浅黒い肌に銀髪の長身……こいつが……。

「仲間が気を失って……。どこか休ませられる所とかないですか?」
「それなら、この先に私の知り合いの家がある。……彼も、私が運ぼう」

そう言ってくれたので、遠慮なくスタンを渡す。実際、同じくらいの身長の奴運ぶのキツかったんだよな。

「すみません。……失礼ですが、お名前を伺っても?」

たぶんアルバさんの所に向かうんだろう、少し深い雪の中を苦もなく歩くウッドロウの後を追いながら尋ねた。ここで聞かずに後でうっかり名前呼んじまったらマズいからな。

「私はウッドロウだ。君は?」
「シェイド……だよ。彼はスタン」

あえてフルネームは言わない。一国の王子なら、俺の名を知ってるかもしれないし、ぶっちゃけ今、客員剣士であることをバラしたくはないからな。そして、ディムロスのことも言わない。実際これは機密事項だし、ホントはスタンにだって知られてはならないことだったんだから。

「それと、そんなに畏まって話さなくていい。普段通りにしてくれないか?」
「あー、そっか?助かるよ。目上にはまず敬語ってことにしてるけど、実際あんま好きじゃなくてさ」
「何を言うんだい、君だってそれ相応の身分を持っているだろう?シェイド=エンバース殿」

あちゃあ……バレてたか。なかなかやるなぁこの王子。良い人っぽく見えて実は曲者だったりする?
でも、やられたらやりかえさなくちゃ……な。

「貴方ほどじゃありませんよ、ウッドロウ=ケルヴィン様。自国でご公務をなさったほうがよいのでは?」

そう言って、悪戯っぽくニッと笑ってやる。俺のセリフに唖然とするウッドロウ。へっ、ザマァミロ。俺に勝とうなんざ百年早いっての。

「ハハッ!……私の負けだ。すまなかったね。それにしても、何故気付いたんだ?これからのために教えてくれないか?」

話し方にもさっきまでのピリピリした雰囲気がなくなってる。ちょっとは信用してくれてるのか?

「名前……かな?これでも俺の仕事上、そういったことは詳しく調べてあるもんで。そっちこそよく分かったな。俺はそんなに有名な方じゃないと思ってたんだが」
「旅をしていれば一度は聞く名前だよ。君の相棒と共に、ね」

そりゃ天才剣士と組んでたら広まっちまうか。

「ま、お互い深いトコには突っ込まないってことで」
「そうしてくれると、こちらも助かるよ。……さぁ、着いた。ここが私の師匠の住んでいる家だ」

そして俺は、ある意味この物語の始まりの場所とも言える小屋を目にした。



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