「俺は……シェイド・エンバース」
『シェイド!?』

と、大音量で聞こえてきた、頭の中に響くような声。
あっちゃ……いろいろあって、すっかりその存在を忘れてた。
と、そんな俺の僅かな視線の揺らぎを悟ったリオンは驚きを含んだ表情で問い掛けてくる。

「まさか……今の声が聞こえたのか?」

ええ、残念ながらがら聞こえますとも。
少年、もといリオンの性格からいって、俺ってこのままダリルシェイドへ同行される道一直線、みたいな。
覚悟決めるっきゃないか。

「聞こえたけど……今のなんだ?」

あえてここは知らないフリ。さすが俺。さりげなさにスパイスを加えてじっくり煮込んだような素晴らしい演技だ。助演男優賞モノだねっ。なぜ主演じゃないかっつーと、今の俺の気分だ。何か縁の下の力持ち的な存在の方がカッコよくね?(勝手に言ってろ)

「……これだ」

脳内で自画自賛してた俺に、リオンは一本の美しい装飾のついた細身の剣を掲げた。
……これがソーディアンか。俺自身は実物を見るのは初めてなんだよな。なんせこれが出来た頃には俺はとっくにこの世界から吹っ飛ばされてたワケだし。

『はじめまして!僕の声が聞こえるんですよねっ?うわあ、嬉しいなあ……坊ちゃんしか素質のある人が近くにいなくて、他の人とはずっと話せなかったんですよ。あ、自己紹介がまだでしたね。僕はシャルティエ。シャルって呼んでくださいね!それにしてもホントに嬉しいな〜。これからは、坊ちゃんと三人で色々お話ししましょうね!」
「シャル、黙れ」

怒濤の勢いで話し続けるシャルに唖然としてしまった。
これは不覚……。リオンの制止でようやく止まったシャルのマシンガントークだが、本人はまだ話し足りなそうだ。
シャルってこんな奴だったか?

「えーっと……コレはどういうことなんだ?」

とりあえず知らないフリ、知らないフリ。

「ソーディアンというものを知っているか?」
「ああ、地上軍にとっては負け戦に等しいと言われていた天地戦争を勝利に導いたっていう、あの?」

上っ面の歴史だけなら、ゲームを通して知っている。それがこの世界でのどの程度の常識なのかは分からないが。

「……何だ、お前。案外物は知ってるんだな」
「うっわ、それどーいうイミだよ?」
「言葉のままだ。言動からみても、もっと常識知らずな馬鹿だと思っていたからな。少しはマトモだとわかってホッとしたまでだ」

……最後だけを聞いたら褒められてる気もしなくはねぇけど、結局は貶しまくっただけじゃないか?

「とにかく、これがそのソーディアンの内の一本だ」

リオンのそのセリフを聞いて俺がとった行動は、驚いたような唖然としたフリ。
だって何か喋ったら墓穴ほりそうだし。

「さっきも言ったが、お前には一緒に来てもらう。ここの盗賊団のことも聞かなければならないし、なにより素質のある者は貴重だ。セインガルド王とヒューゴ様に指示を仰がなければならない」

きたーっ!
やっぱ連行決定?いやこの場合任意同行か?ダリルシェイドへ行かなきゃならんのか!!

「何をボサッとしている。速く来い!」

俺の意志は無視かよ。人権侵害だっての。



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