◆To Be Continued/スザルル※
 

R2-25話派生捏造/甘め
スザルル
皇帝のコードを継承していたルル
ルルの生存を知らないスザク
お節介なアニャC

***


To Be Continued




「…アルバムを見ていたの?」


デスクの上に重ねられ、とあるページが捲られたアルバムを手に取り、アーニャはポットの紅茶をカップに注ぐルルーシュに話しかける。
ルルーシュはチラリとアーニャに視線を送り短く一言『ああ』と答えた。



「スザクとルルーシュ…」

「…馬鹿みたいに楽しそうだろ?」

「馬鹿みたいに、は余計だ」



悪戯に笑うC.C.に憤慨したように言い捨て、ルルーシュは眉を寄せる。
それを見てアーニャは肩をすくめて笑みを浮かべた。
ルルーシュはため息をつき、物思いに耽るかの如く少し沈黙した後、ポツリと呟く。



「永遠っていうのは…アルバムが増えていくとか…そんな単純な事ではないんだろうな…」

「……」

「…コードを継いだ事、苦しい?」



ルルーシュの言葉に押し黙るC.C.にかわり、アーニャが口を開いた。
ルルーシュは鼻で笑い、首を横に振る。



「…楽なわけがないだろう。だがコードがあれば皆の明日を…ナナリーやスザクを見守ることができる。ゼロの伝説を永遠にすることが…な。世界を壊すだけでなく創るためには…必要だった」



苦笑しながらルルーシュはソファに腰かけた。


どうせ
C.C.の永遠を放って逝けなかったんだ

コードを継ぐことは
きっと俺の宿命だったんだろう


「…この先何十年何百年後、お前は笑顔を失ってない自信はあるか?」

「……さぁな」



永遠なんて、未知すぎて
『大丈夫だ』なんて笑いとばせない
余裕だ、と見栄も張れない

だけど 
俺が選択できた
ベストな道の結果のはずなんだ

受け入れるしかない


だけど

立ち止まってしまうんだよ

…スザク
お前を思い出す度に



お前が
この世を去った後も

俺はずっと――…



「……スザクに会いたいの?」

「!」

「…図星」



ビクンと飛びあがるルルーシュを見てアーニャは珍しく表情を崩す。



「……」

「アルバム、スザクのページ開いてた」

「…懐かしんでただけだ。別に会わなくったって…あいつなら元気にやっているさ」



この同じ空の下にスザクがいる。
それだけでいい。


(それ以上は求めるな…求めちゃいけない。…のに)


自分を何度納得させようとしても『永遠』という壁にぶち当たる。

終りのない永い時間の中で、スザクが存在してくれる時間なんてきっとほんの一瞬なのだろう。

先を思えば胸がギリリと捻り上げられるように軋んだ。




「…どうしてルルーシュが生きてる事スザクに言わないの?」

「…知らないほうが、幸せだ」

「スザク、友達を手にかけた罪を背負わなくてよくなる」

「……権威や政治にコードは触れてはいけない。理想や信念が歪む」

「もう会わないつもり?」

「…ああ。スザクは死んだ。ヤツはもうゼロだ。そして悪逆皇帝としてルルーシュは死んだ。コードを持つ俺はもう――…、だから」
「…きっとルルーシュ、後悔する。笑顔失う事になる」

「なら…それも仕方ない」

「……意地っ張り」

「会いたかろうが会えない。これも、俺に課せられた罰かもしれない」

「ドM」

「ドえ…!?アっ、アーニャ…!」



アーニャはプイと踵を返し、C.C.を連れてヒクヒクと頬をひきつらせるルルーシュを残し、部屋を出ていった。

廊下を歩き階段の手前で立ち止まったC.C.に気づき、アーニャは振り返る。



「…ブリタニアから離れた片田舎でアイツがこうして生きてる事を、スザクもナナリーも…アイツが大切にし、アイツを大切に思ってきた皆は知らない。目の前で死んだ事実しかない今の状況では…アイツは死んだも同じ事だ。存在として亡霊に等しい。会えなくても…せめてスザクにだけでも生きてる事を知らせてやりたいが…それはアイツの考えや覚悟を台無しにするかもしれない」



「……でもルルーシュが笑顔を失うくらいなら、恨まれた方がいい」

「…アーニャ、お前――…フッ、そうだな」




 *




テーブルには飲みかけの紅茶が二つ、湯気をたてている。



「…誰がドMだ」


暫し二人が去った方向を向いたままルルーシュはつっ立っていたがカップを片付けて、気をとり直し椅子に腰かけ開いたままのアルバムを覗いた。
スザクと肩を並べて、笑っている自分がいる。



「…騒々しい日々だった」



スザク、ナナリー、カレン、リヴァル、ミレイ、シャーリー、ニーナ…


ああ この頃は
本当に楽しかったよ…


全てを終わらせた後
この場所に帰りたかった

そう…ロロも連れて。


戻れないが故に

輝かしい過去は、尚 輝いて
俺を切なくさせる



「……会いたいに決まってる」


――永遠どころじゃない
1年ももってない



写真のスザクの輪郭を指でなぞり、深いため息をひとつついてルルーシュはアルバムを閉じた。









『ドンドンドン』


「な、なんだ…!?」



慌ただしいノックの音にルルーシュは驚き、跳ね起きる。
枕元にある時計は8時を示していた。

怒られるほど遅い時間でもなかろうに。



「…荒々しい起こし方だな」


ジェレミアか?
いや
だけどアーニャでもC.C.でも無い。



軽くパニックをおこしながらも、ベットを降りてドアに向かうとノックの主は待ちきれ無かったのか、ルルーシュがノブに手を触れるまえに開かれた。



「ルルーシュ!!!!」

「!!!!」



(あ、有り得ない、何故…!!)



栗色の柔らかそうな髪をなびかせ翡翠の瞳を揺らしながら、青年は寝起きのルルーシュの襟首を掴み持ち上げる。



「何故俺に黙ってた…!!」



体は浮いて前後にガクンガクンと揺すられ、舌を噛みそうになった。

無茶苦茶な事をする!



「な、何をするんだスザク…!何故此処へ」

「質問に答えろ!」



頭に来て質問に質問を返したが、それ以上の怒りと質問で返され、ルルーシュは結局口ごもる。



「な、……何をだ」

「何をって!生きてる事をに決まってるだろ!!アーニャが言ってくれなきゃルルーシュ自身は二度と俺と会わない気だったのか…!?」

「……」
(アーニャめ、余計な事を――)


なんて舌打ちしながらも、やはりスザクに会えて嬉しくて感涙までしそうになってる。

スザクを突き離さないといけないのに――


コードやギアスが王室に関われば
皇帝や母さんの二の舞いになる

同じ年齢だったスザクと
自分の間に生じる
時間の経過を目の当たりにするのも、苦しいんだ

だから



「…俺と二度と会えなくても…それでも君は良かったのか?」


(…いいわけない)


――悲しげなスザクの瞳に、拒絶しようとしていた決心が、いとも簡単にぐらつく。



「君を刺した夢を何度も見て――「別にいいだろ。3ヶ月前まで俺を殺したがってたじゃないか」

「……それだって君が何も話してくれないからだろう…!!」

「…何しにきたんだ。態々俺に文句言いに来たのか」

「そんなわけないじゃないか…!」

「!」



いきなり抱きよせられ、ルルーシュはスザクの胸で小さくなる。

懐かしい、スザクの匂い。
めいっぱい吸い込むとボコボコと全身に空いた穴の隙間という隙間が埋められ満たされてく気がした。
甘い感触と目眩に酔いしれる。
「生きてるって聞いたら、居ても立ってもいられなくて…」


(スザク…)


「……お前…少し背が伸びたな」

「君は…。コードを継承したから、もう…?」


「コードの事まで知ってるのか…!?アーニャのお喋りめ…!」

「問いつめたんだ。出来るだけ苦しまないように急所を刺したのに…生きてるなんておかしいじゃないか。まさか陛下のコードを継いでしまってたなんて…」

「フン。継いでしまったものは仕方ないだろう」

「ルルーシュ……何故、全部俺に話してくれなかったんだ…」



抱きしめられた体を少し引き離し、ルルーシュはスザクから目を反らした。



「…知らない方がいい事もある」

「そうやって君はいつも大切な事を隠して一人で抱えこむんだ…!」

「そんな事よりナナリーはどうした。放って来たのか」

「話を反らすなよ!…彼女の側にはカレンもジノもコーネリア様も…みんながついてくれてるよ。心配なら君も側に来い」

「…無茶をいうな。俺は死んだんだ」

(…行きたいよ。行けるものなら…また昔のようにナナリーとお前と一緒にいられたら――)

「……君は本当に残酷だ。俺に重いゼロの仮面と世界の明日を押し付けて去って」

「………すまない」

「…でも…しょいこんでばかりの君が唯一甘えられる存在が、俺なのかと思えば…悪くない」

「スザク…」

「甘えてくれればいいさ。だから俺も君に遠慮なんてしない」

「…?」



ポカンとするルルーシュに、スザクは笑みを向けた。



「――俺に、ギアスを」

「は…!?」

「両目ギアスになったらコードを継げるんだろ?」

「な、何を言っているんだ!まさか、代わりに俺のコードを――!?」

「違うよ。俺がそこまで君相手にお人好しに振る舞ったりするわけないだろ」

「…お…お前な…」
(何でカチンとくる物言いしかできないんだろ、スザクのヤツ。…まぁ俺もか)


気を取り直し



「でも…じゃあ」

「…俺はC.C.からコードを継ぐ。もう彼女とは約束してきた。仮面を被っているんだ。姿が変わらなくったって誰にも分からない」

「お…お前、自分がしようとしてる事の意味分かってるのか…?」

「…勿論分かってるよ。ゼロは永遠に死なない」




スザクは少し離れたルルーシュの体を、腰に手を回し引き寄せる。



「俺を置いて、永遠なんてそんな遠い場所に行くな」

「ス、スザク…っ」

「お願いだ、ルルーシュ…!君の願いは叶えただろう!君も俺の願いを叶えてよ…!!」

「…ギアスは凄く重い。コードという永遠はそれ以上に重い。皇帝や母さんの二の舞いになるかもしれない」

「俺たち二人なら大丈夫だ。出来ない事なんか何もないだろ?」

「……」

「…返事は?」

「……そうだな、スザク」



スザクは濡れたルルーシュの睫と唇に何度もキスをする。











「与えよう、お前にギアスを」


永遠だって ふたりなら、



Fin.


****

08'10.3

コードを継いでても絶対にスザルルー!





 

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