「俺がいた頃とほとんど変わってないのな」
『そうですね……あっ!あそこ、僕とイクティノスの部屋ですよ!』
「あぁ、俺がいなくなった後はイクティノスと一緒だったのか」
『今思えば、あまりに気落ちしていた僕の見張りだったのかもしれません。自殺なんてするはずないのに……シェイドに救われた命を粗末になんてしない』

あの頃、俺はシャルと同室だった。
実際は、ハロルドとカーレルの近くに一人部屋を持ってた俺が、ただの一般兵だったはずなのに何故かハロルドと仲の良かったシャルに目をつけて引っ張り込んだってのが正しい。
剣の腕はもともと良かったから、機会さえあれば昇進は早かった。卑屈な性格はなかなか治らなかったが。

『懐かしい、ね……』

何も残っちゃいない。でも確かに、あちらこちらに当時の懐かしさを感じずにはいられなかった。

「やばい、そろそろ行かないと時間だ」

せっかくだからハロルドたちの部屋も見て行こうと思ってたんだけど、このまま遅刻すればリオンからの雷は免れない。むしろ物理的に昌術を食らわせてきそうだ。

『仕方ありませんよ。思い出は心の中に、ってヤツです』
「ハハッ、なんだそれ?」

俺達は、過去の残滓から背を向けた。
帰らぬ日々をただ懐かしんでたって仕方ないから。






「おい、クレメンテ。アイツの前で女発言は二度とするなよ」
『なんじゃ?美人と褒められて悪い気はせんと思うんだが』
「あの、クレメンテ様……シェイドさんは、その……男の方なんです」
『男じゃと!!?』
「あれでもね」
『その反応、よくわかります』
「俺も全然分んなかったし」
「誰か一目で気付いてやれる奴はいないのだろうか」
『……そういえば一人いたぞ。最初から男だと見抜いた奴が』
「「「「「『『!!?』』」」」」」





「〜っくしゅっ!」
『シェイド、カゼですか?』
「うんにゃ、どーも誰かにムカつく噂されてる気がする。あと思い出した、クレメンテに鉄拳制裁な」


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あきゅろす。
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