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誤解連鎖



私達が生きた時代は
差別や偏見が強くて
平和と戦争が常に隣合せだったけど、それでも私は貴方方と会えて幸せでした。

「緋音!」
「精市さん!」
「遅くなってごめんよ…。」
「いいえ。精市さんがここに来てくれただけで嬉しいです。」


家柄の差で精市さんとの交際は自由ではなかったけど、こうやって精市さんが空いた時間に、私に会いにきてくれるのが嬉しかった。

一秒でも長くお互いを感じていたくて、強く抱き締めあった。今の時刻…深夜二時。辺りはシーンとしていて、精市さんの心臓の音が私の耳には、よく聞こえている。


(ああ、もっとこの時間が続けばいいのに。)

精市さんに会えただけで、もう幸せなのに、私ったら、こんな短時間の間ですごく欲深くなってる。


「精市さん…今日は何時まで一緒にいられますか?」

いつものお約束の言葉は、そんな私を現実に引き戻した。―ズキッとする心を極力見ないようにして。だって、たぶんそれはお互いに感じていることだから。


「三時には帰らないといけないかな…。」
「そうですか…」
「ごめんね、いつも緋音には辛い思いをさしてしまって。」
「いいえ、会えなくて辛いのはお互い様です。会えない時間も精市さんが私を思ってくれていると思えば、何も辛くありませんから。」


申し訳なさそうな顔をしている精市さんに、笑いかければ精市さんもつられて笑ってくれた。


「緋音、愛してる。」
「…私もです。」


幸せな時間ほど長くない。町のシンボルの時計塔が夜三時を知らせる鐘を鳴らした。

最後だと言わんばかりに、抱き締めあう腕に自然と力が入る。


すっと同時に離れると、笑って別れの挨拶。

「…じゃ、また今度。」
「精市さんも体を大事にして下さいね。」


精市さんの後ろ姿を、私は今まで二人でいた場所から見送っていく。


胸に広がる切ない思いと、次はいつ会えるのだろうと両方の思いを交差させながら。







あきゅろす。
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