君は豆電気つけて寝る派なヒト
 

何で、こんなに興奮してるんだろう。
きっと原因は、嵐だけじゃない。
っていうか原因の殆んどは嵐じゃなくて。

生きてる最強兵器的な、可愛い僕の妹の所為だ。

喧嘩して、仲直りして以前より近付いてしまったことに不安と後悔。
僕は近づき過ぎてしまったのだ、と思う。

思わず勢いでしてしまったキス。
彼女は『おやすみのキス』だと思ってるけど、そうじゃない。
溢れて、歯止めがきかなかった僕の想いそのものだ。

これからもずっと、こんな新婚焦らしプレイ的な生殺し状態が続くのかァ
――うああ、堪えられない…!!!

でも、堪えなきゃいけないんだ、僕は。極限まで。
いや、極限に達しても。


強風と雨粒に叩かれ、窓がカタカタと音をたてる。
遠くでゴロゴロ雷鳴が響いていた。

湿度が高いせいか、春にしては少し暑く感じる。

まさか、僕のテンションが高いからだというわけではない筈。
僕はソファから立ち上がり、冷蔵庫を開けた。
お茶を取りながら、視界に飛込んできたのは朝食べたソーセージの入った袋。

それを口に咥えるルルーシュを思い出して、また僕の体温は上昇する。

なんて下品な妄想をするのか。
自重しろ。

…離れようとすればするほど、捕われてしまう。
高潔な妹を守っていたい気持ちと、汚したい気持ち。

後者が勝ってきてるのは言うまでもない。
けど、愛が性欲に負けそうとかじゃなくて、僕の場合、性欲そのものが愛なわけで。
申し訳ないけどオカズにするくらいは許して欲しい。
触れない事を誓うから。


冷たいお茶を一気に飲み、喉を潤す。
根本的な渇きは癒されないままだけど。
でもそれは仕方ない。
また寝る前、自分で慰めるさ。


『ゴロゴロ…!』


大音量の雷鳴が轟いた。
夜の闇の中、稲光が走る。


「‥‥‥‥」


コリャ、落ちそうだな、ルルーシュは怖がってないだろうか。
そう感じた瞬間だった。


『ズガーン!!!!』


爆音が響きひと呼吸後、部屋の照明が消えてしまった。


「あ――、」
「アアァーー!!!!?」

「…ルルーシュ?」


風呂からルルーシュの叫び声が聞こえ、僕はリビングを出て玄関近くの棚に向かった。
怯えてるであろう彼女に失礼かと思いながら笑いを堪えつつ、懐中電灯を探す。


「あった…」


雷はまだ、ゴロゴロと鳴りながら空気を震わせていて。
懐中電灯をつけて、僕はルルーシュのいる風呂場に急いで向かった。
ルルーシュは真っ暗が苦手なんだ。
だから寝る時も必ず豆球をつける。
浴室の外から、僕はルルーシュに声をかけた。


「ルルーシュ、大丈夫?」

「っあ、スザク‥‥!!!」


――とんでもなく大丈夫でなさそうだ。


「停電か…?」

「みたいだよ」

「停電なんて困る…本当に困る…!ゴロゴロ煩いし…真っ暗で何も見えない…」


不謹慎かもしれないけど、何か暗闇と雷に怯えるルルーシュが可愛い。
笑顔で僕は続けた。


「懐中電灯持ってきたよ」

「そ、そうか、助かった」

「うん」

「懐中電灯をこっちにくれ」

「え!?」


ルルーシュの申し出に、僕はこれ以上はないというくらいに驚いた。
別に懐中電灯を渡すのが嫌なんじゃない。
だから、それって、つまり――


「あの…浴室に入っていいって事?」

「当たり前だろう。灯りを早くくれ」

「ちょっ――」


待って待ってください!
何か僕も困る!

余程怖いんだろう。
冷静じゃないんだ。
兄としては『ここに置いて置くよ』と去るべきなんだと思う。
でも男としての僕が――、


「じゃ、じゃあ…入るよ?」

「ああ」


僕は思いきって扉を開けた。





「――…」

「な、なにボーッとつっ立ってるんだ!電気置いて、とっとと出てけ」

「あ、はは、いや…一緒に入ってあげようか?」

「いいよ、馬鹿!」


湯をかけられて、僕は笑いながら浴室を飛び出し――暗闇の中、足のカカトを壁にぶつけた。


「――…っ」


…調子こいた罰か。

ああでもいいや、カカトの痛みを凌駕する眼福。
いや、寧ろ目に毒だった!
な、なんだ、あの胸の谷間は!!
プリプリでツヤツヤで、
本当に、挟めそうじゃないか…!

って、何考えてるんだ俺の馬鹿野郎ー!!!!!


壁伝いに、時折悶絶しながら僕はどうにかリビングに辿りついた。

ソファに倒れ蹲る。


――触れないと誓ったんだ。
頑張れお兄ちゃん!!!


でもあんな目にモノ見せつけられて――、
ダメだダメだ!!
忘れろ!あの見事な谷間は忘れるんだ!!

ルルーシュに触れないと誓ったじゃないか。
それに‥‥第一、アレが無い。


「お先」

「わっ…!」


ソファの上でのたうち回ってるうちにルルーシュが風呂から出てきた。


「な、何?」

「何でもない、僕も風呂に入ってくる」

「…懐中電灯いるか?」

「いらないよ、僕 は・・・」


!!!!

暑い所為だろうか。
ルルーシュは何時もより薄く、着用してるのはパジャマではなくTシャツだった。


「‥‥‥‥」


あの、ノーブラですか?
ボンッて膨らんだ胸の先で、な、なんか2つツンって尖ってるんですけど‥‥!!!!

何?
僕を誘ってるのー?
ルルーシューー!?


…な、わけはない。
分かってるけど、

風呂あがりのノーブラのルルーシュは破壊力、凄まじ過ぎた。


「…ちょっと、風呂の前に、買い物に行ってくる」

「は!?この嵐の中をか!?明日じゃダメなのか??」

「…うん今日欲しい…。5分くらいで帰ってくるから!」

「ちょっ――、」


何が何だかわからない、と首を捻るルルーシュを残し、僕は財布を掴んで、家を飛び出した――。




重ね重ね誓ったけど、やっぱり無理です…!


[*←][→#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!