「おぉ、リオン。よく来てくれた」
「お呼びでしょうか、陛下」

久々に王から呼び出された。
思えばここへ来たのは、シェイドとソーディアンの護衛の任務で呼び出されたのが最後だったはず。
こんなに長く顔を見ずにいるのは初めてだ。アイツは上手くやっているだろうか。何事もなければ、今頃は飛行竜でこちらに向かっている所だろうが。

「うむ……実は、そなたにハーメンツへと赴いてもらいたい。ジェノス近くの我が国の管理下にある神殿より、国宝の杖が盗まれたのだ。そやつらがハーメンツへと向かっているという情報が入った」
「その者達の討伐ですか……。分かりました。すぐに」
「失礼致しますっ!!」

突然大きな音をたてて、謁見の間の扉が開かれる。振り向いた先にいたのは、今までになく慌てた様子の兵士の姿があった。

「何事だ!国王の御前で騒々しい……」

側に控えていた七将軍の窘める声がとぶ。だがそんな事は、兵士が次に言った言葉で一気に吹き飛んでしまった。

「ご、ご報告致しますっ。アルメイダ付近にて、墜落した飛行竜を発見しました!!」
「何だと!!?」
「飛行竜は、ほぼ全壊。生存者は……ありませんでした……」
「「「「!!!」」」」
『シェイド……!!』

飛行竜が墜落?全壊?生存者ゼロ?
……シェイドが、死んだ?
そんな馬鹿な。だってアイツは、ついこの間まで馬鹿みたいに笑ってたじゃないか。

「船内には、大量のモンスターの死体がありました。おそらく、襲撃を受けたものと思われます」

兵士の言葉が、耳をすり抜けていく感じがする。聞かなくてはいけないのは分っているのに、何だか頭の中がハッキリしない。

「……それで、輸送中のソーディアンは?」
「現在も捜索中ですが、船内には残されていませんでした……」
「そうか、ご苦労だった……あと一つ、聞いてもよいか?」
「何でしょう?」
「客員剣士シェイド=エンバースの死体はあっただろうか?できれば彼はこちらで引き取り、手厚く葬ってやりたいのだ」

その言葉に、一気に思考が戻って来る。

「容姿を、お聞きしても?」

王が口を開くより先に、咄嗟にシェイドの特徴を口にしていた。

「プラチナブルーの髪に金瞳、細身で中性的な顔立ちの男だ」

そう言うと、兵士は何かの書類―――おそらく、今回見つかった遺体の特徴を記したリストを確認する。

「少々お待ち下さい……。今のところ、その容姿に当てはまる者は見つかっておりませんが」

ある意味ほっとした。が、だからといってシェイドが生きている確たる証拠はない。
これからの捜索で、遺体が見つかるかもしれないのだから。

「そうか、ご苦労だった。また進展があれば、報告を」
「はっ、分かりました。それでは失礼します」

兵士が出て行き、その場は一気に沈んだ雰囲気となってしまった。

「……今思えば、まるでシェイドはこのことを知っているような振る舞いだったな」

ふと、イスアード様がそんなことを口にした。
そうだ、らしくない言動の数々。アイツは、地位や名誉なんかには全く興味のない奴だったじゃないか。
なのにあの時は、何としても僕を任務から外そうとしていた。
そして何よりあの出発前夜。
あんな情緒不安定なシェイドは見たこともない。
ありえないかもしれないが、お前は本当にこうなる未来を知っていたんじゃないのか?

「……陛下、ハーメンツへ向かわせていただきます」
「リオン……。すまないな、こんな時に」
「いえ、アイツは必ず帰って来ます。……こんな風に沈痛な面持ちでいては、拗ねて文句を言うでしょう」

そうだ、アイツは帰って来るに決まってる。そしてこの光景を見て、「勝手に俺を殺すなよ」とかほざくんだ。
だから、僕はいつも通りにしてやる。心配したと思われるのは癪だからな。
謁見の間を後にした僕は、八名の部下を連れ、ダリルシェイドを出発した。

『坊ちゃん、シェイドの事信じてるんですね』
「……別にそんなんじゃない。ただ、いつもアイツのペースにのせられるのが気に食わないだけだ」

いつも飄々としついて、掴み所がなくて、やることが突拍子もなくて……考え出したらイライラしてきた。

「行くぞシャル……憂さ晴らしだ」
(Σええっ、何でっ!?シェイドが心配だって話じゃなかったの?なんか分らないですけどゴメンナサイ、遺跡荒らしさんっ(汗))

せいぜい首を洗って待っていろ、国に喧嘩を売った馬鹿どもが。



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あきゅろす。
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