この手を離さないで
 


結局、カレンと話し込んで(というか捕まって取り調べを受けて)休憩時間は潰れてしまい、お互いの授業の教室移動などで昼休みまではルルーシュには会えなくなった。
やっぱり君に会えない一分一秒は長いよ、ルルーシュ。

退屈で気怠過ぎてアクビが次から次へと出て止まらない。
そう言えば眠いかもしれない、だって昨晩は――フフッ。


「枢木!」

「はい?」


名前を呼ばれ現実に戻る。
そう言えば今、授業中だったかと夢から覚めるようにボンヤリ思い出した。
お冠な数学教師が、ピンク回想中の僕にたるんでるだの留年決定だのワアワア怒鳴ってるけど、気にしない。
留年は望む所なのである。しかも二度、つまり三年を三度する予定だし。
何だったら一年生に戻して下さって結構です、どちらかと言えばその方が好都合。
でも退学だけは勘弁してね!


『キーンコーンカーンコーン』


 四時間目の終業のチャイムは昼休みが始まるチャイムでもある。
これまでの怠惰な態度が嘘のようにテキパキと教科書を片付ける僕を、数学教師が凄い形相で睨んでいるが気にしない。
気にしてる暇なんてない。
階段を二段飛ばしして駆け下りた。

「ルルーシュ!」

「あ、スザク」


 ルルーシュの教室に教師とすれ違い様に走り込み、名前を呼ぶと顔を上げ少し照れながら愛らしい笑みを浮かべてくれる。

このこ僕のなの!

何となく男子たちから注目されてることに優越感を覚えた僕の自慢気な表情は、さぞムカッと苛立ちを誘うものだったに違いない。
気に入らないならかかって来い、いつだって相手になってやるよ諸君。
誰が来たって負ける気はしないね。


「迎えに来てくれたのか、スザク。屋上で待ってくれればいいのに。二度手間だろ?」

「早くルルーシュに会いたいから。1秒でも長く一緒にいたい」

「バ、バカ…」


頬を赤く染めたルルーシュは弁当の入った鞄を持ち、俯いて僕の背中を押す。
そのまま教室を出て、二人で屋上へと向かった。
何処までも青く広がる空に、気分も開放的になる。
誰もいないのをいいことに、僕は後ろからルルーシュを抱きしめた。


「すっ、すざく…!」

「…お腹減った」

「ばか、誰かきたら恥ずかしいだろ!離せ…!」

「いいもん僕は見られても平気だ。寧ろ見せびらかしたい」

「見せるようなもんじゃないだろ…!動けないとお弁当広げられない」


お弁当と一緒に足も広げて下さると、嬉しいです。
ご飯もルルーシュも食べたいです。


「スザクっ」


上着をめくったら、ダメ!と言わんばかりに叩きおとされた。
ちぇっ。
半分本気だったのに。
ルルーシュを解放してあげると逃げるようにルルーシュは僕から離れて又、バカ!と僕をいさめてベンチに座った。
その隣に座って弁当が出てくるのを待ってる間、スカートから出てるツルンと綺麗太腿につい目がいって、手持ち無沙汰だったというか出来心というか。
内腿の柔らかい感触を味わうようにスリスリと手を這わせてしまった。


「もうスザク!今度そういうことしたらフォークで刺すぞ!」

「ご、ごめんなさい」


ちょっと反省。
でも仕方ないんだ、だって君を見てると欲情しちゃって我慢できない。
実はズボンの中で僕の片割れが興奮を主張をしまっている始末。
それに、僕は男らしく(厭らしく)強引に攻めようって決意しちゃったから。


甘酢あんの絡まった肉団子を頬張り舌鼓を打ちながら、チラリとルルーシュを見ると――。


「手紙?」

「ああ。ブリタニアにいる兄上から…航空券まで入ってる」

「はぁ!?航空券!!?」

「ああ、待ってるからいつでもブリタニアに帰って来いってさ」

「い…いいお兄さん…だね」

「ああ、尊敬してるよ」

「‥‥‥」


――まずい。

ルルーシュには僕の所だけじゃなくて帰る場所が他にあったのか。
しかもあっちは血の繋がった本物の兄だ。

その上、僕はさっきのセクハラでかなりルルーシュの中で減点されてしまったに違いない。
現にルルーシュは僕の事を殆ど兄さんとよばない。
ルルーシュの中の自分の位置づけが何となく想像できる。

ブリタニアにいる兄さんに僕の所業を話されたら、一貫の終わりだ。
ルルーシュはブリタニアに強制送還――。


――嫌だ、ルルーシュと離れたくない。


「ごめんルルーシュ…僕、今から心入れ替える!生まれ変わる!!尊敬できる兄さんになる!!!」

「は?」



――僕は自分の中で固い誓いをたてた。

ルルーシュが尊敬できるお兄さんを目指して。

ルルーシュに愛想を尽かされないお兄さんを目指して――。



そう誓って初エッチから3ヵ月、ルルーシュには触れていない。
正直キツいけど、我慢はできなくない。
だって僕は、君のこと愛してるから。




だから永遠に、この手を離さないで

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