Happy Birthday スザク@
「ねぇ、ルルちゃんアナタたち怪しくなぁい?」
「はい?」
スザクの知り合い生徒会長ミレイと初めて顔を合わせた入学時から気に入られてからというもの、資料整理やらイベントの計画やらと何かと手伝いに呼び出されるようになった。
お祭り好きで少々付き合いにくたびれる事もあるが面倒見のいい好人物で頼られると仕方ないかと使われている。
そしてその日も呼び出されて、生徒会会議用の書類をコピーしている最中だった。
ふとミレイ会長が此方を見て言い放ったのである。
何のことか分からず聞き返すとニヨニヨ笑いながら彼女は答えた。
「ルルちゃんとスザクくんの関係」
「は!?」
「アナタたちの間に兄妹らしからぬ男女の空気を感じるっていうか〜」
「‥‥‥」
――ドキッとしたが。
何食わぬ顔でやり過ごす筈だった。
次の言葉を聞くまでは。
「2、3ヶ月前にすごい嵐あったじゃない?そのくらいからさ」
例の一線を越えてしまった嵐の日のことまで指摘され、尻尾を掴まれたような気分になり、ひたすら狼狽。
背中に汗が伝う。
何て鋭い観察眼だろうか、油断していた。
私とスザクは兄妹故に、恋愛関係にあることを周囲の者に感取られるのはよろしくない。
血の繋がりがなくても、兄妹として同じ屋根の下で暮らす以上悟られるべきではなかった、それなのに。
何てかわせばいいんだ?!
完全に答えにつまり目を泳がせていると、ミレイ会長は苦笑いする。
「ゴメンゴメン!そんな身構えないで。冷やかしたいんじゃなくて寧ろ応援したかったんだ」
「…応援?」
「だって最近ルルちゃん元気ないじゃない?」
「!」
――何処まで鋭いんだ。
肝心のスザクは少しも気づいてくれないのに。
「悩んでるならお姉さんが相談のるわよ」
「‥‥‥」
ひとり悩んでいても答えが出せない。
他人の意見にも少し耳を傾けるべきかも。
いや、けど恥ずかしい。
でもバレてるじゃないか。
…よし。
考えた結果、腹をくくり思い切ってミレイ会長に相談してみることにした。
「……スザクの誕生日のプレゼントに何をあげれば喜ぶかと」
「誕生日のプレゼント?」
「そんなのルルちゃんに貰えば何だって嬉しいんじゃないの?」
「…そうですね、3ヶ月前の…あの日まではそうだったかもしれません」
「3ヶ月前まで?」
――3ヶ月前。
そう、スザクに抱かれたあの日までは。
今現在もスザクとは仲良くしているし、ケンカだってしちゃいない。
ただ。
あの嵐の日以来スザクが私に触れて来ない。
あの嵐の日の一度きりで、今日まで繋がったことがないのだ。
そりゃ毎日盛って来られても嫌だが、放置されるのも嫌だ。
もう自分が興味をそそられない存在の女になり果てたのかと思うと、空しさと寂しさで胸が張り裂けそうになる。
「…私にもう征服欲をくすぐらなくなったのかも…。参考までにネットの相談室を覗いてみたんですが…」
「うん?」
「男性は一度抱いて落としてしまうと猛烈に好意を示していた女性にも興味がなくなるとか」
私に飽きて、次のターゲットを探してるのかもしれない。
いつも教室に遊びに来てくれるスザクに興味を持ってるクラスメートが多いんだ。
選り取り見取りだろう。
同じクラスにもきっとスザクを想ってる女がいるはず。
こうしてる間にもスザクに言い寄ってるかもしれない。
そんな事を考え出すと不安で堪らなくなる。
「そんな表情しないの。世の中そんな男の子ばかりじゃないわよ〜?スザクくんはそういうタイプじゃないでしょう」
「…人格ではなくて男という性の生態パターンなのかと。ならばスザクも当てはまってしまう」
「バカね、きっとスザクくんはルルちゃんが大切だからこそ触れ辛くなったんじゃないかな」
「…根拠のない希望的見解です…」
「根拠なくないわよ、だって何時もルルちゃんのこと見る目も振る舞いも優しさと愛に溢れてるじゃない。何か触れ辛くなるようなキッカケとか作ってない?」
「キッカケ――…あ!」
そういえば。
次の日の昼休みまで、人目はばからず触れてきて私を求めてくれていた。
兄上からの手紙を見た後。
そうだ、それからかもしれない。
「思い当たることがあったみたいね。じゃあプレゼントはもう考える必要ないんじゃない?」
「え?」
「プレゼントはルルちゃん自身よ!裸エプロンで新婚ゴッコ!裸エプロンは男の憧れ!」
「えっ」
――そんなのでスザクも喜ぶのか?
しかし、死ぬ程恥ずかしくないか?
裸でエプロンって…!
背後はどうなるんだ考えただけで顔から火が出そうなんだが。
…下着くらい付けたっていいだろう。
よし、そうと決まれば用意だ!
スザクの誕生日を全力で祝ってやる!!
「――なーんて冗談よ!だって男のバカな妄想だからね。2人で美味しいものでも食べて素直に触れあいたいってルルちゃんの気持ちを…アレ?ルルちゃん??」
――そして、スザクの誕生日当日。
公園に前もって用意しておいた自転車に乗り、スザクを置いて一足早く学校から帰宅して大急ぎで着替えた(というか脱いだ)。
後数分でスザクは帰って来る筈。
私は例の姿で、玄関口で正座してスザクを待った。
戸口に駆け寄ってくる足音が聞こえて、穴に鍵を差し込む音がする。
――きた!
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