『そ、そんなことはともかく、シェイドは天地戦争のことはなかなか知っているようだぞ。私の異名や階級まで言い当てられたからな』
『そうなの?じゃあ、私のことも知ってる?』
「まぁ少しくらいはな。
アトワイト=エックス大佐、地上軍衛生兵長として後方支援、医療班を指揮。一時期敵の好計にはまり科学者チームと共に捕虜としてダイクロフトに幽閉されるものの、無事救出。帰還後、ソーディアンチームに加わった。……かな?」
『あら、もっと嘘八百並べ立てられてると思ったんだけど、ちゃんと事実が伝わってるのね』
「いや、ほかにも嘘くせーの山ほどあったぜ。これは俺が事実っぽいのを抜粋してまとめただけ。他には……中将と大佐がこいな『シェイド!!』

うわ!そんな怒鳴んなくても……あたまがくわんくわんする。

「なになに?気になるじゃない」

ルーティが食ってかかる。やっぱこうなると思ってたぜ。

『そ、それよりこの先は中枢指令室じゃないのか?(汗)』

ディムロス、話の逸らし方不自然だって。

「ええ、この奥から声が聞えます」

あ、ホントだ。いつの間にかかなり声もでかくなってる。
俺達は声の主がいるであろう扉を開いた。
そこには、一面のコンピューターと
……一本の古びた剣。

『よく来たの、フィリア=フィリス。さぁ、お入り』
「え、今の声聞こえたぞ?」
「あたしも……」
「僕もだ。ひょっとするとこれは……」

ようやく皆この声の主に気付いたっぽい。

『『『クレメンテ老!!』』』
『いかにも。皆、久しいのぉ』
「ソーディアンの声だったんだ……」

ソーディアンの声もマスター以外は距離に関係するからなぁ。剣を見てても不思議だって思うんだから、なんもねーとこから聞こえたら不気味なだけだし。

『クレメンテ、実は……』
『わかっとる。神の眼じゃろう?いくら眠っとってもこのワシがあれだけ強力なレンズ反応に気付かんはずがない。だからワシは、フィリアを使い手としてここへ呼んだんじゃよ』
「ええっ!?わ、私ですか?」

あ、何か嫌な予感。

「でも、私なんかがマスターになっても良いのでしょうか?いくら声が聞こえると言っても、あなたの力を使いこなせるか…自信がありません……。シェイドさんも声が聞こえているのでしょうから、シェイドさんがお持ちになった方が……」

あ〜なんでこんな自信喪失してんだ?フィリアはもっと強い奴だと思ってたんだけどなあ。

「大丈夫だって。クレメンテはフィリアが持った方がいいよ。この剣はどっちかっていうと攻撃には向いてなさそうだからな。前衛の俺には不向きなの」
「だが、お前がマスターになった方が戦力になるんじゃないのか?」

またこのお坊ちゃんは人が説得してる所にいらんことを……。

『わしゃ美人な女の子ならどちらでもいいぞ』
「「「「「『『『!!』』』」」」」」
「……俺が断固拒否する。というわけでフィリア、マスター決定な」
「で、ですが……」
「フィリア、力が欲しいって言ってたろ?」

皆の足手まといにはなりたくないって。
今が、強さに一歩踏み出すチャンスなんだぜ?

「……!そう、ですね。クレメンテ様、私はあなたを受け入れます。」
『うむ、承知したぞ』

フィリアはクレメンテを手に取り、俺の方を向いて力強く微笑んだ。

「とりあえず目的達成だな!あのさー、帰るまで少しは時間あるだろ?ちょっとラディスロウ探検していいか?」
「駄目だ」

そんな即答しなくたっていいじゃんかよ!!

「だってどうせリオンの事だから、一時間以内に帰らなかったら先に行け、とか言ってんだろ?まだまだ時間あるじゃん」

それを見越して遠回りを避けたからな。

「……三十分後に入口で合流だ。遅れたら遠慮なく置いて行くからな」
「わーかってるって。あ、あとシャル貸して?」

ちょっとおねだり気味に……ゴメン、寒いのは分ってるからやってないって。



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