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R-18部屋(文章)
dolce(ホワイトデーレクアズ)


――どうして、こんなことになったのか。
アズリアは熱と快楽に溺れそうになりながらも、必死に記憶をフル回転させてみた。しかし、

「…アズ、リア…っ」

思い出されるのは、彼女の恋人である赤毛の青年――レックスの、戦闘及び自分との行為の時にしか見せないその目つきと表情だった。



***




「…お返し?」
「そう♪アズリア、この間俺にチョコくれただろ?あれのお返しっていう記念日もあるんだってさ」

今日も今日とて平和な、忘れられた島。そして住人達の公認カップルであるレックスとアズリア。この島の学校で教師をしている彼のもとへ、昼休みに彼女が弁当を届けにきた際の会話である。

「いや別に、見返りを期待したわけでは無いが…」

というか、むしろそんな日がある事自体を知らなかった。まあ異文化なので仕方ないのだが。

「でも俺がお返ししたいんだよ。君の気持ち、本当に嬉しかったんだから」

にこにこと――本当に心底嬉しそうに言われると、いちいち反論するのも無粋な気がしてしまう。
この島で暮らし始めた当初は、そんな彼のまっすぐな思いが眩しすぎて、恥ずかしくてあれこれ反論したり突っぱねたりもしていたのだけれど。今ではアズリアも、受け入れるだけの心の余裕が出来たのだ。でもやっぱり未だにちょっと恥ずかしい。

このチョコをあげた記念日というのは、ほんのひと月前の話である。名もなき世界の異文化に乗せられて、彼女もレックスと、弟のイスラにそれぞれチョコレートをプレゼントしたのだった。

その際「なんであんな奴にチョコあげちゃうんだよ姉さん…」とイスラが恨みがましく言っていた気がする。無事に記憶が戻ったはいいのだが、どうもそれ以降弟のレックスに対する態度がやたら厳しいように感じるのだ。まあアズリア自身も過去にはレックスに厳しく接した経験があるので、そんなものだろうと深く考えなかったのだが。

「まあ、そんな訳だからさ。今晩、楽しみにしててよ」
「…っ!?」

いつの間に距離を詰めたのか。レックスに耳元で囁かれて、アズリアは一気に耳まで赤くなった。

「そういう初々しいとこ、本当に可愛いなぁ。大好きだよ」

挙句、白昼だというのに直球の告白をかましてくる。ここにこれ以上いたら身がもたないと判断し、アズリアはくるりと踵を返した。

「…わ、わわ私、イスラにも弁当を届けなければならないからな!お、お前だけに構っている暇は無いんだ!」
「アズリア、どもってるどもってる」

背後から聞こえる含み笑いは聞かなかったことにして、彼女は弟がいる風雷の郷へと早足で歩いていった。




「はい、イスラ。お弁当」

記憶が戻って以降、風雷の郷にある庵に間借りして暮らし、日中は郷の畑作業をしているイスラの元へとやって来たアズリア。

「ああ、有難う姉さん。…それと、これあげる」

そう言って弟から手渡されたのは、シンプルな包み紙でラッピングされたプレゼントだ。チョコのお返しだよと笑う彼に、ついさっきもそんな話を聞いたなと彼女は思いだす。

「レックスが言っていたんだ。チョコのお返しの記念日だって」
「…レックスが…?」

イスラはその名前にぴくりと反応し、今までの笑顔から一転して何やらどす黒いオーラを放ち始める。

「…姉さん…何か変なことされなかった?大丈夫?」
「いや、別に何もないぞ?今晩楽しみにしててとは言われたが」
「うわそれ一番やばいやつ!姉さんあいつに(性的な意味で)食べられちゃうよ!!」

弟は何やら自分の身を案じてくれているらしいが、括弧の部分はよく分からなかったので聞き流す事にした。

「まあ、でも…レックスになら、その…いい、かな…」

さっきは屋外かつ突然だったから驚いたが、家で二人きりの時ならもう幾度となく彼と触れ合ってきたのだから。ほんのりと頬を染めて呟くアズリアに、イスラは顔面蒼白となり完全に絶句するしかなかった。

「…じゃ、じゃあ私は行くからな。午後も頑張るんだぞ?」

そう言って帰って行ったアズリアの姿が見えなくなった郷の畑に、

「…僕の!僕の姉さんが!!!レックスの奴に絆されちゃったよーーーーーーー!!!!」

イスラの絶叫が響いたのだった。




***



その日の夜。いつもの通り二人で一緒に食事をした後、レックスが今日の分のテスト採点をしてる傍らでアズリアが洗い物をしていた。イスラが記憶を無くしていたうちは3人で暮らしていたが、今ではふたりきりの家。本当にいつも通りの、穏やかな時間。

…だか、アズリアはそわそわと落ち着かなかった。それは勿論、昼間レックスに言われた事が原因なのだが。

「どうしたの、アズリア。もしかして…お返し、期待してる?」
「ひゃうっ!?」

採点を終えたらしい彼に、ちょうど洗い物を終えたタイミングで後ろからぎゅっと抱きすくめられ、相手はこちらの考えが読めるのだろうかなんて一瞬思ってしまった。
こうすると、彼女の細い身体はレックスの腕の中にすっぽりと納まってしまう。腕力で敵わないことは分かり切ってるので、アズリアはされるがままに身体の力を抜いた。

「ね、アズリア。今日は一緒にお風呂入ろうか?」

何を言ってるんだお前は。反論しようとしたが言葉が出てこない。顔に熱が集中してくらくらする。それでもやっと絞り出した言葉は、彼女自身も驚く位のか細い発言だった。

「…明るい所だと、その…全部、見えてしまう…」
「俺は見たいな、アズリアの可愛いところ全部。ね、俺に全部見せてよ?」

穏やかで優しい声。彼女が受け身に回ると弱いのを知ってて、あえてやっているのだ。たちの悪い確信犯。
…ずるい。こうして求められたら、嫌と言えないのを分かってるんだろう。口籠るアズリアに、レックスは更に追い打ちをかける。

「…俺しか知らない、君の可愛いところ。全部見たいな」

深い海を思わせる瞳で見つめられて、彼女は真っ赤になって頷くしかなかった。




そして、現在に至る。湯気の立ち込めるバスルームにて、お互いに背中を流して、髪を洗いっこして。

アズリアはそれまでの照れ隠しも含めて、レックスの赤毛を思い切りわしゃわしゃと掻き回してやった。酷いよアズリア、と訴えながらも楽しそうな彼に、酷いのはどちらだこの策士め、と言い返す。
こんな何気ないやり取りが楽しくて、一緒に暮らせる事の尊さを改めて感じるのだった。

その後シャワーで泡をきれいに洗い流し、湯船に浸かる。とはいえイスアドラの温海ならいざ知らず、自宅の湯船の広さは基本的に一人前な訳で。

「…ぅ、うう…」

背中に感じる人肌の感覚。自分を抱きしめる、思いのほか逞しい腕。やはりこうしてみると、男女の差は歴然だ。
レックスに背後から抱き締められる体勢で湯船に浸かるアズリア。どうしようもなく恥ずかしい状況で、でも彼の暖かさが心地よくて。せめてもの抵抗として、彼女はとりあえず唸る事しか出来なかった。

「…アズリア、こうしてると改めて細いね。柔らかいなぁ…やっぱり女の子なんだ」
「…ひゃ、や、やめ…!」

しみじみ呟きながら、レックスは目の前に晒されている彼女のうなじにちゅ、ちゅっと口付ける。と同時に背後から腕を回し、柔らかな形の良い膨らみを両手に収め、左右で強弱をつけながらやわやわと揉みしだく。
その両方に大袈裟な程びくりと反応し、見悶えるアズリア。

「…やめて欲しい?」

いっそわざとらしい程の彼の問いかけ。やっぱり確信犯だ。分かってる癖に…と呟く彼女に、でも君の口から聞きたいんだよ、とレックスは答える。
その間にも胸への愛撫は続き、柔らかく揉むだけだった彼の手は緩く勃ちあがりつつある桃色の先端をこりこりと摘む。

ここまで来たら意地を張っても意味がないという事を、アズリアはよく知っていた。

「…や、やめない、で」

普段の彼女を知る人が見れば別人かと思う程のか細い声。そんな姿を見られるのは自分だけだという優越感に浸り、彼は満足気に微笑む。

「よく出来ました」

先生口調で言った後、彼女の顎に手を添え上体ごと後ろへ向かせる。そしてその唇を、自分の唇で塞いだ。

「…ん、んん…っ」

震えながらも、レックスからのキスを受け入れるアズリア。怯んだ隙に舌を絡めて強く吸われ、びくっと反応する。ふわふわと心地よすぎて、身体中が溶かされていくような感覚。悔しいから、そんな事は絶対彼には言ってやらないのだけど。


「…は、ぁ…っ」

唇が解放されて向きも戻されると今度は、胸を包みこんでいた大きな手が下腹部へと滑りこむ。最早彼女に抵抗する気配は全く無く、レックスの手は簡単にその場所へと辿り着いてしまった。
そして、中心の部分をそっとなぞる。

「…や、ぁあ…」
「…うわぁ、アズリアのここ、凄いよ…俺に触って欲しくて待ち切れなかったんだね」

馬鹿を言うなとは思いつつも、実際そうなのだからどうしようもない。もっと触って欲しい。一緒に気持ちよくなりたい。しかしそれを口にするのはやっぱり恥ずかしくて、アズリアは潤んだ目で彼を見つめ返した。

その視線を肯定と受け取って、レックスは指の動きを速める。明らかにお湯とは違うぬるりとした感触が指に絡みつく。そして蜜が溢れだす彼女の中心へと、指を沈めていった。

「…ぁ、あぁ…れ、レックス…」
「…ふふ、可愛い。俺のアズリアやっぱり可愛い」

中を擦られる度にふるふると痙攣し、上擦った声で愛しい人の名を呼ぶアズリア。その頬に口付けて、内側の――彼だけが知る、彼女が一番感じる部分を一気に攻め上げた。

「…ぁ、だ、だめ…そこだめぇ…!」
「駄目じゃないだろ。ここ擦られるのに弱いんだよね、アズリアは」

もう俺の指だけじゃ物足りないかな?と呟き、膣内を掻き回し内壁を擦り上げるレックス。すっかり見抜かれてしまっている事に彼と結ばれてからの月日の経過を実感し、彼女はますます顔を赤くした。

「や、ぁ、あ、ぁんっ!」

そして訪れる限界点。アズリアはびくりと反応し、ぱしゃっ、と湯を叩く音がバスルームに響く。どうやら達してしまったらしい。

「…うぅ…馬鹿…」

上気した顔のまま睨みつけたところで、彼の劣情を煽るだけだというのに。そういった肝心なところが抜け落ちている辺りが彼女らしいといえばらしいのだが。
それすらも愛おしくて仕方がない辺り、俺も相当末期だな…とレックスは思うのだった。


再び彼に背後から抱き締められると、先ほどとは違う、腰の辺りに当たる異物感とその熱量。これは、明らかに――

「…ば、馬鹿っ!何考えてるんだ!」

その正体に気付きアズリアが慌てて振り向くと、レックスは照れ笑いしながら答える。

「…君の可愛いところ見てたらこうなっちゃったんだよ。ね、責任取ってくれるよね?」

穏やかな中にも有無を言わせない笑顔。彼女はこの笑顔に弱かった。
自分の口からは絶対言い出せないが、早く彼と繋がりたい。たくさん可愛がって貰って、愛情のしるしを注いで欲しい。でもやっぱり恥ずかしいので、アズリアは頭をそっとレックスの方へと寄せた。




「…こ、こうか…?」
「そうそう。…いくよ」

バスタブの縁に捕まり上半身だけ湯船から出した状態で、アズリアは背後からレックスに抱きすくめられる。そして彼は自身の先端を彼女の中心に充てがい、背後からの体勢で貫いた。

「…はぅっ…!」

いつもなら自身を貫くレックスの身体に縋りつき頭や背中を撫でで貰うのだが、この体勢ではそれが出来ない。
それに、彼の表情を見ることも出来ない。耳元に感じる息使いを感じながら、アズリアは必死にバスタブの縁にしがみ付いていた。

「…相変わらず、凄いね…アズリアのなか、気持ち良い…っ!」

再び背後から彼の腕が伸びて、その手が彼女の胸を包みこむ。強弱を付けて揉んだり、完全に勃ちあがった先端を摘んだり。胸への愛撫と中の動きを同時にされると、快楽が強すぎて意識が飛びそうになる。

「…や、あ、ぁ、ぁう…っ」
「…おっぱい弄ると、中がきゅうって俺のを締め付けてくるよ…。こういうの好きなんだね」
「…ち、ちが…そ、んなの、しらな…はうぅっ!」

そんな事を言われても無意識なのだから仕方ない。その間にもレックスからの二重の責めは続き、彼女は限界へと昇り詰めていく。

「……ほんとに可愛い、俺のアズリア…。ね、一緒にイこうね…」

耳元に荒々しい息のまま囁かれ、ぞくりと震えが走る。彼女なりの精一杯の返答として、膣内の彼自身をきつくきつく締め上げた。

「…ぁう、あっ、やぁっ……やああぁん!」

そして奥を突かれたと同時にびくりと震え、甲高い声を上げて達してしまう。その直後、背後の彼が詰めていた息を吐きだすのが聴こえた。続いて彼女の下腹部にじわりと広がる熱い感覚。
胎内に射精される感覚に、アズリアは快楽に震える身体で酔いしれていた。



「……まだまだ、こんなんじゃ全然足りないよ」

そう言ったレックスの表情はいつもの朗らかな笑顔ではなく、戦闘中か、もしくは今現在の…彼女との行為に及ぶ時のそれだった。その目つきの獰猛さを、アズリアは飢えた野生動物のようだと思う。

――姉さん、あいつに性的な意味で食べられちゃうよ。

今になって日中の弟の発言を思い出すがもう遅い。それに、レックスにならそうされてもいいと思ったのも確かに自分だったのだ。

「はぅ…」

快楽の余韻に震える身体を軽々と抱き上げられ、今度は湯船から上がり床に座らされる。背中がちょうど壁に当たるが、火照った身体にはその冷たさが心地良かった。

「…アズリア」

低く擦れた声で名前を呼ばれ、どくんと胸が高鳴った。そして重ねられる唇。

彼が散々自分しか知らないアズリアが可愛いと連呼していたが、それはお互い様だと彼女は思う。お前だってそういう…目付きや声を、私にしか見せないじゃないか、と。
けどそれは決して嫌ではなくて、島の誰もに好かれる先生であるレックスをひとり占めしているという独占欲に繋がるのだ。

「…ぁ、あぁっ!」

先ほど一度熱を注ぎ込まれた胎内に、再び彼自身が挿入ってくる。今度はちゃんと正面から。
その体勢のまま抱き抱えられ、彼女の細い身体は背中に当たる壁だけを支えとした状態で、レックスに最奥まで貫かれた。

「…や、あ、あっ、ぁ…!」
「…アズリア、すっごい、可愛い、よ」

少しだけ腰を抱きあげられてはまた落とされ、その度に最奥を突かれる。それを何度も何度も繰り返した。アズリアはもう与えられる快楽に喘ぎ続けるしかなく、レックスの背中に腕を回し必死に縋りついていく。

「…ゃ、あああぁん!」
「…く、っ…!」

そしてまた胎内に広がる熱。どくっ、どくっと脈打つ感覚さえ快楽となり、その身を焦がした。

「…れ、レックス、その…や、ぁうぅっ!」

一息つくかと思いきや、自身を抜くこと無く律動を再開するレックスにまたしても喘がされるアズリア。結合部は最早精液と蜜が混ざり合って、挿入の度にぐちゅっ、ぐちゅっと濡れた音が響き渡っていた。

「…ぁ、あぅ、あ、はうぅっ!」
「…ほんっと、可愛、い…大好きだよ…!」

強すぎる快楽故かぽろぽろと涙を零すアズリアの目元を、彼はぺろりと舐めて拭ってあげた。それにすらびくりと反応する。もうどこに触れられても快楽に繋がるらしい。

「…ぅ、あっ、レックス、レックスぅ…」

それでも愛する男の名を呼び、必死に縋りついてくる彼女。この健気さが、いじらしさがたまらなく愛おしい。
他の誰も知らない、俺の、俺だけの可愛いアズリア。

「…わ、私、もうだめ…、駄目ぇ…!」
「…ん、これで最後、にする…から、ちゃんと…俺に捕まってて…!」

レックスがそう言うと、彼女はその細い腕でより一層縋りつく。それと同時に快楽に震える脚を彼の腰に回し、ぎゅっと絡みついた。その体勢がそのまま、離れたくないと全身で物語っているようで、彼は喜びを隠しきれない。

――だから、大好きな君に。ありったけの想いを込めて。

「…アズリア、大好きだよ。愛してる。俺の気持ち、受け取ってね」

彼女がこくりと頷いたのを確認してから。最後に一度大きく突き上げ、最奥にてそれを解き放った。

「や、ああああああぁぁぁっ!!!」

三度注ぎ込まれる精液の熱さに、アズリアもたまらず絶頂を迎える。レックスはびくびくと痙攣する細い身体をぎゅっと抱きしめ、自らの情熱を最後の一滴まで出し尽くした。
…そして、ようやく彼女の中から自身を引き抜く。

「…う、ぁ…」

その振動さえ快感らしく、アズリアが小さく呻く。彼女の中心は蜜と精液が混ざり合い、とろりと溢れだしていた。




その後再びシャワーを浴びて、またしても一緒に湯船に浸かる。
ここがバスルームで良かった。普段からあんな激しくされていたら身体がもたない――と、アズリアは心底思った。こいつの体力は底無しか、全く。それに加えて。

「…あんなに何度も中に出して…子どもが出来てしまうじゃないか…」
「俺は構わないけどね。見てみたいなぁ、俺達の子ども。きっとアズリアに似て可愛いんだろうな」

睨み付けながら言ったというのに、レックスときたらさらりと爆弾発言をかましてくる。アズリアはまたしても激しく動揺してしまい、だめだ私は一生こいつの掌の上で転がされるんだ…と実感した。しかし、それは決して嫌ではなくて。

「…その時には、しっかりと責任を取って貰うからな」
「もちろん。しっかりと責任を取らせて頂きます」

照れ隠しにぶっきらぼうに言ってみても、返ってくるのは満面の笑みと彼女が一番欲しい言葉だ。幸福感と恥ずかしさでどうしようもなくなって、アズリアはくるりと振り向くと彼の首に腕を伸ばし、そのままぎゅっと抱きつく。
そんな彼女の髪を、レックスは優しく撫でながらこう言った。

「…だから、これからもずっと一緒にいようね。約束だよ」




***




月明かりが唯一の光源な、二人の寝室。一つの寝台に寄り添って、お互いにしか聞こえないような声音で話すのは――

「…そういえば、結局お返しとは何だったんだ?」
「んー、あのさ。その記念日って、ホワイトデーって言うんだって。だからさ、俺の真っ白な愛を君にいっぱい注いであげたいなって…あ痛っ!」

彼の言葉が先ほどのバスルームでの行為を指すと気付き、アズリアは真っ赤になって思わず手を上げてしまう。

「痛いよ、アズリア」
「…う、うるさい!お前が馬鹿な事を言うからだ!」
「うん、ごめんね。だって、君のことが大好きだから」

怒鳴ったところでたいした効果が無いのは知っている。へにゃりと笑いかけられ、更にはまたしても直球で告白されて、彼女は耳まで赤く染めて押し黙るしかなかった。

「やっぱり、俺のアズリア世界一可愛い〜」

でれでれと締まりのない笑顔で彼女を抱き寄せるレックス。どうしようもない馬鹿だなこいつは…と思いながらも、そんな馬鹿を大好きな自分もまたどうしようもないな、とアズリアは考える。同時に、こんなにも自分を想ってくれる人がすぐ傍にいるなんて私は幸せ者だな――とも。

「…ほら、顔上げて?」

おやすみのキス、とレックスが笑い、彼女の額に軽く口付ける。唇が触れたその感覚にまたしても暖かな幸福感が込み上げて来て、胸がいっぱいになるのだった。



最愛の人に愛される喜びに心身ともに満たされて、彼の腕の中でアズリアは眠りについた。




END.

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あきゅろす。
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