「勝手に一人でやろうとするな。僕を誰だと思っているんだ?」
「私も、とっくに覚悟は出来ているさ」

こっちは大丈夫っぽいな。ま、心配もしてなかったが。
問題は……。

「あたしも……やるわ。ちゃんと割り切らなきゃ、ね」

ルーティも大丈夫そうだな。

「「………」」

この二人はダメ、か。
言い方が悪かったのか?もっと優しく説得するべきだったのか?
俺はそう考えながら、床の継ぎ目に剣先を差し込み、テコの要領で敷かれていたタイルをはがした。

「「「「「!!」」」」」

そこにあったのは、地下へと降りる階段。
覗き込めば奥は牢屋になっていて、二人ほど男が捕らえられているようだ。

「だ、大丈夫ですか?!」

降りて駆け寄ってみると、一人は既に息をしていなかった。ルーティがもう一人の方にファーストエイドをかける。

「お前、よくここが分かったな……」
「ん〜?いや、戦ってた時にどーも足下が変なカンジしてたからさぁ。こりゃなんかあるなーと思って。ま、さすが俺、ってか?」

さっきの雰囲気を晴らそうとわざと茶化すように言ってみる。
しばらくすると、回復術のおかげか、男が少しばかり落ち着いたようだった。

「一体何があった?」
「セインガルドの大司祭と名乗る者が部下を三十人ほど連れてやってきまして、その男が突然、神像を運び込んできたんです。私達は捕らえられ、抵抗した者達は、もう……」
「酷い……」

確かに。いきなりやってきて、罪もない人達を皆殺しにするなんてさ。
……やっぱり、人間なんかじゃねーよ。

「おそらく、神像は大聖堂の奥へ運ばれたかと……」
「情報提供助かるよ。辛い中、諦めずに生き残ってくれてありがとう」
「いえ、お役に立ててよかった……!」
「んじゃ、誰かここに残ってこの人の護衛係だな」
「連れて行かないのか?」

ん〜マリー、愚問だぜ?

「戦えない一般人連れ歩いても危険なだけだ。この人だって衰弱してるし。それならここで待っててもらって、危険が去った後にまた迎えに来た方が効率いいだろ」
『それもそうだな。だが、誰が残る?』

この場合、戦えなさそうな奴が残った方が……。

「シェイド、お前が残れ」

え、マジすかリオンさん。

「俺が抜けたら確実に戦力落ちるぞ。まだ迷ってる奴もいるっぽいし」

そう言ってチラリと二人、スタンとフィリアの方を見る。

「……俺も、戦う」
「私も、覚悟を決めます。……そのための力ですから」

思ったより大丈夫っぽいか。これで一安心。

「それに、お前ならいざという時に一人でも戦えるだろう。文句があるか?」

そんな、滅相もゴザイマセン。

『あの……坊ちゃん、僕もシェイドと一緒に待っててもいいですか?』
「シャルってばやっさしー♪ちょうど一人じゃ寂しいと思ってたんだよ」
「……お前、最近やけにコイツに構うな」

ボソリと呟かれたリオンのセリフは、俺の耳には届かなかった。

「何か言ったか?」
「……別に。お前の剣を貸せ」

こうして、一人と一本のお留守番が始まった。



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あきゅろす。
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