今夜、ひとりじゃ眠れない
なんなんだ、スザクのヤツ。
こんな嵐の中、買い物なんて――正気か?
5分で帰って来るって、一番近いドラッグストアでも片道5分はかかる筈だが。
まぁ私の足で、だけど。
一体何を買いに行ったのやら。
早く帰ってこい。
神鳴りはうるさいし、電気はつかないし、ひとりは嫌だ。
懐中電灯を抱きしめ、ボーッとソファに座り考えていたら、バタンとドアの開く音がした。
約束どおり五分での帰宅。
タオルを持って玄関に向かい電灯で照らすと、ボリボリに骨の折れた傘を持ち頭を掻く、ズブ濡れのスザクが立っていた。
だから、そんな目にあってまで、一体何を買ってきたんだ。
タオルを渡すと、クシャリと顔を崩しスザクは笑った。
「ありがとうルルーシュ!いやぁ、凄い雨風だったよ…!」
「‥‥だろうな」
そんな雨風の事なら、家の中から見ただけで丸分かりだろうが。
「何買ってきたんだ?」
「ん、んっ?」
何だ?
スザクのヤツ、今ビクッとしなかったか?
「…炭酸飲料。冷蔵庫に入れてくるよ」
「はぁぁ!?」
「そんなに引かなくても…風呂あがりにどうしても飲みたくなったんだ」
風呂あがりに炭酸が飲みたくなるというのは分からないでもないが。
この嵐の中で、何が何でも達成したい欲求なのか?
炭酸飲料が――。
スザクらしいと言えば、そうなのかも。
呆れる私の前を苦笑いしながら、スザクが通り過ぎた。
ため息をつきながら彼の後を追う。
「風呂に入って来るよ」
「ああ」
炭酸飲料を冷蔵庫に入れて、スザクは真っ暗な廊下を歩いて風呂場に向かい、私の視界から消えていった。
「はぁ…」
真っ暗だと、
この家は不気味なんだよな…
ひとりで寝るの、本当に嫌だ…!
「そうだ!」
スザクと一緒に寝よう。
何年ぶりだろう。
昔は、よくひとつのベットに入って寝てたっけ…。
「いいお湯だったー」
「もう出てきたのか!」
「えっ、あぁ、うん」
「ジュース入れて来ようか」
「あっいいよ、僕が入れてくる」
スザクは台所に向かい冷蔵庫を開けた。
「ルルーシュも飲むかい?」
「じゃあ、少しだけ」
腰に手をあて、ごくごくと喉を鳴らして飲むスザク。
どんな喉してるんだ。
炭酸なんてシュワシュワ攻撃してくるのに、そんな勢いで――何かにつけ超人だな。
「…なぁスザク」
「ん?」
スザクはジュースを飲みながら視線をコチラに向ける。
「今日、その…スザクの部屋で一緒に寝ていいか?」
「ブッ…!!」
スザクは霧吹のようにジュースを吹きだした。
――やっぱり、ダメか。
「どうしたの?…寂しいの?」
「そ、そんなんじゃないっ」
「僕は別に…全然いいよ。おいで?」
「スザク…!」
良かった…!
何か、嵐で停電の夜ってひとりじゃ眠れない。
眠れない夜は長いし。
「…ありがとう」
「いいよ、礼なんて。僕は君のお兄ちゃんなんだし当たり前だよ」
「うん」
「じゃあ…僕の部屋に行こうか」
「ああ」
リビングを出て階段をあがり、スザクは自室のドアを開ける。
「どうぞ」
導かれるまま、ルルーシュはスザクの部屋に入り、ドアを閉める。
スザクはベットに上がり、布団を捲った。
「おいで」
「うん…」
自分で望んでおきながら、いざとなると、恥ずかしい。
うつ向いたまま、私はスザクのベットに上がった。
「ルルーシュの足、冷たい」
「そ、そうか?」
「暖めてあげるよ…」
絡められたスザクの足があったかい。
間近にスザクの顔。
「ルルーシュ‥‥」
「スザ、」
塞ぐように、スザクの唇が私の唇に触れた。
おやすみのキス…?
胸が熱くなる。
スザクは離れ、また方向を変え唇を合わせてきた。
スザク…?
何度もキスを交し、唇を舌で撫でる。
「スザク…?」
「おやすみのキスじゃないよ?‥‥愛してるのキス」
「‥‥!」
スザクは私の髪を撫で、またくちづけた。
嘘だ…っ、本当に?
嬉しいけど…、
――何か私がこんな風にして欲しくて、スザクのベットに潜って誘ったみたいじゃないか…!
恥ずかしいぃ…!!!
羞恥に体が硬直する。
「‥‥ルルーシュ、僕のこと嫌?」
寂しそうに、スザクは首を傾けた。
そんなんじゃない。
「違…、恥ずかしいだけだ…!なんか…私が誘ったみたいで…」
「分かってるよ。心細くて、ひとりでいられず腕の中に飛込んできた君に、僕が盛ってるだけだ」
「さかっ――、」
「…抱きたい」
「スザク…」
「もう我慢できないよ…ずっとこうしたかった、ルルーシュ…」
熱い息を耳に吹きかかり、首筋にスザクの舌が滑る。
「んんっ…!」
くすぐったい…!
「ねぇ、いい?」
私は頷いて、スザクの首に腕を回した。
私は、ずっと抱かれたかった、なんて言わないからな!
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