そんな風に話しながら歩いてると、大聖堂に着いた。あー、もしかしてまたあのクソ長い聖書読むのか?

「天にまします我らが…」
「ていっ!」

アイルツさんの声が響いたと同時に、台座の裏のスイッチを押した。すると、奥の壁が二つに割れて、地下へと続く階段が姿をあらわした。

「シェイドさん……」

うわ!そんな哀しそうな瞳で俺を見るなよぉ!!

「だって、あの聖書長いんだって。ちょいちょい苦情きてたでしょう?」
「いえしかし、様式美というのがありまして」
「アイルツさん実は余裕か?」

最後まで聞いてたら日が暮れるどころか年が明けちまうっつーの!
しょぼんとしたアイルツさんを横目に、地下へと降りる俺。

「……お前、やけに詳しいな」

リオンもすぐ後に続く。行動は信用されてるっぽいのに、そのセリフがまた疑われまくっているような印象を受けるんですけど。

「いやぁ、俺よくここにきてたから。その時に……」
「ええっ!?シェイドってアタモニ信者だったの?」

俺の言葉を遮るスタンに、リオンの眉間の皺がますます深くなる。まあ、俺に信仰心があるって聞けば、その反応もわかるけどな。
まず有り得ないし。

「違う違う。信心深く見えるか?俺の目的は知識の塔の方だよ、よく本を探しにきてた」
「「『『ええっ!?』』」」

何だよその反応は?

「まぁ、その反応は分からんでもないな」
『シェイド、こんなキャラですからね』

ちょっと待てやリオンにシャル!!お前ら俺がここに来てた理由知ってんだろ。

「でも、どうしてわざわざこんな所まで来るのよ。ダリルシェイドにだって図書館はあるでしょ?」
「あー、それは……」
「もういいだろう」

ルーティの当たり前な疑問に答えようとしたら、リオンに止められた。
あ、これってもしかして気遣われてんのかな、俺。

「いいって、リオン。皆にも知っといてもらいたいし」

そう言って歩みを止めて、しっかりと皆に向き合う。
嘘を重ねるために。

「言ってなかったけど俺、記憶喪失なんだよ。半年くらい前にリオンに会うより前の記憶がほとんどない」

ということになっている、なんて言えるはずもないが、皆が息を呑んでいるのが分かる。
あーあ、親しい奴を優しさのない嘘で騙さなきゃなんないって本当に辛いな。

「お前も、私と同じだったのか?」
「おそらくは。自分の名前とか一般常識的なこととかはスタン以上に覚えてるのに、過去に何があったのかがサッパリだ」
「シェイド、俺以上って……」
「「「『『比べるまでもないがな(わね)』』」」」
「………(沈)」
「スタン、本当のことだ。気にするな」

おおっ、マリーが奈落の底に突き落とした。

「で、俺は不足してる知識を補うために、度々ここにお邪魔してたというわけ」
「ところで、お前がここに詳しいのはなぜだ?足繁く通っていたとはいえ、部外者が隠し通路の存在を知っているのは不自然だろう」

あ、そういえば最初はそんな話してたんだっけ。

「いや、前にここに来た時にさ、子供達と一緒にかくれんぼしたんだよ。でも、俺があまりに早く見つけちまうから面白くなくて」

もちろん面白くなかったのは、俺。

「えー……、私達神官全員を強制参加させられまして」

アイルツさんがしみじみと呟く。

「「「『『………』』」」」
「ははっ、面白そうだな♪」
「だよなー。ってか、かなり面白かったんだ!今度みんなで一緒にやろうな♪」

なぜかマリーと意気投合。していると、

「……いいから続きを話せ」

リオンに凄まれました。



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