力を望む者1 ストレイライズ神殿からの帰り道、まだ日は高かったが強行軍だったこともあって、俺達はアルメイダに一晩泊まることとなった。 「はあ、今日は久々にベッドで寝れるわねー」 宿のロビーのソファにどっかりと腰を下ろしたルーティ。 「オヤジくさいぞ、ルーティ。俺達若者はもっとハキハキしてなきゃ」 「うっさいわねー。疲れてんのよ」 「そういえば、シェイドはえらく元気そうだな。不寝番ばかりであまり寝ていないだろうに」 うっ……イタいトコつくなぁマリー。 「そうだよ!結局俺達のことも起こさなかったし……」 「そりゃスタンを起こす訳ないでしょ」 『お前は自分の寝汚さを知らないのか』 「……愚問だな」 『もしもの時の最終手段くらいよ』 『懸命な判断ですね』 おおっと、全員からの総攻撃!!スタン選手、これはイタイ!すでに影を背負って沈んでいるようだ(笑)再起不能かーッ!! 「でも、シェイドさんって元々あまり眠らない方ですよね」 スタンの実況中継にハマってたから、いきなりのフィリアのセリフにびっくりした。 「……そうなのか?」 「ええ、夜でもいつも本を読んでいらっしゃいましたし、仮眠室の使用許可を取りに来られたこともありませんよね?」 皆の視線がこちらに集中する。 あれー、俺これ答えないといけないやつか? 「あー、まぁ、そうだけど」 仕方なく、怪しまれないような生返事をしてみた。うっ、なんかリオンさんに睨まれてる気が……。 「フィリアって、シェイドと仲良いんだね」 おっ、スタン。いつの間にか復活してたのか。 「神殿でちょくちょく顔合わせたからな。挨拶して、世間話もして、って続くとそれなりに仲良くはなるだろ」 「ええ。いつぞやのかくれんぼにも(強制)参加させられ、いえ、遊ばせていただいて……」 な、なんだよそのフィリアに対する哀れみの目はーっ!ホントに楽しかったんだからな! 「じゃ、じゃあフィリアは、その……シェイドの事情も……」 「記憶喪失のことでしたらお聞きしています。神殿にお見えになる方にも、シェイドさんのことをお尋ねしたりしているんですが、芳しくなくて……申し訳ありません」 「おいおい、まだやってたのか。手間かけさせるだけだからいいって言っただろ」 「何でよ、アンタ自分の事知りたくないの?」 だって俺が生きてた形跡なんてあるはずないし(あえてあるとしても千年前だし)、やるだけ無駄な事させたくないじゃん。 ……とは言えないから、ここは無難な事言っとくか。 「今の生活に不満はないし。俺は今を生きてるんだ。過去なんかに縛られてらんねーよ」 ……? あれ?なんか今の言葉、自分で言っときながらものすごく違和感しかなかった。 なんでだ? 『シェイドの言う事にも一理あるわね』 「でも、何か納得いかないわ!」 「少しは黙れ、馬鹿女。考え方なんて個人で違ってくるものだろうが。お前が納得いかなかろうが関係ない。そんなことも理解出来ないのか」 「な、なんですって〜このクソガキ!!」 「わ〜っ!ルーティ、落ち着けって!!」 うんうん、ケンカはいいことだ〜♪ 特に接点なく過ごしてきた姉弟にはどんどんコミュニケーションをとってもらいたいものだ。 んで、スタンがとばっちりを食って円満解決っと。 こうして今日も過ぎて行く♪ [back][next] [戻る] |