3 何年も平和な世界で、戦いなんかとは無縁な日々を送っていたから、多少なりとも判断力が鈍っていたんだろう。 「……!…リオンッ!!」 兵士が逃げる道を作り、今だ戦っているだろうリオンの元へ駆け付けた俺が見たものは、 『シェイド!!坊ちゃんが……!』 血塗れで倒れた黒髪の少年の姿。 ―――り、おん……? それを認識した時、俺の中で何かが弾け跳んだ気がした。 ゆらりと振り返り、モンスターへと剣を向け、 「仲間を傷ける奴は……許さねぇ……」 苦しむ間も与えず切り捨てた。 そこからの記憶はほとんどなく、気が付いた時には血と、モンスターの死骸と、レンズが散らばる中で、俺は一人佇んでいた。 ぽたりと頬に水滴が流れる。 「雨……」 『シェイド……大丈夫ですか?僕の声、聞こえてますか!?』 切羽詰まったようなシャルの声で、ようやく今の状況を思い出す。 「……リオン…!!」 慌てて駆け寄り、首筋に指をあて脈をとる。 ……よかった、生きてる。 とにかく、こんな雨の降る中じゃ体力を消耗するだけだから、どこかに移動しないと……。 そう思って俺はリオンを抱き上げた。 『あぁ……!やっと元に戻ったんですね!!ずっと呼んでたのに全然反応してくれなくて……』 「え?そうなのか?ゴメンな、シャル……」 呼ばれて……?ダメだ、全く覚えてないし。血塗れのリオンを見て、頭に血が上って…。そうだ、こいつら許せねぇって、皆死んじまえって、一瞬で殺してやったんだ…。どうせならもっと苦しみながら死なせてやればよかった。だってリオンを、仲間を傷つけた…『シェイド!!』 はっ、と自分を取り戻す感覚。また思考が沈んでたみたいだ。 頭をふって、余計な考えを追い払う。 「もう、大丈夫。……行くか」 今は、この腕の中の命を消さない事だけを考えなきゃならないから。 [back][next] [戻る] |