揺れる胸に乱れる胸
 

「どうだ?おかしくないか、スザク」

「おかしいわけないだろ?凄く似合ってるよ、ルル」


入学式前日ルルーシュは高校の制服を着て、照れくさそうに僕の前に姿を見せに来た。

紺地に白いスカーフ、赤いラインの入ったセーラー服姿のルルーシュは清楚なのに、そこはかとなく色気を漂わせる。

可笑しい所か――可愛い過ぎてとても危険だ…!

パンと張った胸元はイカン。

そしてこの、丈の短いプリーツスカートはどうだ?

カモシカのように細長く白い足を惜しみ無く晒してしまうじゃないか!
ぱ、ぱ、ぱんつは見えないだろうか!?

膝上10cmはありそうなスカート丈の短さは何のためだと、この制服をデザインした人間の所まで殴り込みに行きたいぐらいの憤りが、僕の頭の中に渦巻いている。

男子たちの目の保養になるどころか、夜のオカズにされかねない。

明日からルルーシュが僕と同じ高校の生徒になるという喜びと、ヤりたい盛りの狼の群れの中に混ざる不安に胸は張り裂けそうだ。

だがせめて、

ルルーシュが僕と同じ高校を選んでくれて良かったと思う。

彼女は頭が良くて、トップランクの高校に行けた筈なのに、僕と同じ学校に通うためにランクを2つは(…もしかしたらそれ以上)下げてくれた。

任せておいて。

君を守るために3年生を2回ダブる覚悟はちゃんと出来ているからね!


着替えを済ませた後、一生懸命用意してくれたご飯を食べながら僕は目の前で微笑む女神に誓う。


「旨いか?」

「うん」

「御代わり、しようか?」
「いや、今日はいいや」


あまりガッツリ食べれる気分じゃないんだよね。

…世の中の兄達は皆、可愛い妹を持つとこんな風に食欲をなくす程に悩んでいるのだろうか?


「…味付け、ちょっと甘かったかな…」

シュンとうつ向き反省をこぼすルルーシュに、僕は慌てて答えた。


「旨かったよ!ルルが作るご飯が不味いわけないじゃないか」


本当に何のお世辞もない。

魚の煮付けも味噌汁も、ほうれん草のおひたしも全部、僕の好みに味付けされていて本当に旨かった。

何時もしていた御代わりを、できないのは味付けの問題じゃない。


「じゃあ、…どっか悪いんじゃないのか?」

「そんなんじゃないよ。…心配事があって胸がいっぱいなだけ…」

「心配事…?」


可愛く首を傾げ、光を散りばめたようなアメジストの瞳でルルーシュに見つめられて、僕の胸は異常な程の心音を刻んだ。

及び

口が勝手に動く――


「…高校生になって…ルルに悪い虫がつくんじゃないかって…気が気じゃないっていうか…」


背を丸め正座し肩を縮めながら、シドロモドロ胸の内をぶちまいた恥ずかしさに僕は拳を握りしめた。

きっとルルーシュの目にはウジウジ情けない兄に映ってるに違いない。


「…私には素敵なお兄ちゃんがいるから、悪い虫なんて付きようも無いだろ」

「えっ」

「だって、ずっと一緒にいてスザクが私を守ってくれるんでしょう?」

「…うん!ルルーシュを守る」


僕は満面の笑顔でルルーシュにお茶碗を差し出した。


愛しい、僕のたからもの。
大切に守るんだ。
そうさ、誰にも触れさせるもんか。



『これからは僕がルルーシュを、守って生きていく。
大丈夫だよ、ずっと一緒にいるから』

あの夏、僕がルルーシュとかわした約束。



――僕が12歳の春、再婚した僕の父とルルーシュの母さん。

綺麗なお母さんと、
ルルーシュという、2歳下のとても可愛い妹が突然できて
僕の色褪せた毎日が
花が咲き誇る様に鮮烈な色をおびたんだ。

本当に幸せだった。
毎日が夢のようで。

そして

4年前の夏、また突然に
父と母は交通事故で帰らぬ人となった。

本当に泡雪の如く
楽しかった家族4人の生活は
儚く消えてしまった――。

でも僕はひとりじゃなかった。

愛しい妹がいてくれたから。

そして、君には僕が。

涙に暮れ、何も話さなくなった12歳のルルーシュに僕はずっと一緒にいて守ると誓ったんだ。

その時、
ルルーシュは初めて僕を『お兄ちゃん』と呼んでくれた。

血の繋がりを越え、本物の兄妹になれたんだ。
すっごく感動した。

ま、一回こっきりで何時も『スザク』と呼ばれてるけどね。

いいんだ、名前で呼ばれる方が好きだから。







次の日の入学式の当日――


式を終え、体育館を出るルルーシュが渡り廊下にいる僕に気づき駆け寄ってきた。


「スザクー!」


手を振りながら、僕の所に走ってくるルルーシュがスローモーションになり

華のような笑顔と


――豊かな胸が揺れている。

胸が――



「帰り、校門で待ってる」
「うん」


帰宅の約束をすると、ルルーシュはまた走って行った。


「何、今の爆乳美少女…!スザクの彼女!?」

「…何処見てるんだよお前。殺すよ?あれは妹のルルーシュだ」
「殺す?!今殺すって言った?」
「言うわけないよ、はは」

「そ、そう?気のせいだったのかな、ハッキリ聞こえた気がしたんだけどなぁ…。…な、お前の妹、超可愛くない!?紹介してよ、マジで!!」
「紹介しない。マジで」
「ちょ…、」


完全無視。


――本当に騒々しい1日だった。

真っ暗な自室のベッドの中、振り返り反芻する。


やはりルルーシュは、目立ってしまって危険だと痛感。

男どもの汚らわしい視線に晒されて――どうにも我慢ならなかった。

周囲の男衆はルルーシュの特に胸の話題で気持ち悪い位盛り上がり

…巨乳は乳輪がデカイとか、
谷間にアレを挟めるとか――下らない話を、下品な話を――


――許せなかったんだ。



…殺さなかっただけでも有難いと思え。


ルルーシュには
僕の妹には
妹の胸には
あの大きな揺れる胸には


何人たりとも触れさせない!!
揉ませないし、挟ませない!!


少し痣ができた拳を抱きしめ僕は眠りについて

…目覚めた朝に青ざめた。


下着がベタベタで、


――僕は、――僕は








ルルーシュに

…夢精してしまい初めて気づいた。


ルルーシュを
妹としてではなく愛してしまっている事に。







一番君が警戒すべきなのは、ひとつ屋根の下、一緒に暮らす兄の僕。


 


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あきゅろす。
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