深夜、宿を抜け出して、コッソリと神殿の裏口に周る。

コンコン

静かに二回ノックすると、すぐに中から扉が開けられた。そこにスルリと滑り込む俺達。

「見張りの神官が何人か巡回しているようです。それと、明るい内に一通り見て回ってはみたんですが、神の眼らしいものは……」

押さえた声でそう告げるフィリア。
クレメンテを手に入れてから、自信がついたのか随分と頼もしくなった。

「とにかく先に進むぞ。ここでじっとしていては始まらないからな」

そして歩き出そうとした時。

「何だお前達は!!」

一人の神官が俺達の姿を見て、襲いかかってくる。

「やば、見つかった!」
「バカッ!早く逃げるのよ!」

神官の攻撃をかわし、神殿の奥へと走った。
だが、だんだんと襲ってくる人数は増えていき。

「チッ、囲まれたか……」

四方に十人弱の敵。もうこれ以上は逃げられない。
俺は腰の剣を抜いた。リオンとマリーも戦闘に備えて身構えている。

「戦うっきゃねーな、これは」
「でも、シェイド!相手は人げ……」

スタンがそう叫ぶと同時に、俺は一人の神官の胸に深々と自分の剣を突き刺した。

「「………ッ!!」」

フィリアとルーティの声にならない、喉に詰まったような叫び声が聞こえた気がする。
スタンも、リオンとマリーまで、驚いたような表情をしてる。
その間に、俺は敵の中へと飛び込み、三人、四人と片付けた。

「シェイド、どうしてっ!!」

五人目を斬り捨てたところで、スタンが叫ぶような声を上げて、俺につかみ掛かってきた。
俺はそれには構わず、冷静に今の状況を判断していた。

(戦闘できてるのはリオンとマリーだけか。でも、あの二人も迷いがある。殺さないように戦ってるのが丸分かりだ。残りの三人は問題外だな。これじゃ全然、)
「答えろよ!!何で殺したんだッ!!!」

俺は、怒りと困惑を露にするスタンの瞳を、どこか冷めた目で見つめていた。

「身を守るためには仕方ないだろ。アイツらだって殺す気で襲って来てるんだし。それとも、敵に情けかけて自分が殺されろって?冗談じゃない」
「……!!そんなこと言ってないだろ!」

そういうスタンに俺は剣を向け、

「それに、もうコイツら人間じゃねーだろ」

スタンの背後に迫っていた敵の眉間を貫いた。
剣を持つ手に、頭蓋を砕く感触が伝わる。
崩れ落ちた死体を蹴り上げると、その体内からレンズがこぼれ落ちた。
それを見て、皆がハッと息を呑むのがわかる。

「動植物にレンズが取り込まれたらモンスターになる。じゃ、レンズを体内に持つコイツらだって立派なモンスターだ。もう人間じゃない」
「も、元には、戻せないの……?」

あ、ルーティがやっとちょっとは立ち直ったかー!

『……不可能だわ。あなただって、今までたくさんのモンスター達を見てきたでしょ?』
『それこそ死ぬまで、戻らんじゃろうな……』

そーゆーこと。だから……。

「お前らが戦えないってんなら、俺が一人で片付ける。比較的俺は人を殺す事に躊躇いがないからな。生き残るためには殺さなきゃいけないんだ。いちいち傷ついてられないだろ?……というわけで、肉体的にも精神的にも被害は最小限にするために、戦えないやつは下がっとけ」

そう言って尋ねると、敵を片付けたらしいリオンとマリーがこちらにやってきた。



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