MOTHER1
「じゃあちょっと行って来るわね、おじいちゃん、ウッドロウ様」
「悪いなウッドロウ。スタンの事、頼むわ」

なぜかチェルシーに懐かれてしまった俺は、これまたなぜか一緒に散歩に出かける事になっていた。





事は一日前に逆上る。
アルバさんの家に辿り着いた俺達は、まだ目覚めそうにないスタンを奥の部屋のベッドに寝かせてもらい、簡単に事のあらましを話したのだ。

「そうか、よく無事で……」
「ホント奇跡だよ。ここは神様に感謝ってとこかな」

もちろんこれは単なる神に対する嫌味。こんな運命をもたらす神なんて、罰が当たったって殺してやりたいくらいだ。
そんな話をしていて、不意に俺の性別についての話題がのぼってきた。
そして案の定。

「俺は男だっつーのッ!!」

女と思われていた。
しかもさりげなくディムロスも息を呑んでいた気がする。後で覚えてろよコノヤロオ……。
だがそんな連中だらけの中、一人だけ、俺の性別を間違わなかった素晴らしいお人がいた。

「私は、シェイドさんが男の方って気付いてましたよぉ?」

チェルシー最高!!
間違わなかったのは君が二人目だ!
それにうっかり俺が感動して、ひたすらチェルシーをかまいまくって可愛がっていたら、いつの間にか懐かれていた、というわけだ。
そうして話は冒頭に戻る。

「シェイドさんってお母様みたいですね」

手をつないで山道を歩いていると、いきなりチェルシーがそんなことを言い出した。
女呼ばわりはムカつくけど、母親とか姉とか言われるのは別に何ともないのが不思議だ。おそらくはその言葉自体が、人の外見でなく、内面を示すものだからなんだろう。

「母親?こんな口悪い母親、フツーはいないだろ」
「でもでも、シェイドさんとこうやって一緒にいると、すっごく暖かくて、安心しますぅ。なんだか、お母様と一緒にいるみたいですよ?」

そういえば昔も似た様な事を言われたなぁ。俺ってそんなにババ臭いのか?

「違います!何ていうか……えっとたぶん、ほーよーりょくがあるんですよぉ」
「うわっ!チェルシー、俺の心読むなよ」

びびった。心の声に返事が来るんだもんな。
でも……あれ、何かチェルシー元気なくないか?

「どうした?」
「……チェルシーのこと、気持ち悪いですか?他の人が考えてる事が分かったら、不気味ですか?変ですか?」

やばい、触れちゃいけない所だったんだ。地雷を踏んじまった。

「皆さんのお顔を見てたら、考えてる事くらい分りますっ!どうしてチェルシーから離れて行っちゃうんですか?……一人は、寂しいです」

たしか、二親共に他界してたんだっけ。この年じゃ寂しいよな。近くに同世代の友達もいないだろうし。
ああ、だから俺に懐いたのか。今までで一番年が近かったから。



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