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「ふぇ…っ、精市…っ!」
「…名前。」

(またか。)

そう思ったのは、これがもう何度目か分らないぐらい繰り返されてるから。最初は慌てて、慰めたり色々してたけど、今じゃ抱き締めるだけだ。

いつからこうなったんだろう。ああ、俺が入院してからか。もう俺は大丈夫なのに…、名前はたまに夢で俺が死んでしまう夢を見るらしい。

その度にこの発作をおこしてる。発作が起きる度に、俺は深夜有り得ない量の電話とかメールで起こされて、家族に分らないように出ていく。

名前は一人暮らしだから、自分勝手にできるからいいけど…。


はぁ…、正直負担になってる、名前の存在が。俺には、支えきれない、もう。でも、名前が俺の入院中を支えてくれたのも事実だから、なかなか別れを切り出せない。

「…落ち着いた?」
「ん。ありがとう、精市。」

どうすればいいんだろう。ここで優しくしているのは、名前を愛してるからじゃなくて、ただの偽善だ。自分のためにしてること。つい、溜息が漏れた。

「…精市…」
「ん?」
「私のこと、嫌い?」
「どうし「精市は、私を重いって感じてるんでしょ?精市をみれば嫌でも気付くよ…」

何も言えなかった。ただ、名前から目を逸して俯くだけで精一杯だ。

「そう…なんだね。…ごめんなさい。」


彼女は涙を流し始めた。-ズキッ、と胸が痛むけど、ここで涙を拭ってもまた最初にもどるだけだ。

「ねぇ、精市。私と別れて。」
「えっ、」
「お願い…。私、精市の負担になるなら、もういやなの。」


涙でくしゃくしゃになった顔で、名前が笑うから。そこに入院する前の名前を見た気がして、俺は彼女に触れたくて抱き締めた。

「馬鹿だな…俺は。」
「…精市?」
「自分が辛い時には、都合よくいてもらって、相手が辛い時には逃げるんだから。」
「そんな…」
「俺は明るい名前が好きなんだ。だから、俺はこんなうじうじした名前とは別れる。」


ぐっと手を握り名前は、笑顔を保とうとした。

「…分った。今までありがとう。」
「俺もありがとう。それから…」
「?」
「もう、俺は消えたりしない。お願いだから、あの明るい名前に戻って。」
「うん。戻るよ…精市。」
「俺達やり直せるよ。」


泣かせてばかりだね、俺は。

やっとスタートラインに立ったんだ。





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