ブラコンじゃなくて、スザコンだ!
 

「かっ、カレン…!?」

「いいよね?スザク」


 何なんだ、この男はっ!?
 どういう事だスザク

 他の人間が来るなんて、
 聞いてないぞ…!


折角屋上でスザクと二人きりの昼食時間を過ごせると思ってたのに。

 楽しみにしてたのに…!


「おいっスザク…!」


睨むとスザクはバツが悪そうに頭を掻く。

 断れ!
 スザクのクラスメイトだか
 友達だか知らんが

 昼食は唯一スザクと学校で
 二人きりで過ごせる
 貴重な時間なんだぞ…!


「例の手紙渡してくれた?」

「……渡してない」

「まさか、本当に捨てたの?」

「捨てるわけ無いだろう…!タイミングが悪くて渡しそびれてるだけだよ…!そんな事言うなら自分で――」

「…例の手紙?」

「っあ!俺、お腹すいちゃった。御飯食べない?」

「あ、ああ」


私が聞き返すと、慌てて話の流れを変える二人。
そして、結局カレンという男は私とスザクのお昼休みに割り込んでくるらしい。


「・・・・・」


 どうして断らないんだよ
 …スザクの馬鹿っ…!


スザクを真ん中に挟んだ形で、水タンク下にある出っ張りに、三人で腰を下ろして昼食を広げる。


「うわぁ、スザクの弁当おいしそう…!」

「え?ああ、うん」


旨いっていつも
スザクは言ってくれてるぞ。
微妙な料理は、スザクが旨いって言ってくれるまで試作重ねて改良したからな。


「このお弁当、ルルちゃんがつくったの?」

「はぁ?!ルルちゃん?!」


スザクがスットンキョウな声をあげ返した。

コイツ、邪魔にきただけじゃなくて慣れ慣れしいヤツだな。
言ってやれ、スザク!


「ルルーシュを慣れ慣れしい呼び方するなよ…!」


 そうだ、そうだ
 もっと言ってやれ!


「何でスザクが断るんだよ。いいよね?別にいいじゃない、ねぇ?俺の事はカレンって呼んでください」


カレンは、首を傾けて私の顔を覗き込む。
私は顔を反らして、玉子焼きを口に運んだ。
ふん。
スザク以外の男と話す気はない。

私はカレンに返事せず話しかけてくるな、という空気をまき散らしてやった。


「本当に美味しそう。味見…していい?」

「あ、こらカレン…!」


私に会話の流れを断たれ、カレンは再び興味をスザクの弁当に戻し、唐揚げをヒョイとつまみあげて、口に放りこむ。

 私が早起きして
 スザクに食べて貰うために
 一生懸命作ったお弁当が…


「美味しい…!ルルちゃんお料理上手だね。いい奥さんになるよ。スザク、玉子焼きも半分ちょうだい?サンドイッチあげるからさ」


もーーっ
スザクの弁当を食うな!!
スザクの弁当を食っていいのはスザクだけだーー!!


「食べたけりゃ私のをやる!」


スザクのために作った弁当に手をつけられる事が許せなくて、私はカレンに自分の弁当をつきだした。


「本当に?ありがとう、ルルちゃん」

「ルルーシュ…」


嬉しそうに私の弁当をつまむカレンには勿論ムカついてるが、私がカレンに自分の弁当を差し出した事にショックを受けたらしく、表情を曇らせるスザクには尚ムカついた。

お前が黙ってカレンに好きなように弁当食われてるから、こうなったんじゃないか。


ギクシャクした空気のまま昼食の時間は終り、


「…じゃあ帰る時、ルルーシュの教室に迎えに行くから」

「…ああ」


一緒に帰る約束をしてスザクと別れ、私はひとりで階段を降りて教室に戻った。


 楽しいお昼休みに
 したかったのに

 何でこんな風に
 なっちゃったんだろ…


「おかえり!ルル」

「シャーリー…」


ムシャクシャしたままで
駆け寄ってきたシャーリーに上手く笑えなくて、


「あれ、どうしたの?元気ないね…?お兄さんとお昼御飯食べてきたんでしょ?」


当然のごとく突っ込まれた。
喜び勇んで教室出てったのに、沈んで帰って来たんじゃ気になるか。


「ああ…。折角二人きりで昼休みを過ごせると思ってたのに…カレンとかいうクラスメイト連れて来やがって…」

「…それだけ?」


シャーリーは首を傾げる。
それだけ?って――
もう十分だろうが。

でも、それだけじゃない。


「私がスザクのために作った弁当を、私の目の前でカレンに食われやがったんだぞ!スザクのヤツがボーッとしてるからヒョイヒョイ摘まれやがって」

「クスッ…」

「な、何が可笑しいんだシャーリー!」

「そんな些細な事で。大袈裟だなルルーシュは。休憩の度に教室に来てくれるし、お昼休みも一緒に御飯食べてくれるし、帰りも迎えに来てくれるんでしょう?十分過ぎる程に優しくて素敵なお兄ちゃんじゃない。求めすぎ!笑いたくもなるよ、ルルーシュってば酷いブラコンなんだもん」

「はぁ?!」
「私、一人っ子だから…羨ましいよ。あんな素敵なお兄ちゃん」

「・・・・」


 …贅沢…なのか。

そう言われればそんな気もしてきた。
確かにスザクには凄く大切にして貰ってる。
贅沢かも。
“酷いブラコン”――…

…ブラコンか?



私には、スザクの他にブリタニアに異母兄が二人いる。
姉も妹も。

母が再婚して日本に一緒に来て以来は数年会っていない。
今も信頼してるし、大好きだけど離れて暮らす事に特に戸惑いも痛みも感じない。
たまに会いたいと寂しくはなるが、元気でいてくれればそれでいい。

でも、

――スザクは…違う。

離れて過ごすなんて考えられない。
考えたくもない。


「ルルーシュがそんなんじゃ、お兄ちゃんの彼女は大変だね」

「アイツには彼女なんていない」

「嘘!本当に?あんなにカッコいいのに?」

「スザクの身のまわりの世話は私が全て、キッチリ完璧にこなしているんだ。アイツには彼女なんて必要ない…!」


 だって、
 スザクが約束してくれたんだ

 ずっと私と一緒に
 いてくれるって

 言ってくれたんだもん…!


「…私はスザクがいれば寂しくない。誰もいらない。スザクだって私がいるんだ、寂しくないんだ!ずっと一緒にいるんだ!いいじゃないか、それで…!」

「よくは…ないと思うよ?だって兄妹なんでしょう?」

「…!」


 兄妹だけど…

 兄妹じゃいけないのか?


 ……何で――…?





スザクがいてくれれば私、それだけでいいから…スザクも何も望まないで――…

[*←][→#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!