生きて背負うもの1
甲板を掃除するスタンと他愛ない話をしながらも、俺は刻一刻と近付くその時を待っていた。

「で、その時リリスがさぁ……」

ドォォォン、という大きな音と共に船全体を揺らすほどの衝撃が襲って来る。咄嗟に俺は、すっ転んだスタンの襟元を引っ張った。だってこの高さから落ちたら確実に死ぬし?

「な、何だ!?」
「おい、ここにも人間がいるぞ!」

上空から下卑た声が聞こえ、見上げたそこには、十数匹のバーバリアンが飛んでいた。
くそ……ここまでは見事に運命通り……じゃない?

「……あのクルーがいない…?」

そうだ。俺がスタンを連れてきたから、コイツを庇ったあのクルーがここにはいない。
……俺の行動で、多少なりとも運命が変わってる?

「シェイド、危ないっ!!」

はっと気付いた時には、目の前には鋭い鉤爪が俺の目の前に迫っていた。咄嗟に剣を抜き、それを受け止める。

「さんきゅースタン、助かった。で、ついでにお前に頼みたいことがあるんだが……」

受け止めていた爪を弾き飛ばし、距離が開いたところで切り捨てる。モンスターの死骸はレンズを撒き散らしながら地上へと落ちて行った。

「この下の倉庫……お前が爆睡してたところに剣が置いてある。あれってかなり重要な物でさ、どうせお前も武器が必要だろうからそれを取って来い。……あとな、ここにいる奴等は俺がなんとしてでも食い止めるから、間違ってもデッキブラシで応戦しようとはするな」
「で、でもそれじゃあシェイドが…!」
「俺も多少は腕に覚えがあるもんでね。そんな簡単にはくたばらねえよ」

ましてや、今のスタンでも倒せるようなモンスターなら俺の敵じゃねぇし。

「速く行けっ!……もし途中で生きている人を見つけたら、ここに連れて来い!」
「……!分かった!!」

ようやく行ってくれたか。アイツの前では晶術使いたくなかったからな……。でも、これで本気出せるぜ。

「ハッ、たかが人間風情が、ひとりで何が出来りと思っている!」
「人間、ねぇ……。んじゃ、試してみろよ。たかが人間かどうか……」

嘲るような笑みを浮かべて言い切ると、敵の一団に飛び込んで行き、その勢いのまま近くにいた一匹を一振りで斬り伏せる。

「……恐怖と共に消えよ」

そこへ、後ろから襲ってきた敵を横へジャンプして避ける。

「鳴け……」

回すように剣を振り、両サイドから襲いかかってきた敵を、相手のスピードも利用して斬り捨てる。

「……極限の嵐!」

性懲りもなくまだ攻撃してくるモンスターを踏み付けるように弾き飛ばし、俺はその勢いで背後にジャンプ。そして空中で体を捻り、ちょうど一か所に集まった敵に片手を向け、

「『フィアフルストーム』!!」

戦いながら詠唱していた晶術を放った。破壊的な威力を持った嵐がモンスター達を上空へと巻き上げ……バラバラと降って来る大量のレンズだけを残し、消えた。

「スタン、大丈夫かなぁ……」

なんか無性に心配だ。



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あきゅろす。
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