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マルコ×連載ヒロイン(一護×連載ヒロイン) if...
※注意…この作品は連載ヒロインがトリップ時に一護もモビーへ来ていたらというif話です。
マルコ×連載ヒロインですが、どちらかと言うと一護×連載ヒロインの悲恋とも受け取れるかもしれません。
なので、悲恋を苦手とする方はお気を付けください。








――――――――――――――――――――




その日、もう何度目か分からない菜真絵の世界へ行ってしまった原因を探るための調査で、やっと手がかりらしきものを得てモビーに帰ってきた。



そして、やっとモビーのマストが見えてきて高度を下げ始めた途端、急に背中に衝撃を感じ、必死に現状を把握しようと羽ばたきながら首を回して振り返る。
すると、俺の背中には女と男が重なる様にして倒れ込んでいて、女は背中から血を流していた…。



背中から海に振り落とす訳にもいかず、そのままモビーに連れて帰れば、サッチが声をかけてきた。

「マルコおかえり〜。…あれ?それどうした?」

「分からねぇよい。とりあえず、医務室につれてくよい。」

そう言って俺は女を抱え、男はサッチに渡し医務室に急ぐ。

「何で俺が男運ぶしかねぇんだ?」

「煩いよい。黙って運べよい。」

文句を言うサッチの相手をしている間にも、腕の中の女からは血が流れ、俺の背中も抱える手も女の血糊でべっとりと真っ赤に染まっている。

(危ねぇかもしれねぇよい。)



女は見慣れない服装で、菜真絵が着ていた“制服”と呼ばれるものに似ている気がした。
よく見ると女の服は切れていないのに背中を怪我しているようだった。




医務室に着き、気を失ったままの二人を船医に見せれば、男の方は気を失っているだけということで、すぐに女の方の治療を始めた船医とナース。



俺は血濡れた服を着替えるため部屋へ戻ろうとしたが、その前に気になって男の顔を見てみた。


オレンジ色の髪に意志の強そうな眉と口元。


(…………一護かよい?)

約一年前に見た一護よりも成長し、幼さの抜けた顔がそこにはあった。

(それじゃあ、女の方は?)

俺は確認しようと急いで女が寝かされているベッドの方へ行くが、治療の真っ最中で近づく事が出来なかった。


俺がここで付いてるから、お前はその血糊をどうにかして来いとサッチに追い出され、俺は渋々部屋に戻った。

一護と女の様子が気になって、急いでシャワーを浴びて着替え、髪を乾かすのもそこそこに医務室へ向かう。


医務室が近づくと、騒がし音が聞こえてきて駆けつければ、一護が目を覚ましベッドへ抑えつけようとするサッチと取っ組み合いになっていた。

「煩いよい!」

二人をベリッっと剥がし、げんこつを二つ落とす。

「ぃだっ!」

「ぃでっ!」

「サッチ、隊長のお前が抑えられねぇでどうすんだよい。」

「だってよぉ〜。」

げんこつを落とされた場所を擦りながら苦虫をかみつぶしたような顔で言い訳するサッチ。
俺は男の方に向き直って話しかける。

「お前は……一護…かよい?」

「あ?……えっ?……マルコ?何でここに?っつーか、ここはどこだ?」

「やっぱり、一護かい。」

俺だと認識した途端、一護の眉間のシワが緩められる。

「ここは白ひげ海賊団旗艦モビーディック号の医務室だよい。お前と、今治療されている女は急に空から落ちて来たんだい。」

「白ひげ!?治療されてる女って、菜真絵は無事なのか?」

俺の説明に目を見開いた一護だったが、すぐに表情を変え焦りを見せる。

「菜真絵…やっぱりその女は菜真絵なのかい?それにしては一年前と風貌が…。」

「ああ、間違いなく菜真絵だ。一年…半年で色々あったんだよ…。」

菜真絵だと言ってから顔の曇った一護。

(いったい半年で何があったんだよい?)



―――――――――――――――


菜真絵の治療が無事に終わってから一護に事情を聞き、菜真絵が目を覚ますと向こうの世界での菜真絵の私物がモビーの甲板に降って来て、それらを軽く片付けてからオヤジと隊長達に紹介した。

一護の話では、菜真絵が敵の手でこちらの世界に飛ばされそうになった時に、辛うじて菜真絵の手を掴む事は出来たのだが踏ん張れずに一緒にこちらへ来てしまったらしい。





「一護!なんで藍染と戦わないで私を助けたの!」

「俺は目の前にいる奴を見殺しになんかできねぇよ!」

「でも一護までこっちに来ちゃったら、誰が藍染を倒すのよ!向こうにはルキアも恋次も浦原さんや夜一さん、隊長さん達がいるのに!それに、何よりも一心おじさんと夏梨、遊子は!」

「っ!?……んな事言ったって菜真絵の事、放っておけなかったんだから仕方がねぇじゃねーか!」


いきなり始まった二人の喧嘩に、俺達はただ見ていることしかできない。

「一心おじさんは一護に全てを託したんでしょ?虚圏を出る時だって、更木隊長と白哉が託してくれたし、現世に向かう時だって卯ノ花さんが一護の力回復してくれたでしょ!一護にはみんなの思いが託されてたんだよ?」

「……………………。」

ぐうの音も出せなくなった一護は黙りこくって俯く。

「…私なんかのためにその思いを不意にしちゃダメ!私一人よりも大事な命はたくさんあるでしょ!」

「……俺にとっては菜真絵も大事な命の一つだ…。」

絞り出すように言う一護に、菜真絵は優しく微笑み、一護を抱きしめる。

「ありがとう。でも、私は死なないから大丈夫。」

一護の背中をぽんぽんと優しく叩き、言葉を続ける。

(妬けるよい…。)


「……一護。私の力で、あの時のあの場所へ一護を戻すから、頑張って藍染を倒して。」

俯く一護の顔を下から覗き込むように見上げ、静かに告げる菜真絵。

「でも、そんなことっ!」

「大丈夫。藍染に出来たんだから私に出来ない事は無い!それに、藍染が抹消を願ったのは私だけ。だから、一護は絶対に帰れる!」

ニコッと笑って宣言する菜真絵の姿は凛凛しく、とてもまぶしい。

「でも菜真絵はっ!」

「私は……私はこの世界で頑張る。だって、虚圏のような不毛の地じゃなかったんだよ?マルコがいる世界だもん。“彼ら”にも会えるかもしれないし。それに、…きっと“あれ”も起こる。向こうで話してたじゃない。もしこっちに来れたら絶対に“あれ”を止めて、戦争を無くしたいって。だから、大丈夫。……ね?」

「……菜真絵…。」

一護は必死に何か道が無いか考えている様だった。

「一護。…離れても一護の事は忘れないし、大事な幼馴染で、仲間で、家族だったことに変わりは無いよ。生きる世界が違っても一護やみんなの幸せを願ってる。……一人だけ還してごめんね。」



一人だけ戦わせてごめんと呟いてから菜真絵が死神になって刀を構えれば、一護も覚悟を決めた様だった。

「一護、安心しろい。菜真絵の事は俺が護るよい。」

菜真絵と一護の話が決まった所で、これだけは伝えなければと俺は口を開く。

「…ああ、菜真絵を頼む。泣かせんじゃねぇーぞ!」

「ククッ…泣かせねぇよい。」


菜真絵が精神統一をし、何かを願うように刀を一振りすると、何も無かった空間が斬れ、形容し難い色の裂け目が出来た。

「……じゃあな、菜真絵。今までありがとうな。………幸せになれよ!」

最期に一度、ぎゅっ!っと菜真絵を抱きしめてから一護はその裂け目に飛び込み、消えて行った。






「……一護。…………一護ぉぉ…!」

空間の裂け目が消えると、カランと刀を落とし、膝から崩れ落ちる菜真絵。
一護が還るまでは気丈に笑顔で通していた菜真絵だったが、今は大粒の涙がこぼれ、甲板を濡らす。
それでも泣くのを我慢し、嗚咽を漏らす菜真絵を俺は抱きしめ、包み込んだ。

「菜真絵…。頑張ったねい。もう泣いていいんだよい。我慢しなくて、頑張らなくていいんだよい。」

「うぅ……マルコぉ…、私、ちゃんと送れた?…ちゃんと、一護のことを笑顔で送ること出来た?」

「ああ。菜真絵は偉かったよい。」


「…っ!うぁぁぁぁぁぁ!!」


堰を切ったように泣き出し、俺に縋りつく菜真絵。


それを見た白ひげのクルー達は、オヤジも隊長達も、貰い泣きした奴らも、皆優しい顔で新しく出来た妹を見つめていた。





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ルカ様

リクエストありがとうございます!
一護が一緒に来ていた場合のif話ということでしたが、一緒に島へ行く話や“事件”の話など詳しいリクエストがなかったので、『死神は突然に』の冒頭部分で書かせて頂きました。
なので、甘さ控えめですみません。

瑛冬


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