力を持つ者1
潮の香り漂う薄暗い空間。長年海の底にあったためか、閉鎖された場所ながら、湿気たような重苦しい空気は否めない。
俺達はそんな中をフィリア(と俺)の聞こえる声を頼りに奥へと進んで行った。
………とにかく、

「いやだー!!こんな暗くてジメっとしたとこは俺に合わねー!!」
「こんな所に合うと言われるヤツの方が不幸だろうが」

なんだか今日のリオンは切れ味が良さそうだ。
イメージとしては、最新式穴開き包丁砥石付今ならなんと果物ナイフとキッチンばさみも付いて9980円、ってトコか?(高いですし意味分かりませんから。ついで言うとこの世界ガルドですから)
うるせー。世界は俺を中心に周ってるんだ。

「なんつーかさー、シケるかカラッとするかどっちかにしてほしよなー。
いっそ湿度0か100%か」
「お前はどうしてそう極限状態に行きたいんだ?」

うう、坊ちゃんに一刀両断されちまいましたよ。

「でもこれくらいじゃ……負けない!!」
『いきなり誰のマネですか』
「初めて入ったバレー部で、鬼コーチから目をつけられ、ほぼ毎日のように百本レシーブをやらされて血と汗と涙に溢れた青春を味わってる真っ最中の現役女子高校生17歳のマネ」
「……一体僕達に何を求めているんだ」
「ただ、はやくここから出てシャワー浴びてーなー、と」
「どこからそう察しろと?」

なかなか今日はリオンと円滑なコミュニケーションをとれているようだ。
……え?そう思ってるのは俺だけだって?そんなことナイナイ。

「あの、この先から声が聞こえるんですが……」

フィリアがそう言って指差した先には、大量の瓦礫に埋もれた通路。

「こんなとこ通れないわよ」
「戻って別の道探すか……」

そう言って皆ゾロゾロ元来た道を戻り始めた。
ちょぉっと待てぃ。ここを迂回したらとんでもなく回り道だぞ。んな面倒くせーことやってられっかっての。
俺は一人瓦礫に向き直り、剣を抜いて、

「岩斬滅砕陣ッ!!」

力の限り振り下ろした。

「「「「『『『………』』』」」」」
「シェイド!楽しそうだな♪」

ふぅーっ。瓦礫もキレイさっぱり砕け散ってくれたぜ。

「おい、こっちだろ?早く行こうぜ」

なんか皆が引いてる気がするのは気のせいか?うん、きっと気のせいだ。俺をハブるなんて許さん。(何様だよ)

『さっきから気になっていたんだが…アトワイト、シャルティエ、見覚えがないか?』

少しして、ディムロスがふと思い出したように呟いた。

『もしかしてここ……ラディスロウなの?』
『ホントですね!うわー、懐かしいなあ……』

はしゃいじゃってるよ、シャル。ま、確かに懐かしーよな。

「ディムロス、ラディスロウって?」
「天地戦争中、地上軍統合本部となった輸送艦であり、軍事拠点の中心となった施設。ソーディアンチームの投入時には遥か上空へと浮上し、ダイクロフトへの突入を果たした。戦争終結後は海底に封印され、以後その姿を見た者はいない……ってトコか?………………何みんな、呆然としてんだよ」

とりあえず解説してやったら、なんか開いた口が塞がりませんってカオされたし。

「シェイド、詳しいわね……」
「お前、記憶喪失じゃなかったのか?」

ちょ、なんだよリオンまで!

「だから本読んだって言ったじゃんか。どこぞの田舎者と一緒にすんなっての」「悪かったな!」
「あー違った。これじゃ世の中の田舎者の方々に失礼だ。どこぞのスカタンと一緒にすんなってのが正しいか」
「……もういいよ(泣)」

スタンが再び沈んだようだ(笑)。



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あきゅろす。
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