汚された聖なる地1
陽の差し込みにくい場所ながらも特に苦労する事なく森を抜け、ホッとしていた俺達の目の前に広がっていたのは、美しい緑溢れる神殿の外観などではなく、
「酷い……っ」
血と遺体だらけの、無残にも破壊された建物の残骸だった。
「なんでこんな……モンスターにやられたのか?」
「最近連絡が取れなくなっていたと聞いていたが、まさかこんな事になっていたとは」
皆も目の前の光景に、結構動揺してるっぽい。そんな皆を見たくなくて、少しでも早く立ち去ろうと神殿へと行くことを提案した。
「ん?あの扉、封印されているな」
神殿に入ってすぐ前にまう扉を見て、リオンが訝しげに呟いた。
「ああ、あれは……知識の塔に続く扉だ」
「知識の塔?」
やっぱり田舎出のスタンは知らねぇよな。分かってた事だけど。
「このセインガルドでは一番大量の書籍を保管、研究してる施設だよ。簡単に言えばでっかい図書館ってとこか」
「図書館?こんな大きい建物が!?」
塔のてっぺんを見上げたスタンは、ぽかんと口を半開きにしていた。
「見た目は厳ついけど、禁書エリアとかを除けば一般にも普通に開放されてるよ。いつもは、な」
「大方ここを襲った何者かが封印を仕掛けたんだろう。強引にでも解くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!これはモンスターのせいじゃないの!?」
リオンと二人、神殿の奥に進もうとすると、ルーティのストップがかかる。
あ、そういや説明すんの忘れてた。
「さっき外に転がってた死体、明らかに刃物で殺られてたからさ。武器を持ったモンスターは、俺の知る限りじゃそう多くないだろ。んで、トドメがこの封印だ」
「剣が使えて、封印まで出来るモンスターなど聞いた事がない」
「いつの間に……」
ははは、俺達を甘く見んなよ。伊達に国から給料貰ってねぇって。お仕事はちゃんとしてます。
「ま、とにかく封印解いちまおうぜ。この手の封印は、どっか近くにある封印石ってヤツをぶっ壊せばよかったはずだ。道も別れてるみてぇだし……俺とリオンで左から行くわ。そっちヨロシク」
とっとと決めて、ヒラヒラと手を振りながら奥へと進む。たしかこっちの道の方が封印石の数多かったような気がするし。
「おい、どうして僕と組んだ?僕達は別れた方が効率がいいだろう」
あれ?言われてみれば……。
「なんでだろ?」
「僕が聞いている」
そんな一発で斬り捨てなくても。
『シェイド、坊ちゃんと別れたくなかったんじゃないですか?』
「…………………は?」
俺が?リオンと?んなわけ……。
「あー、かもしんね。向こうのメンツと一緒に行ったらやっぱり、見とかなきゃって意識になるじゃんか。無意識にそれを避けたっぽいわ。リオンといる方が楽だよなー、って」
そう言った途端、リオンがかなり微妙な顔をした。なんとも言葉に形容しがたい表情を浮かべている。どういう感情の発露なんだこれは。
「………」
「いや、何か言えよ。もしかしてどっか調子悪いのか?」
そういって額に手をあてようとしたら、ものすごい勢いで逃げられた。
……おい、その反応はなんか傷付くぞ。
「べっ、別にどこも悪くはない!とっとと行くぞ!!」
何だ一体?どうしたお坊ちゃん?
とはいえ、このままだと置いてかれそうな勢いだったから、慌てて後を着いて行く。
身長の割に足が速いんだよコイツ。
『何だか悔しいですね。シェイドが取られちゃったみたいで……』
「シャル、何か言った?」
『いいえ、ちょっとした独り言です。シェイド、坊ちゃんのことは気にしなくていいですよ。ただの照れ隠しですから』
「照れてんの?あれで?照れるとこか?」
「〜〜〜っ!シャル!!」
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