「うん、ここまでは嫌味なくらい運命通りだな……」

もうすぐこの宿に泊まってるおじさんと話して、お人好しを存分に発揮するんだよな。
……ん?もう出て来た。詰め所に向かってるっぽいな。本当にお人好しなことだ。

「……もし俺がスタンみたいな奴だったら、リオンを救う事をためらったりなんかしないんだろうな……」

どこまでも真っ直ぐで、お人好しで、優しくて、誰にでも手を差し延べるスタン。
それとは逆に、捻くれていて、怖がりで、保身ばかり考えてる俺。運命にあがらう強さも、あがらおうとする意志すらも持ち合わせていない俺。
今回の飛行竜の件だって、細かい所を見れば変わった事もあったけど、結果的に見ればクルーは全滅。まるで史実通りだ。ただそこに俺という生存者が増えただけ。この世界での本当の生存者はスタンただ一人と何も変わっちゃいない。

「やっぱり、俺なんかには何も出来ないんだ……」

そんなことを考えていると、視界の端に赤い髪がちらついた。と思うと、金髪とぶつかる。ぼうっとしている間にこんなところまで進んでたのか。
倒れた赤い髪の女性は、とくに何事もなさそうに起き上がり、スタンと何事か話している。そしてスタンが頷くのを確認すると、二人は山道の方へと駆け出して行った。

「イベントクリア……ってか?」

もうここまで見届ければ十分だ。あんまり長居してるとスタン達に追いつかれちまう。
それに、できればハーメンツ行く前にリオンに顔を見せておきたかった。
きっともう飛行竜墜落の話は耳にしてるだろうから、一応無事な姿を見せておきたい。……たとえ心配されてなくともさ、全くの他人じゃねーんだから少しくらい気にはなってると思うんだ……たぶん。っていうかむしろ希望。

「おっちゃん、悪いな。もう出発するわ」
「あれ、泊まっていかないのかい?」
「うん、急ぎの用事ができてさ。金はいいよ」
「そうか?気をつけろよ、お嬢ちゃん」
「………(怒)」

もう流石にいちいち訂正してらんねーし……。
俺はせめてもの腹いせに勢いよく扉を閉め(おっさんはちょっとビビっていた)、北の国境に向かった。

「通行証を見せてもらえますか?」
「ああ……はい、これだよな?」

そう言って兵士に通行証を渡す。
実は今回の任務を受けてすぐ、ダリルシェイドの兵士に頼んで通行証を手配してもらっていたのだ。

「ええ、結構です。よい旅を」
「ありがとう、ご苦労様です」

何事もなくすんなり通過できた。……やっぱ平和っていいよね☆(スミマセン、言った俺もサブイです)
そして国境を抜けて真っ直ぐ行くと、

「うーん、久々の緑の大地!」

セインガルドの温暖な気候が懐かしい。一面に広がる草原で、横になって昼寝でもしたい気分だ。でも、今はそんなことをしてる場合じゃない。

「よし、帰るか。ダリルシェイド!」

足取り軽く、歩き始めた。



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