嵐がやってきた
 

ウルアァァァ‥‥!!!


心の中で言葉にならない絶叫をあげながら、僕はルルーシュの部屋から転がるように飛び出した。


ルルーシュに
眠ってる ルルーシュに

キ、キスしてしまった‥‥!!


自分の部屋に入り、電気もつけずにベットに走り込んで、突っ伏す。

心臓はドクドクと脈を打ち、顔が、身体がすんごく熱い。
掌には汗が滲んで。

僕はそっと、ルルーシュの柔らかい唇の感触の残る自分の唇を指で撫でた。


ハァハァハァ


思い出すだけで、興奮して息が荒くなってしまうんだけど。

僕は、ついにやってしまった。

い、い、妹に キスを――…


ルルーシュのファーストキスが誰かに奪われる日が、いつかくる。

大切に大切に思って、僕の全てを賭けて守ってきたのに。

チラリ頭を横切った。
ルルーシュのファーストキスが欲しい。

ルルーシュの寝顔を見ながら思った。

寝てるんだから、キスされた事も分からないし、ファーストキスを奪ったとしても事実を知るのは僕だけだ。

コッソリ頂けるじゃないか。

チャンスだ!そう思うと我慢できなくって。

罪悪感と満足感が混ざりあった、複雑な気持ち。

だけど、明かに天秤は悦びに傾いていて。

僕は布団から出て、仰向けになり天井を眺めた。

――勝手に顔がニヤけてくる。


『ザァァァ‥‥』


静かな部屋に雨音が響いていた。
そういえば、さっきテレビの天気予報で、雷雨に暴風が酷い1日になりそうだとか言っていたっけ。


『スザク』


‥‥?


気のせいだろうか。
雨の音に紛れて、僕の名を呼ぶ声が聞こえたような――いや、
そんなまさか。


「寝たのか、入るぞスザク?」

少しドアを開け、囁くようでありながら透き通るようなその声がはっきりと聞こえた。

――ルルーシュの声が。


イエェエェェ‥‥?!

待って待って、さっきは寝てたよね。
熟睡してたよね。

まさか、起きてた!なんて事は。
起きてて、よくもキスなんかしてくれたな、と怒鳴り込みにきた!何て事は。

大変だ、大変過ぎる!!

逃げたいが逃げ道はない。
このまま寝たフリをしようか、迷った時、またルルーシュの声が聞こえた。


「‥‥苺、食べないか?」


――イチゴ?


ルルーシュがキスされた事を怒鳴り込みに来たのではないと解り、僕はベットから起き上がった。


「‥‥うん」

「じゃあ電気つけるぞ」


パチンと音をたて、スイッチを指で弾くと一瞬で、真っ暗だった部屋が明るく照らされる。

暗闇に慣れた目に、明々とした光とルルーシュの愛らしい笑顔が眩しくて、僕は手の甲でこすってうつ向いた。

照れ臭い。

ルルーシュは僕にキスされた事を知ってるのだろうか。

ルルーシュはベットに腰掛けて、僕の方を向いた。


「ほら、口を開けろ」


ヘタを取った苺を摘み、ルルーシュは僕に差し出すから。

口で苺を迎えにいくと、ルルーシュの指の先まで含んでしまい、チュッとたててしまった淫らな音に僕の胸は震えてしまった。


「おいしいだろ?」

「うん、おいしい」


なんて言いながら正直、苺どころではない。

興奮は、ダイレクトに下半身に響いてくる。
慌てて僕は反応してしまった性の象徴に、さりげなく布団を被せた。

苺をたいらげ、ルルーシュは空の器を持ってベットから立ち上がる。


「じゃあ、改めておやすみなさい」

「うん、おやすみなさいルルーシュ」


一旦背中を向けドアの前まで歩いて行ったが、何かに気づいたように早足で僕の所へ戻ってきた。


「忘れものだ」

『チュッ』


―――えっ?


ええええええぇ!!!???


ルルーシュが、僕の唇にそっとキスしてくれた。

嘘‥‥、なにコレ
マジで!?

ルルーシュ‥‥!!!!!

押し倒しそうになった瞬間、彼女は照れ臭そうに言った。


「おやすみの、キス。じゃあな、お兄ちゃん」


おやすみ の キス?

呆然とする僕に一言放ち、ルルーシュは部屋を去っていった。

やっぱりルルーシュは、僕がキスした事を知っていて。

し、しかも、それを『おやすみのキス』と勘違いしていて。

ああ――‥‥

ホッとしたような、がっかりしたような‥‥


「‥‥でも、今の『お兄ちゃん』はキュンときた」


僕は再びベットに横になると下半身が疼いてることに気づいて。

枕もとにティッシュがあるのを確認して、申し訳ないと思いながらも彼女の唇と指の感触を思い出しながら抜いてしまった。




 *




『ザァァァ‥‥』


明け方酷くなった雨音に目が覚めて、僕は身体を起こした。
時計の針は午前6時を示している。


「‥‥大雨だな、こりゃ」


しかも時々強風が吹き、雨を叩きつけ、ヒューヒューと音をたてる。
眠りなおすには中途半端な時間だ。
僕はパジャマのまま部屋を出て、居間に向かった。

テレビのリモコンを掴み、電源をオンにすると案の定、天気情報。

どうやら、大雨の警報が出ているらしい。


「‥‥警報?ってことは学校は休みか」


つまり自宅待機。

おもいがけず、ルルーシュと二人きりになってしまったぞ。


「‥‥なんだ、スザクもう起きてたのか?」


ガチャンと、リビングの扉が開き、まだ眠そうに目を擦りながらルルーシュが部屋に入ってきて僕はうつ向いた。


「あ、うん‥‥おはよ」


昨晩、ルルーシュをオカズにしてヒトリHをした事に対する、気まずさと恥じらいのせいで彼女の顔をまともに見れなくて。

前にもこんな事があったぞ。
あ、夢精の時か。

―――最低だよ!もう!


「雨音が響いて目が覚めちゃって。警報でてるってさ。学校は休みだよ」

「あはは、やった。じゃあ今日は一日スザクとマッタリしてられるのか」


嬉しそうに、はにかむルルーシュ。
僕の心を鷲掴みしてるの知ってるかい?


「ふふ、何しようか?」


笑うルルーシュに心から思った。




やりたい事なら、たくさんあります‥‥!

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