「シェイドッ!!!」

そう叫んだのは誰だったかわからないが、とっさに立っていた所から飛びすさる。
突然のことに驚いた俺は剣を抜く事も忘れて、自分の得意な戦法で……つまり、晶術を詠唱していた。

「チッ……『ライトニング』!!」

モンスターに手を向けると、そこに向かって雷が落ちる。威力はちょうどよかったみたいで、回りの木々が燃える事もなく倒せたみたいだ。
が、問題が一つ。

「なぜお前は……晶術が使えるんだ……?」

バッチリ見られちゃいました☆
……じゃねぇよ!!ヤベーって、現実逃避してる場合じゃねーって!!
思いっきり晶術使っちまったし!

「あー何か、気付いたら使えてた……みたいな」

視線が怖い。その視線に含まれるものが、恐ろしくて仕方ない。
焦った頭ではこの場を上手く切り抜ける方法が一つも浮かんでこない。

「以前は、ソーディアンを使っていらっしゃいましたよね?」
「生身の人間がソーディアンもなしに晶術を使えるなんて、ありえるの?」
『ほ、ほらっ!ハロルド博士だって晶術使ってたじゃないですか!!きっとそれと同じようなモンですよ。ねっ、シェイド!』

シャルが必死のフォローをしてくれたけど、パニクってる俺は何も言えない。
ここでノらなきゃなんないのは分かってんだけど……拒絶が、怖い。
またあの頃のような侮蔑の目で見られるかと思うと……。

「僕は……シェイドを信じるぞ」

……え?

「リ、オン……?」

「別にコイツが晶術を使えるからといって害はない。むしろ戦力が上がったと捉えるべきだ」

そこまで一気に言い切って、フイと顔をそらされたけど……俺を、信じる?

「俺もだよ。秘密があったって、シェイドは仲間だからな」
「何よー、アタシだって信用してないわけじゃないわ。ただ単に疑問に思っただけよ」
「ええ、むしろ驚きすぎてそこまで考えが至らなかったというか……」

ふと頭をぽんぽん、とたたかれた。

「私達は誰もお前を疑っていない。だから……そんな顔をするな」

そんな顔ってどんなのだよ!ってマリーに言い返したかったけど、きっと泣きそうな顔してるだろうからな。

「何も、聞かないのか?」
「今まで黙ってたと言う事は、お前には知られたくない事情があったんだろう……話したくなったら、聞いてやる」

態度は冷たく見えるけど、その言葉は、暖かい。
暖かすぎて、何かダメになりそう……。

「さーて、それじゃ服乾かすとするか!」
「あ、そう言えばそのためにわざわざこんなトコまで来てたんだったわね」
「すっかり忘れていましたわ」

あっさり流されたことからまだ立ち直ってなかった俺は、呆然と皆を見てた。
そこへ差し出された、手。

「ほら、行くぞ」
「……あぁ」

俺はその手を、掴んだ。



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