるが、それを打ち破ったのはレイスだった。

「なるほどね、漆黒の骨仮面。こんだけ特徴的なら、はぐれても見つけてもらうのは簡単そうだ」

そう言った途端、カイルとロニは大笑いしだした。リアラでさえ、肩を震わせ、小さく笑っている。

「……勝手にしろ」

こうして、宿屋までの短い道程を、五人はゆっくりと時間をかけて歩いて行った。


[back][next]

9/190ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!