予測可能な未来1
「では、私はここで失礼させてもらうよ。……これ以上フラフラしていると、こっぴどく叱られそうだからね」

そのウッドロウのセリフに、思わずというか笑ってしまった。訳が分っていないスタンだけは、一人首を傾げているが。

「君達のこれからの旅の無事を祈ってるよ」
「ああ、アンタも頑張れよ」
「はい、ウッドロウさんもお元気で!」

そして、終始爽やかだったウッドロウは、最後まで爽やかに振る舞いつつ去って行った。





「ディムロス、いい加減喋れよ。ソーディアンも黙っちまえばただの剣だぜ?」
「あっ、そうだよ!急にウッドロウさんのいる所では話しかけるなって言い出すしさ」
『……あの男は私の存在に気付いている。声が聞こえていたようだからな。警戒するに越したことはない』

久々の頭の中に響く感覚。一日半ぶりくらいだろうか?
そういえばシャルはどうしてるかなあ。リオンも心配……してくれそうもないな、絶対に。

「ディムロスの声?……って、皆聞こえるんじゃないのか?」

そういってこっちを向かれた。まぁ、確かに俺は聞こえてるけどさ。

「大多数の人は聞こえてないな。ちなみに俺達はそのごく少数に含まれてるみたいだな」

首を竦めながらそう言えば、唖然としてしまうスタン。ていうか、この先説明すんの面倒くさいんだよな。
よし、ここは逃げるが勝ち。

「というわけで、俺もここから別行動とるから」
「えぇっ!?どうして!」

そんなに別れを惜しんでくれるなよ。

「飛行竜の襲撃、墜落と、マジで予想外の事態が連続したからな。しかも素質を持った者とも遭遇しちまったし。これらの事を先にダリルシェイドへ行って、報告しなきゃならないんだよ」

それにこのまま同行したら、犯罪の片棒担がされるハメになるし。それだけは勘弁願いたい(切実)。

「でも、シェイドはディムロスを持って行かなきゃならないんじゃ……」
「どうせお前、ダリルシェイドに行くつもりだったんだろ?そん時にディムロス持ってきてくれりゃいいから」

それに今俺がディムロス持って行ったら、お前無事にはダリルシェイドへ辿り着けないぞ?そのレベルだし。

『スタン、その……私も久々に目覚めたんだ。もう少し、世界を見てみたいのだが……』

あら中将!アンタいつからそんな可愛いっ子キャラに成り果てたのさ。
でもこれはお人好しには効いてるみたいだ。よし、もう一押し!(アンタら思考回路似てますね……)

「ディムロスもこう言ってる事だし、な?」
「そうだな……うん、分ったよ」

よっし、作戦成功!!心の中でガッツポーズしてた俺は、思わず拳をぐっと握り締めていた。

「じゃあ、また後で。無事に辿り着けよ、田舎者!ディムロスも、またな」
「田舎者は余計だって!……シェイドも気を付けてな!」
『あぁ、また会おう』

そして別れを告げ、北の国境へ行った………フリをして、俺は宿屋に飛び込んだ。
だってここまで俺が干渉しちまって、ちゃんと運命通りに物語が進むかどうか不安だったんだ。

「悪いけど、ここの真上の部屋って空いてるか?」

そして、宿のおっさんに話しかける。

「あぁ、空いてるよ。泊まりかい?」
「ああ、頼むわ」

案内されてきた部屋は、窓から玄関先どころか街全体がバッチリ見渡せる絶好のポイント。とりあえず武器だけベッドに置いて、窓際に座り込んだ。

「おっ、スカタン発見」

俺と別れたあの場所で、一人ディムロスに向かって何か話しかけている金髪君を見つけた。
道行く人が怪しそうに振り返っているのも仕方ないだろう。
ソーディアンの声が聞こえなきゃ俺にだって、もの言わぬ剣に話しかけてるただの変人にしか見えないんだから。

「……街から出るのか?」

国境の方はこの部屋からは見えない。でもその光景は何となく想像できる。今頃兵士に怪しまれてるんだろうな。
そして案の定、慌てて駆け出して来たスタン。ディムロスと何か喋って(実際声は聞こえないから、スタンが剣に何か訴えているようにしか見えない)、南側の国境へ。
だがそこでも通してもらえなかったのだろう。しゅんとしてとぼとぼ歩いて来る。
そして宿に入り姿が見えなくなった。



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あきゅろす。
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