2 深夜、宿を抜け出して、コッソリと神殿の裏口に周る。 コンコン 静かに二回ノックすると、すぐに中から扉が開けられた。そこにスルリと滑り込む俺達。 「見張りの神官が何人か巡回しているようです。それと、明るい内に一通り見て回ってはみたんですが、神の眼らしいものは……」 押さえた声でそう告げるフィリア。 クレメンテを手に入れてから、自信がついたのか随分と頼もしくなった。 「とにかく先に進むぞ。ここでじっとしていては始まらないからな」 そして歩き出そうとした時。 「何だお前達は!!」 一人の神官が俺達の姿を見て、襲いかかってくる。 「やば、見つかった!」 「バカッ!早く逃げるのよ!」 神官の攻撃をかわし、神殿の奥へと走った。 だが、だんだんと襲ってくる人数は増えていき。 「チッ、囲まれたか……」 四方に十人弱の敵。もうこれ以上は逃げられない。 俺は腰の剣を抜いた。リオンとマリーも戦闘に備えて身構えている。 「戦うっきゃねーな、これは」 「でも、シェイド!相手は人げ……」 スタンがそう叫ぶと同時に、俺は一人の神官の胸に深々と自分の剣を突き刺した。 「「………ッ!!」」 フィリアとルーティの声にならない、喉に詰まったような叫び声が聞こえた気がする。 スタンも、リオンとマリーまで、驚いたような表情をしてる。 その間に、俺は敵の中へと飛び込み、三人、四人と片付けた。 「シェイド、どうしてっ!!」 五人目を斬り捨てたところで、スタンが叫ぶような声を上げて、俺につかみ掛かってきた。 俺はそれには構わず、冷静に今の状況を判断していた。 (戦闘できてるのはリオンとマリーだけか。でも、あの二人も迷いがある。殺さないように戦ってるのが丸分かりだ。残りの三人は問題外だな。これじゃ全然、) 「答えろよ!!何で殺したんだッ!!!」 俺は、怒りと困惑を露にするスタンの瞳を、どこか冷めた目で見つめていた。 「身を守るためには仕方ないだろ。アイツらだって殺す気で襲って来てるんだし。それとも、敵に情けかけて自分が殺されろって?冗談じゃない」 「……!!そんなこと言ってないだろ!」 そういうスタンに俺は剣を向け、 「それに、もうコイツら人間じゃねーだろ」 スタンの背後に迫っていた敵の眉間を貫いた。 剣を持つ手に、頭蓋を砕く感触が伝わる。 崩れ落ちた死体を蹴り上げると、その体内からレンズがこぼれ落ちた。 それを見て、皆がハッと息を呑むのがわかる。 「動植物にレンズが取り込まれたらモンスターになる。じゃ、レンズを体内に持つコイツらだって立派なモンスターだ。もう人間じゃない」 「も、元には、戻せないの……?」 あ、ルーティがやっとちょっとは立ち直ったかー! 『……不可能だわ。あなただって、今までたくさんのモンスター達を見てきたでしょ?』 『それこそ死ぬまで、戻らんじゃろうな……』 そーゆーこと。だから……。 「お前らが戦えないってんなら、俺が一人で片付ける。比較的俺は人を殺す事に躊躇いがないからな。生き残るためには殺さなきゃいけないんだ。いちいち傷ついてられないだろ?……というわけで、肉体的にも精神的にも被害は最小限にするために、戦えないやつは下がっとけ」 そう言って尋ねると、敵を片付けたらしいリオンとマリーがこちらにやってきた。 [back][next] [戻る] |