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R-18部屋(文章)
さくらいろ(お花見カイアティ)


「きれいに咲いてますね」

ぽてぽてと可愛らしい足音で歩きながらアティが言った。

「そうだな…酒も美味かったしな」
「もう。カイルさんてば、そればっかり」

隣を歩くカイルがいかにも彼らしい本音を洩らすと、アティはほんの少しだけむくれてみせた。






一年中常夏の様な気候かと思われる忘れられた島にも、確実に四季の巡りはやって来る。今はちょうど春――様々な草木が芽吹き、花が咲き始める季節だ。
そんな訳で、島の住人恒例の鍋パーティ(という名の宴会)はこの夜、大量のアルサックが咲き誇るユクレス村の近くで行われていた。次第に酒の量も増えて飲めや歌えやの大騒ぎとなり、そろそろお開きにするかという頃には既に日付が変わった後だった。

そして今、カイルとアティは宴会の余韻を味わいつつ、自分達の寝泊まりする船へ帰る途中である。折角なので多少遠回りしようとどちらからともなく言い出し、暫し二人きりの時間を楽しんでいた。






「カイルさん、沢山お酒を飲んでたみたいですけど…大丈夫ですか?」

小首を傾げ、上目遣いでカイルを見上げる仕草が何とも可愛らしい。本人は無意識なのだろうが。

「俺を誰だと思ってんだよ。海賊カイル一家の頭領だぜ?」
「そんなの、理由になってません」

カイルがごまかしも兼ねて的外れな返事をすると、今度はちょっと呆れた様にため息をつく。つくづく見てて飽きないな、とカイルは心の中で考えた。


「俺の事より、お前は大丈夫なのか?珍しく飲んでたみたいだが」

普段のアティは自ら酒に弱いと宣言していて、こういった宴会の場でもめったに酒を口にしない。
子供達と一緒にジュースを飲み、そして子供達と同じ時刻に切り上げるというのがいつもの彼女のパターンだった。(本人には言えないが、カイルとしてはこれが地味に寂しいのである)


「あ、はい。今日はお花見ですし、いつもより頑張っちゃいました」

『花見』はもしかしたら口実かもしれない。ただ、少しでも彼と同じ立場になりたかった。だから、普段は口にしない酒を飲んだ――

カイルに心配かけまいと、アティは小さくガッツポーズをしてみせる。その瞬間、元々頼りなさげだった彼女の足元が大きくよろめいた。

「おっと」

まるでこういう時の為に自分が居るんだと言わんばかりの勢いで、カイルがアティを抱き止めた。彼女の華奢な身体は、カイルの腕の中にすっぽりと収まってしまう。

「ほら、言わんこっちゃない。無理すんなって」
「あ、ありがとうございます」

己の不手際を反省しつつアティが小さく礼を言う。するとカイルは「気にすんな」と言い、にっと笑ってみせた。
その笑顔に、彼女の心臓はどくんと大きく跳ね上がる。




いつだったか、カイルが自分の笑顔が好きだと言ってくれた事があった。それがとても嬉しくて、彼の前ではいつでも笑顔でいたいと思うようになった。
それは立場が逆でも同じ事で。

(私も、カイルさんの笑顔が…大好きです)

屈託なく笑うそれは、正に凪いだ海を思わせる。彼女自身の弱い部分も嫌な部分も全て受け止めて包み込んでくれる、そんな気がするのだ。


酒の影響もあるのか、ついぼんやりと思考に浸っていたアティはここでふと我に返った。自分だけが色々意識してしまっている様で、妙に気恥ずかしい。
先程カイルに支えてもらった体勢のままだったので、せめて真っ赤になっているであろう顔を見られない様にと、ぎゅっと彼にしがみ付きそのコートに顔を埋めた。





「なぁ、アティ」

不意にカイルが呟いた。

「なんつーか…そんなにくっ付かれると、俺としても色々放っておけないっつーか」


彼に言われて、初めてアティは今の状況に気がついた。辺りは暗く、静まり返っている。ここなら多少騒いだところで集落までは聞こえないだろう。
深夜、そんな場所に恋仲の男女が二人きり。しかも互いに酒が入った状態だ。


「ご、ごめんなさいっ」

慌てて彼女はカイルから離れようとしたが遅かった。腰を抱き寄せられ、肩にも腕を回されて身動きが取れない。



「そんな、こんな所で…んんっ」

抵抗の言葉も深いキスに飲み込まれる。突然にカイルのペースに巻き込まれ、アティは必死に訴えた。

「はぁ、あ…カイルさんっ」
「こんな夜中、誰も来ねえよ」


でも、と言いかけたアティに再び口付けて再度言葉を奪う。アティの背後に回り込み、豊満に胸を手の平で包み込んだ。


「相変わらず、良い胸してんな」
「ど、どういう意味…ですか…っ、あ、あん」

カイルの大きな手でやわやわと揉まれる度に甘く切ない声が洩れてしまう。次第に息が上がり始めたアティ。
カイルは満足そうに頷くと一方の手をそのままに、もう一方の手を彼女の下腹部へと伸ばして行った。


「や、だめ…そこ、は…やぁ…」

即座に抵抗しかけたアティだが、耳を甘噛みされてくたりと力が抜けてしまう。結果カイルの手はアティのそこへとたどり着き、下着越しに中心をそっとなぞった。


「…ああっ!!」

びくりと震えるアティ。もうすっかりカイルにされるがままだ。
ニットワンピースを胸の上までたくし上げ、上下共に下着は外される。いくら酒と行為で火照り始めてるとはいえ、夜風は素肌に冷たかった。

「…ちょっと、寒いです」
「気にすんな、今にそんな事忘れる位、夢中にさせてやるよ」
「え、あの、そういう意味じゃなくて、…あ、あッ!」

今のカイルにはもう何を言っても無駄らしい。アティはただただ喘ぎつつ、彼からの愛撫を受け入れる事しか出来なかった。

カイルの指がアティの蕾へと滑り込み、溢れ出る蜜を滑稽油にして中を掻き回す。それと同時に、彼女の一番弱い花弁をも愛撫し始めた。

「ひ、あッ、はぁ…あっ!」

その度にアティの身体はがくがくと震え、カイルの支えが無ければすぐにでも崩れ落ちそうな程だ。頬は火照り目は潤み、既に焦点が定まっていない。

「…エロいな」

そんな彼女を見つめ、カイルはしみじみと呟いた。一方のアティはそれどころではないのだが。

「…カイルさんの…せい、です…っ、あ、はあッ」
「それじゃ、責任取って最後までしてやらないとな」

アティの途切れ途切れの言葉にカイルはいっそわざとらしい程に宣言し、更に愛撫を強めていった。片方の手で蕾と花弁を、もう一方の手で豊かな胸を揉みほぐし、更に彼女の真っ赤になっている耳たぶを甘噛みしてみせる。
辺りには濡れた音と二人の息使い、そしてアティの艶っぽい喘ぎ声が響いていく。


「…あ、ひあッ、んあぁッ!!…わ、私、もうッ…やあぁ―――ッ!!」

一際大きな声を上げ、アティはついに達してしまった。びくびくと身体を震わせた後、呼吸も荒くぐったりとカイルの胸へと寄り掛かる。

「まだまだ、本番はこれからだぜ」

カイルはそう言うと自らが着ていたコートを脱ぎ、道端の芝生へと敷いた。その上に達したばかりのアティを横たわらせ、彼女の身体に覆い被さる。

「はぁ、はぁ…なんだか、森の狼さんに…はあっ、食べられちゃう気分です」
「俺が狼なら、お前は子兎か?良いな、そりゃ」

絶頂の余韻に浸りながらも更に彼を煽る様な事を言うアティ。勿論、本人は無意識なのだろうが。それに答え、カイルも軽口を叩いてみせる。


「さて、森の狼さんは子兎を美味しく頂こうかな、と」

そう言って、限界まで張り詰めた自身を取り出す。そして、十分に熟れきったアティの蕾にぴたりと充てがった。
彼女のそこから溢れ出る愛液が彼自身に絡み付き、いやらしく濡れた音が響く。

「やっ、も、焦らさないで下さいっ…!早く、して…ッ」

アティが発した言葉に、カイルは一瞬己の耳を疑った。今、彼女は何と言った?
普段、色恋事に関しては酷く奥手な、あのアティが。これも酒の影響なのだろうか。

勿論こんな事を言われて黙っていられるカイルではない。行為の熱に浮かされ、擦れた声でアティに問い掛ける。

「…アティ…、そんなに、俺が欲しいか?」
「はあッ、あっ…欲しいです…!私、もう、カイルさんじゃなきゃ嫌です…ッ!」
「……ッ!!」

熱っぽく告げられたアティの言葉に、カイルは目を見開いた。彼女の一語一句に、どんどん深みにはまっていく自分を自覚していた。
もう、我慢出来ない。アティの蕾入口に充てがっていたそれを一端離すと、息を止めて一気に彼女の最奥まで貫いた。

「ひ、あああぁッ!!」

その衝撃にアティの身体は快楽で震える。自身の胎内に存在するカイルを感じ、彼女はゆっくりと瞳を開いた。


「あッ、あ、私の中にっ、カイルさんが…っ、びくびくって、あッ」
「ああ、正直、もう止まらねえからな…覚悟しろよ?」

カイルがにやりと笑ってみせると、それに答える様にアティもふわりと微笑み返した。それを合図に、彼は動き始める。


「はあッ、あッ、ああ…っ、カイルっ、カイルっ…」
「…くッ、ぁ…アティ…っ」

互いに熱っぽく擦れた声で相手の名を呼ぶ。カイルはこの瞬間が一番好きだった。
普段、決して「さん」付けを崩さないアティが、行為に及び熱が最高潮に高まったこの瞬間だけ呼び捨てで呼んでくれる。他の誰も知らない、自分だけが知ってるアティ。
溢れ出す独占欲が、彼の胸を熱く焦がしていった。


「や、あぁッ!!奥まで…カイルのが、奥まで来てるッ!」
「だ…から、言ったろ?…覚悟しとけ、ってな…!」
「ひッ、あッ、あうっ!!」

カイルが激しく動く度に、二人の結合部からは濡れた音が響く。その音とアティの上ずった嬌声が、春の夜風に響いていった。


「も…も、だめぇッ、だめぇ…ッ!こ、壊れ、ちゃ、うッ…!!」
「アティ、俺も、そろそろ…っ!?」

その途端、アティは離れたくないと言わんばかりに、カイルにぎゅっと抱きついた。
そんな彼女に、動きを止める事は無いながらも、珍しく狼狽えた声をあげるカイル。

「…離れろ、アティ…でないと、中に、出、ちまうッ…!」
「い、いいですッ!カイルの、なら…あ、ひぁッ!!」
「全く、お前って奴は…っ」

アティが自分を求めてくれる事に、カイルは喜びを隠しきれない。甘い声で喘ぎ続けている彼女に一旦深く口付けると、一気にラストスパートをかけていく。


「ん、んんッ、はぁッ…!や、あ、あッ、あッ、あぁ――――ッ!!」
「…ッ、ア、ティ…!!」

カイルが一際大きく突いた瞬間にアティは絶頂を迎え、その身体は激しく痙攣する。それと同時に彼女の胎内もきつく締め付け、その心地良さにカイルもまた達していた。
そのまま、白い情熱をアティの胎内へと注ぎ込む。最後の一滴までも出し尽くすと、ゆっくりと引き抜いた。愛液と混ざり合い、いやらしい水音が響く。


「…はあっ、はぁ…」
「…はぁ…っ、アティ、大丈夫か?」

行為の後、カイルは必ずこうやってアティの身体を気遣ってくれる。
息が整い次第に熱も治まって来たところで、彼女はゆっくりと口を開いた。

「…だ、大丈夫です。もう、カイルさんは心配し過ぎなんです」
「そうか、なら船に帰ったら続きといくか?」
「え!?…え、えっと、…それは、ちょっと」

大丈夫と言った割には、カイルの台詞に少し引きつった表情になるアティ。その反応に、予想通りとカイルが笑う。

「だから言ったろ。無理すんなって」

言いながら彼はアティを抱き寄せ、その大きな手で彼女の髪を撫でてみせた。長く伸びた赤髪は、春の夜風にさらさらとなびいていく。






「…そろそろ帰りましょう。大分寒くなってきました」

きちんと衣服を身に付けた後、アティが言った。一見何事も無かったかの様に振る舞うが、その頬はほんのりと染まり、確実に行為の後を思わせる。


「そうだな。もしスカーレル辺りが起きてたら、また妙な詮索されそうだ」

カイルとしては、その様な詮索はむしろ大歓迎なのだが。

「もう、カイルさんのえっち」



軽口を言い合いながら、ここまで来た時と同様に二人でゆっくりと歩いて行く。

二人分の人影を、春の月光が優しく照らしていた――――





END.

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